COLUMN シーンの中にいる人たちの言葉

まさはるの宇宙へ(字数制限無し)の扉

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Half time Old 鬼頭大晴

鬼頭大晴(きとうまさはる)。名古屋発のロックバンドHalf time Oldのヴォーカルを担当。優しくもクセのある唯一無二の歌声と、独特な言葉選び、そして自由を謳う型にはまらない音楽性を持つ。

2016.3.29

自転車/Half time Old 鬼頭大晴

ねぇ、自転車って知ってる?
ほら、よくサーカスで猿が乗ってる。
あれよ、あれ。

あぁ…。

僕はここ数年というもの自転車という交通手段があった事を忘れていた。
それを僕が乗り回していたのは今は昔、竹取翁といふものありけった時代の事だ。無理もない。

そんな自転車が最近我が家へやってきた。
実家の使わなくなった自転車を取りに行ったのだが、第一印象サドルにビニール袋が被さったそいつは見た目こそ華奢で貧弱そうに見えたが幾千もの仕事をこなしてきたOLのような貫禄があった。

「今日からあなたがオーナーね。よろしく。」

頼もしい。
どこへだって行ける気がした。

とりあえず乗ってみよう。

高い…
見える景色が変わった…
サドルってどのくらいの位置に合わせるんだっけ…?
少し下げたが結局しっくりくる位置を見つけられないまま走り出した。

余談だが名古屋弁では自転車の事をケッタという。
しかし近頃の名古屋市民でケッタと言うのは少数の小中学生、粋がった高校生、またはヤバそうな人しか居ないので
もしも周りに成人以上でケッタと言う人が居たのなら要注意人物リストに加えても差し支えないだろう。

話を戻そう。
僕はケッタから見える景色を楽しみながら家に向かった。
知ってるぞ。最近ケッタの規制が強化されたんだろ?歩道走っちゃダメなんだろ?

車は次々とOLに股がったバンドマンを追い越していく。
容赦ない幅寄せに僕たちはかなりビビっていた。

左折だ。

無意識に方向指示器を空振りながら華麗な左折。

次の瞬間、僕たちはアスファルトに手をついていた。
目の前には30前半くらい、お兄さんとおじさんの境い目。おにじさんが此方を見下ろしていた。
おにじさんは美人に股がっている。
毎日欠かさず朝のストレッチをして、プロテイン入りのダイエットスムージーなんか飲んでWi○ Fitして1日を終えるような感じの美人だ。
そんな感じの雰囲気を全面に出してくる人は大抵信用できないし、いつも人を見下している。…気がする。
このコンビも例にもれず一つ舌打ちをした後去っていった。

僕らはああはならないぞ。
目の前で倒れた人がいたのなら手を差し伸べられる人間になるんだ。
チェーンの外れたケッタがいたのなら自分の手が汚れても引っ掛けてやれる人間になるんだ。

何も言わず寝そべって不貞腐れているOLを起こすと僕らはまた走り出した。

足はなかなかに疲れている。
思えば今までただ右手を捻れば進んでくれるロボットのようなものに乗っていたんだ。
この疲れが実感させてくれる。
僕は生きているんだ。

この瞬間、この風を起こしているのはレギュラーガソリンなんかじゃない。僕だ!!
今、生きているっ!!!

着いた。
これから近場のコンビニくらいなら使っていこう

最高だな。ケッタ。

Half time Oldのインフォメーションはコチラ
http://www.halftimeold.com

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