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ライター ツボイ

2018.7.12

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怒髪天 ニューアルバム『夷曲一揆』インタビュー

「言いたい放題やりたい放題やったアルバムだからぜひ聴いてほしい(増子)」

2年ぶりとなるニューアルバム『夷曲一揆』をリリースする怒髪天。言いたいことを言いまくった『HONKAI』をはじめ、今の世の中にも物申す曲が詰まった作品となっている。SNSの普及もあり言いたいことが言いづらくなってきた昨今、どうしてこのような作品を作ったのか。歌詞を手掛けるフロントマン増子直純(Vo)に話を訊いた。

―早速ですが、7月11日にリリースされる2年ぶりのアルバム『夷曲一揆』の歌詞はかなり攻めていて、言いたいことを言ってやろうという意思を感じました

増子直純(Vo): 最近、ロックバンドを何だと思ってるんだよ!ということが多いなと。だから再定義し直してやろうと思って、好き放題言ってみた。ロックバンドは感情的で軽はずみで無責任でいいと思うんだよね。だから、コンプライアンス的なものをバンドにも求めるのは本末転倒。例えば「何とか反対!」と言ったとして、「その理由は何ですか?」と聞かれたら、「何となく気に入らないから」。ロックバンドはそれで十分なんだよ。そういう誰しもが思うことですら言いづらくなっているのがすごく窮屈だなと思ったから、もう一回はっきり言ってやらないとダメなんじゃないかと。絶対に取り違えないようにはっきりとね(笑)。

―その意思が凝縮された今作は『裸武士』から始まりますが、怒髪天らしい曲ですね

増子: 俺たちはJAPANESE R&Eと言ってるけど、自分たちがカッコいいと思うものってこういう曲になってくるし、世界的に見ても日本でしか生まれないグルーヴなんだよね。さっきも行ったけど、今回はロックバンドとはどういうものなのかを体現しようと思っていたので、<スッポンポン>という普段口にしないワードをロックサウンドに乗っけた。これが何となくカッコ良く聴こえるんだよね(笑)。これは洋楽と同じで、洋楽もカッコいい曲だと思ってCDを買って訳詞を見たら「何だこれ」という(笑)。そんな、いわゆるロックマジックを体感してもらえればいいかな。

―とは言え、ちゃんとしたメッセージも入っているなと思ったのですが…

増子: 生まれたときは裸なのに、大人になるにつれて本音を言えなくなるというか心に重ね着をしていく。それをやめて、全裸で歩くと捕まるけど心ぐらいは裸で行こうや、素直に行きましょうという内容になってるね。

―そのメッセージも伝わってきます。そして次の曲『HONKAI』は、先ほどおっしゃっていた答えになる曲かなと

増子: そうだね。ロックバンドとは本来こういうものだということがどこまで通用するのかを試したくて作った曲だから。この歌詞はメジャーで出せるのか、テレビやラジオで流せるのかをやってみたんだけど、全部通った。意外と大丈夫だったし、意外とみんなそう思ってるなと感じたね。

―今は発した言葉がSNSで取り上げられて炎上することもたくさんありますので、発言にはリスクもあると思います。その点は気にされます?

増子: 気にしないね。誰かに向けて何かを言うことはリスクを負うことだから、文句を言われる覚悟がなければ言っちゃいけないと思う。その認識すらない人が多いから、学生のうちから授業をひとつ減らしてでも教えてあげないと。本人たちの為にもならないから絶対に教えてあげた方がいい。SNSは新しい道具なんだから。

―SNSも使い方次第だということですね

増子: そう、いい部分もいっぱいある。友達に面と向かって言いづらいことも、文章なら言えることもあるだろうし。友達同士のくだらない言い合いもいいと思う。ただ、世界中の人が見ていることを忘れちゃいけない。思ってもいなかった取り違いをされて、たくさんの知らない人から攻撃される可能性もある。それをちゃんと教えてあげないといけない。

