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INTERVIEW 旬のアーティストインタビュー

2017.10.19

電波少女が『HEALTH』で提示した新たなラップのカタチ

「その瞬間の空気は共有できないんですけど、曲に対する思い入れや曲を作ろうという気持ちは共有しています。(ハシシ)」

ヒッチハイク企画で話題を振りまいた電波少女が、9月27日にアルバム『HEALTH』でメジャーデビューした。三部作の完結となる今作には、彼らが主戦場としてきたネットカルチャーとヒップホップカルチャーから掴み取った、新しいラップが詰まっている。今回MCのハシシに、ヒッチハイクの裏話や電波少女の価値を示した今作について話を訊いた。

取材・文 坪井

ーメジャーデビューおめでとうございます!メジャーは目標にしていました?

ハシシ(MC):実は25歳ぐらいの時に一度辞めようと思って、それを匂わせるような曲を出したんです。その時に初めて声が掛かって、メジャーを目指すようになりました。

ーその曲が引っ掛かったんですね。そもそもハシシさんのヒップホップとの出会いはいつ頃だったんですか?

ハシシ:中学3年生ぐらいから周りがヒップホップブームになって、それに流されて聴くようになりました。最初は好きじゃなかったんですけどね(笑)。

ーそうだったんですね。当時はどのようなアーティストを聴かれていたんですか?

ハシシ:洋楽だとNellyがめちゃくちゃ流行っていました。日本ではNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの他に、KGDR(ex.キングギドラ)とKAMINARI-KAZOKUが復活した時期でもあったので、よく聴いていました。

ーどちらかと言うと、アンダーグラウンドな方々を聴いていたんですね。今回メジャーデビューのために、ヒッチハイクで移動して47都道府県全県でストリートライブを行いながら、2017年1月31日までに地元宮崎にゴールするという企画を行っていたんですよね。途中ミッションもあって大変だったと思いますが、特にキツかったことを教えてください

ハシシ: もちろんヒッチハイク自体が大変でしたし、途中で入ってくるバンジージャンプや滝行、琵琶湖一周、スカイダイビング、あとLINEで友達を1000人作れなど、いろいろなミッションもあって大変ではありました。それよりもキツかったのが、メンタルの部分ですね。メンバー(nicecream)や同行しているカメラマンとずっと一緒にいるのが精神的にしんどくて。正直ミッションがいい気分転換になっていたぐらいです。

ープライベートの時間がないのは確かにキツいと思います。ヒッチハイクって初対面の人と話さなければいけないので、会話力が上がりそうですね

ハシシ:そこは相方がちょっとだけ頼もしくて、率先してドライバーさんと話をしてくれるので、自分は後ろに座っていることが多かったです。その頃は、髪で顔が見えない状態だったしマスクもしていたので、分からないように寝たことも(笑)。でも、基本的にはドライバーさんと話しの合う方が話をして、どれだけ話を盛り上げて遠くまで送ってもらうかという作戦を立てていました(笑)。

ーそれ大事ですね(笑)。そのドライバーさんの中で印象に残っている人っています?

ハシシ:乗せてくれる方って、ヒッチハイク経験者がめちゃくちゃ多いんですよ。みなさん「恩返しがしたいから」って口を揃えて言うんです。予定が入っているのに、「見つけたら絶対に乗せようと決めていたんです」と言ってくれた方もいて。あとは、世界大会に出ているようなスポーツ選手などアグレッシブな方も多かったです。乗せてくれる方って、恐怖心や不信感に好奇心が勝つ人なんじゃないかと思うんですよね。だから面白い方がすごく多かったです。

ーそうですよね。全く知らない人を車に乗せるのは怖いですから

ハシシ:深夜に田舎でヒッチハイクをすることもたまにあったんですが、その時間帯に20歳ぐらいの女の子が乗せてくれたこともあったんですよ。普通に考えたら、見ず知らずの男2人を乗せるってありえないですよね。日本っていい意味でも悪い意味でも平和なんだなと実感しました。

ー確かに。ちなみに、印象に残っている地域はありました?

