COLUMN シーンの中にいる人たちの言葉

思春期プラスティネーション

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ライター兼作家 影井公彦

愛知県在住。昼間は会社員、夜はカタカタと小説・シナリオ・レビュー等の文字書きしてる人。90年代ヴィジュアル系のことを語らせると朝までノンストップで話しまくってしまう。現在は音楽をジャンルレスに聴くため、CD棚がえらいことに。

2017.8.7

LINKIN PARKのチェスター・ベニントンが亡くなった。/影井公彦

2001年の『HYBRID THEORY』でデビューして以降、シーンの第一線で活躍し続けているバンド、LINKIN PARK。
そのフロントマンである、チェスター・ベニントンが亡くなるなんて、想像をしていなかった。
なんの偶然か前回書いたコラムでは、彼らの最新アルバムに触れ、そしてチェスターの発言を引用していた。
奇妙な縁を感じてしまう。
縁と言えば、僕のペンネーム『影井公彦』は彼らの楽曲『Shadow Of The Day』からとっている。
Shadow=影
Day=日
『影日』だと『かげひ』『かげび』で言いにくいということで、それをもじって『影井』にした。
公(おおやけ)に名乗る名前なので『公』、そして自分の本名であり自分が生まれる前に死んでしまった祖父の名前からとられた『彦』で作った名前だ。

Shadow Of The Day / Linkin Park

僕は彼らのデビュー作に衝撃を覚えた人間の1人だ。
30代前後の人間で、リアルタイムで衝撃を受けた人は大勢いたように思う。

In The End / Linkin Park
(1stアルバム『HYBRID THEORY』からの1曲)

ラップとクリーンヴォーカル&シャウトというスタイルは当時としては新しいというわけではなかった。
Limp BizkitやRAGE AGINST THE MACHINEがすでにやっていた手法だ。
もっと言えば、ANTHRAXとPublic Enemy、AerosmithとRun D.M.C.達がその手法で曲を発表してるので、スタイルとしては前からあったものだった。
しかし、彼らはそれを模倣するのでなく、聴きやすく、コンパクトにまとめた。
ヘヴィであり、ポップ。
それが彼らの曲のイメージだった。
そして、彼らがこの手法で売れたことにより、後発のバンドが影響された。
「俺達もこういうバンドがやりたい」
そう思ってバンドを組んだ人も多い。
その弊害として
「なんか、リンキンっぽい」
と言われてしまったバンドもいたそうだが。

チェスターが亡くなり、全てのアルバムを聴きなおした。
最近出た『ONE MORE LIGHT』まで聴き終え、彼らは自己破壊と再構築を繰り返していたバンドなのだと気付かされた。
1stと2ndが出る間に出た『REANIMATION』でその兆候は出ていた。
このアルバムでは『HYBRID THEORY』を再解釈し、メンバー、そして他のアーティストによりリミックスが行われている。
2ndアルバムの『METEORA』では『HYBRID THEORY』のスタイルをヴァージョンアップしたが、次の『Minutes to Midnight』では明確に『ミクスチャー』『ラップメタル』といった物から離れていった。
4th『A Thousand Suns』で示された精神世界への旅は、LINKIN PARKが流行りではなく、己を見つめていることを外に知らしめたものだ。
『Living Things』では原点への回帰と今までに培った物への融合を、そして『The Hunting Party』ではバンドへと視点を当てた作品を作った。
『One More Light』は、美しくゆったりとした世界を作りつつも、内面的なヘヴィさを打ち出していった。
どの作品も聴き直すことで新たな一面が見えてきた。
前回の話にも出たように、チェスターは
「僕らは前に進まないといけない」
と発言をしていた。

彼らはそれをずっと実行していたのだ。

チェスターが亡くなった後、色々な人から追悼の意が表明され、そして、追悼の集会が催された。
オフィシャルで掲載された文で

「かけがいのない贈り物をありがとう」
と言っていた。

確かに僕はチェスターから多くのものを貰った。
それは、辛い時に自分を支えてくれる曲だったり、仲間と一緒に騒げる空間を作ってくれる曲だったり、そして、心を焚きつけてくれる彼の詩だったり。
悩みや苦しみ、そして憎悪渦巻く感情を表に出して歌った彼には感謝してもしきれない。

少し言わせてほしい。
彼の死は、自殺という選択で終わってしまった。
理由はわからない。
今後、永遠に。
だから、もし、今悩んでいる人がいたら声をあげてほしい。
「助けてくれ」
と言うのは、何にも恥ずかしくない。
それを言うと
「甘えている」
「こんなことで潰れてどうする」
「皆が我慢している」
と言われてしまう時があるが、そんなのは無視していい。
ワガママでいいのだ。
だから、声をあげてほしい。

話を元に戻そう。
チェスターが亡くなって、LINKIN PARKの曲を聴いている時に漫画家の伊藤悠さんの描いた漫画のある言葉を思い出した。

22年一緒に暮らしていた猫が亡くなった。
その猫が天へと駆けていく姿を見ながら、伊藤先生は犬に話かけられる。

犬「『いないなあ』って思ってるの?」
先生「『一緒にいたなあ』って思っているんだ」

そう、僕らはチェスターと共にいた。
彼と一緒にいた日々は、色あせることはないのだ。

再度、ありがとう、チェスター・ベニントン。
大好きだよ。

Numb / Linkin Park

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