―世界に発信してしまうわけですからね。今作には『春、風船』や『初めての旅につき』という趣の違う曲も入っていて幅が広いですね

増子: 一人の人間が作ってるから喜怒哀楽もあるし多面性があっても不思議じゃない。曲は日記みたいなものだからね。『春、風船』を作ったとき、昔は歌詞にちょっとした救いを入れてたんだけど、だんだんそういうのもやらなくなってきたかな。委ねるというか、先まで言うと野暮になるからね。それぞれで受け取ってもらっていい。

―曲を聴いた人が自由に解釈してくれればいいということですね。僕はちょっと物悲しく感じました

増子: この曲は、自分が手放してしまった大事なものや、誰かが手放したものを見たときに人間は同じ轍を踏むんだな、それはもう取り戻せないから悲しいですね。若い頃はもしかしたら取り戻せるかもしれないけど、歳を重ねることによって取り戻せない事実を理解した、受け入れたという曲。『初めての旅につき』は、生きているといろんな失敗をするわけで、何でこんなに失敗するんだろうなと思う時もあるわけじゃない。そのとき、ちょっと待てよと。初めての旅だったらそりゃあ誰でも失敗するわなと。お互いそうなんだから、俺のことも許してねという曲だね(笑)。

―この2曲がアルバムにいいアクセントを付けていると思います。そして『1999GT-O』のサウンドが個人的に好きです

増子: 80年代90年代のハードコアだね。俺らが高校生ぐらいの時にパンクを聴いて受けた衝撃をそのまま表した曲。あと、1999はノストラダムスの大予言のことだね。俺らの世代は、1999年に地球が滅亡するという予言を何となく気にしながら生きてきたんだけど、何にも変わらず正月が来たからね(笑)。あれから20年近く経ってるのにまだ言ってんのかと(笑)。この曲もロックマジックで、<バカガミル ブタノケツ>という小学生の煽り言葉が、このサウンドに乗るとちょっとカッコ良く聴こえる(笑)。外国の人が聴いたらビックりするだろうね。

―その言葉、子供の頃によく言っていました。あと、そもそも今の若い子たちはノストラダムスの大予言を知らないと思いますので「何それ?」ってなる気がします

増子: それもまた面白いかなと思って。ネタ解説をしないで、何のことか分からんけどそのうち何かのきっかけで知ったときに「あっ、あの歌か!」みたいな。その時に「おーっ」と思ってもらえればいいかな。実にくだらない曲なんだけどね(笑)。

―また曲調が当時のあの雰囲気を思い出しますね

増子: 切羽詰まった感じね(笑)。

―そうです(笑)。そして次の曲『YOI・YOI・YOI』は雰囲気ガラッと変わって音頭のような楽しい曲になっています。落差が激しいですね

増子: レゲエ調の曲を何回かチャレンジしてきたけど一回もできなくてね。諦めずに今回もやってみたんだけど、やっぱりできない。それはなぜか、拍子を全部前でとっちゃうから河内音頭みたいになっちゃうんだよ(笑)。それはそれで独特のグルーヴが出るからいいんじゃないかとやってみたらこうなった(笑)。タイトルは、レゲエの曲でよく言う「YO!YO!」からきてるんだけど、日本語で言うとそれが「アーヨイヨイ」って(笑)。

―日本人らしくていいと思います(笑)。最後の曲『希望丸より愛をこめて』も日本人らしさのある人生を歌った曲かなと

増子: 人生は泥舟であり、それは誰も避けられないもの。必ず沈みゆく船だから、そこから降りてくるものに対していつかまた会おうぜと。もはや諦めに似たものだよね。それでも俺たちは行くしかないんだと。まぁ泥舟に希望丸と付けている時点で夢も希望もないんだけどね(笑)。それでもちょっとした希望に向かって進んで行くのが人生だということだね。自分が作ったのに、レコーディングで歌ったときに自分の人生と重なるものがあってちょっとグッときたからね。