ハシシ: ここ(名古屋)でよその地域の名前を出するのは気がひけるんですけど(笑)、四国ですね。関西で路上ライブをしていたら、酔っ払ったおじちゃんの乱入があったり香ばしい方も多いなと。それが、四国に入った途端に土地の感じも空気もゆるくなって、乗せてくれる方の喋り方もちょっとゆっくりで、そのギャップで四国は温かいなという印象になって(笑)。名古屋は、音楽をやっている仲間が駆けつけてくれて、うれしかったですね。

ーヒッチハイクをやって得られたものはありました?

ハシシ:正直なかったです(笑)。ただ、今回は人に助けてもらわないと達成できない企画だったので、落ち着いてから出会った人たちにすごく感謝の気持ちを感じるようになりました。

ーその企画を経て、9月27日にメジャーデビューアルバム『HEALTH』がリリースされました。まだ発売から4日ほどですが周りからの反応はいかがですか? ※インタビューは10月2日(月)に行いました

ハシシ:メジャー1発目なので少しハードルも上がるし不安はありました。でも、昔からのお客さんも最近電波少女を聴き始めてくれた方からも好感触なコメントが多くて、純粋に良かったなと思っています。

ーその今作にはいろいろなタイプの曲が入っているなと思いました。今作を作るにあたり、テーマは考えられました?

ハシシ: ファーストアルバムを出したタイミングで、3部構成にしようと思っていました。1stアルバムのタイトルは『BIOS』なんですが、『ワンダーホエール』や『be human』など、全曲のタイトルに生き物の名前を入れていたんです。そして、2ndアルバム『WHO』はフィーチャリングアルバムになっていて、全曲に参加アーティストがいて人の名前が入っています。生き物、人ときたので、次はどうしようかという構想に結構時間がかかりました。入れる曲も数曲決まっていたので、その曲名から共通点を探していたら体のパーツが入っていることに気づいたんです。『SKIT2』と『ME』から。それから全曲に体のパーツを散りばめました。例えば『花火feat. NIHA-C』だったら鼻、『MONE\CLIP feat. Jinmenusagi』はリップが唇と。その遊びから、アルバムタイトルを『HEALTH』にしようとなったんです。

ーなるほど。その流れでタイトルが決まったんですね

ハシシ:伏線を作るのが好きなんですよ。例えば『ME』という曲もその前にシングルカットで『MOfeat. NIHA-C』という曲があって、その次に『RY feat. Jinmenusagi』という曲をアルバム『パラノイア』に収録していて。この三つを入れ替えて並べると“メモリー(MEMORY)”になるというそんな遊びを結構します。

ーそういうのって楽しいですよね。歌詞に関してはネガティブな内容が多いなと思ったんですが、これはハシシさん自身のことを書かれているんですか?

ハシシ:自分の中にあるものをアウトプットしていたら、ネガティブなものばかりになって(笑)。依頼があって別のテーマで書いた時、それはそれで面白いものはできるんですけど、なんか気持ちが入っていないんですよね。だから、今回のアルバムもベースはネガティブなものというのはあって、その上でどう着地するかに挑戦しました。ネガティブを基盤に、ネガティブからのポジティブなのか、ネガティブからのネガティブで終わるのか、ネガティブでも開き直っているのかという、ネガティブからのいろいろなパターンで作りました。

ーネガティブを基盤に展開していったんですね。そんな中、13曲目の『A BONE feat. Jinmenusagi&NIHA-C』には「ガンバレ」という言葉が出てきます。この言葉が出てくるのは意外でした

ハシシ:リスナーさんからも意外だったと言われました。そもそもTHE BLUE HEARTSさんが曲で「ガンバレ」と言っていて、すげーなと思ったんですよ。こんなストレートな言葉は自分には言えないなと。でも僕は性格が悪いので、メンタルが弱っている人に一番言ってはいけない言葉が「ガンバレ」だと知ってから、あえて言ってやろうと思ったんです(笑)。電波少女のリスナーは、どちらかというとメンヘラと言われる方や気持ちを重ねてくれる方が多いので、リスナー達を追い詰めてやろうと思って、結構スパルタな意味で使いました。隅へ追いやってやろうと(笑)。

ー性格悪いですね(笑)。THE BLUE HEARTSで言うと、『未来は誰かの手の中』という曲は、やっぱり彼らの名曲『未来は僕らの手の中』がモチーフになっているんですか?

ハシシ:この曲はすごく大好きですし、すごく元気をもらえる曲ですよね。自分も何かのアプローチで人の心を揺さぶりたいなと思った時、THE BLUE HEARTSとは逆で、“誰かの手の中”と諦めちゃった方が前に進める人もいるんじゃないかと。変に期待している分、進みづらくなっている人に聴いてほしいなと思ってこのタイトルをつけました。

ー今回参加されている方々はネットで知り合ったんですよね。どのように声を掛けたんですか?

ハシシ: 基本的にメジャーっぽくない誘い方です。電話で「何曲か頼んでいい?」と。みんなネットが出自の人たちで、トラックメーカーもほとんど友達で今までと作り方は何も変わっていないんですよ。素人がネット上にあげていた延長で、メジャーというフィールドから盤を出すことに意味があるなと思って。俺たちはメジャーでどれだけ勝負できるんだろうと。

ーその中には、ぼくのりりっくのぼうよみさんもおりますが、彼との曲『クビナワ feat. ぼくのりりっくのぼうよみ&ササノマリイ』は、どういう経緯で実現したんですか?

ハシシ:電話で普通に誘いました。元々自分が主催していた遊びのレーベルにいて昔から交流はあったので、「やってよ」と先輩風を吹かせて(笑)。

ー歌詞は文学的でぼくりりさんっぽさがあります。サウンドも他と雰囲気が違いますね

ハシシ:トラックを聴いた時点でぼくりりが合いそうだなと思って、彼と電話やチャットで『クビナワ』というタイトルと“死”をキーワードに、どれだけ意味がありそうで意味のないことを書けるかというテーマで書きました。

ーなるほど。そもそも電話やチャットで曲を作るんですね

ハシシ: LINEやSkypeですね。こういうのをやり始めたのは時代で言うと、自分たちが初期の方だと思います。ネットで音楽友達を作るとか。10年ぐらい前からそういう作り方なので一番やりやすいんです。みんな家にいるという(笑)。

ー例えばバンドだったら、スタジオで「せーの」とレコーディングもしますよね。でもお互い家にいて、パソコンに向かって曲を作るとなると、その空気感の共有は難しくないですか?

ハシシ:変になっちゃう時もありますよ。噛み合っていないなと。当然スタジオに入ってみんなで「よしやるぞ!」とやった方が熱量はあると思います。本当に自分たちは無駄を省いたやり方で、見る人によってはドライに感じるかもしれないですが、一緒に曲を作ろうという気持ちは同じで、それが各自宅ってだけ。その瞬間の空気は共有できないんですけど、曲に対する思い入れや曲を作ろうという気持ちは共有しています。それがないと作りたくないし、お互いリスペクトしている相手だから違和感なく作れると思います。

ーそうして作った曲をライブで披露される時ってどういう心境なんですか?

ハシシ: そもそもライブを想定して作っていないので、歌えない曲もあります。それこそ電波少女の初期のメンバーは、初ライブのリハーサルで初めて会ったんですよ(笑)。現場だけで活動していた時とネットを使って活動してからで明らかに違うのは、来てくれる人が曲を知ってるんですよ。それってアマチュアではなかなかないことで、すごく印象に残っています。

ーそれが得られるのっていいですよね。最後に、今後どういう方向へ進んでいきたいと考えています?

ハシシ:今の感じを維持しつつ、臨機応変にいろいろできたらなとは思います。そこをブラさないように、これからも希望が拡大していけたらいいなと思っています。

電波少女 『A BONE feat. Jinmenusagi&NIHA-C』Music Video

■リリース情報

『HEALTH』
Major Debut Album
2017.9.27 発売
初回限定盤(CD+DVD) 3,518円(+tax)
通常盤(CD) 2,593円(+tax)

■オフィシャルWEB
http://denpagirl.com

■プロフィール
2009年、インターネット動画投稿サイトに突如姿を現した数名の個性派MC・TMで結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はMC担当のハシシとパフォーマンス&ボタンを押す係のnicecreamの2人で活動している。2013年7月に1stアルバム『BIOS』を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム『WHO』をリリース。2016年5月に7曲入りCD『パラノイア』をリリースし、11月より「電波少女的ヒッチハイクの旅」と題し、全国をヒッチハイクで移動、47都道府県全県にてストリートライブを敢行。メジャーデビューに先駆け6月より3カ月連続で配信シングルをリリース。そして、9月27日にメジャーデビューアルバム『HEALTH』をリリースした。

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