―男なら誰しもがグッとくる曲だと思います。こういうことも考えられているんですね

増子: 日々思うことを曲にしていると、こういう気持ちになる時もあるんだよ(笑)。よく制作に煮詰まった、歌詞が書けないと言っているヤツがいるけど、俺はネタに詰まることはないから。毎日思うことって山ほどあるじゃない。それ全部を歌にしていいんだよ。何で行き詰まるか、それはラブソングばっかり書いてるから。10曲中8曲がラブソングだったらそりゃあ行き詰まるって(笑)。

―間違いないです(笑)。日々思ったことを綴る日記だったらネタに困らないと

増子: 毎日思うことはいっぱいあるし、いろんな事件も起こるからね。しかも歳を重ねることで、同じようなことがあっても思うことも消化の仕方も違うから、ツアーでニューアルバムの曲を中心にセットリストを組むと、新曲と同じラインにある昔の曲が必ずあって、それって同じようなことを思った時に作った曲なんだよね。でも30代の歌詞と今の50代での歌詞とでは違う。それがすごく面白い。自分の心の変化が読み取れて。だから、見ている方もこの曲は同じモチーフなんだと感じられて面白いと思う。それは長年やってる大きなメリットだね。

―確かに。怒髪天は来年35周年を迎えられますし

増子: 正直こんなに長くバンドやるとは思わなかったけどね。そもそもパンクバンドから始まってるから、長くやるというより一発当ててやろうとか世の中を引っ掻き回してやろうと思ってたから。

―それが長く続くのですから不思議ですね

増子: バンドを組むのが夢だったから、組んだ時点で夢が叶ってるからね。それ以外のことは全部おまけ。そりゃあ続くよ、楽しいから。

―長く続ける秘訣ですね。そして今作のタイトル『夷曲一揆』ですが、この言葉はどこから出てきたのですか?

増子: “夷曲(ひなぶり)”というのは、昔の和歌の中で使われていた言葉で、田舎から出てきた人が歌った田舎者の歌だったり、田舎者の言葉で綴った歌、故郷のことを歌った歌のことをいうらしい。俺らは北海道から出てきて27年経つんだけど、25歳のときに出てきたから人生の半分以上を東京で過ごしている。それでもやっぱり田舎者で、東京の人間だとは到底思えない。若い頃はコンプレックスもあったけど、暮らして行くうちに故郷を背負ってここで戦っていく生き方が自分たちには合ってるんだなと。そういう田舎から出てきた奴らが起こすレボリューション。ただ、レボリューションや革命は規模がデカいから、俺らは村ぐらいなんじゃないかと。じゃあ一揆でいいかということで『夷曲一揆』にしたね(笑)。

―一揆って農民が起こすものですよね

増子: 計画性とか大きいものをひっくり返すという壮大な革命よりも一揆という言葉って、切羽詰まってというか、止むに止まれずみたいなニュアンスがあって、すごくいい言葉だなと思って。

―田舎者が切羽詰まって起こす一揆というニュアンスなんですね。そのジャケットも思い切っていますが、これはメンバーの方ですか?

増子: これはグループ魂のドラムの石鹸だね。あいつ今年で50歳だけど、体を鍛えてるからね。ジャケットを作る時にふんどしでいこうぜとなったんだけど、やっぱり若者じゃダメなんだよね。おっさんの重くてゴツっとした感じがいいなと思っていたらちょうどいいのがいたぞと(笑)。違うバンドだけど(笑)。

―確かに(笑)。そして、今作の全国ツアーは10月から始まりますが、その前にこのエリアですと8月25日(土)、26(日)に『中京イズバーニング 2018』があります

増子: 26日(日)はワンマン、25日(土)は亜無亜危異(アナーキー)と対バンなんだけど、彼らは俺がバンドをやるきっかけになったバンドだから。アナーキーを聴いて、バンドでこんなこと言っていいんだ、これがパンクなのかと思って始めたから嬉しいね。

―おっさんパワー全開のライブが見られそうですね。その『中京イズバーニング』も10月からのツアーもすごく楽しみにしています。では最後に、この作品を手に取る人へ向けてメッセージをお願いします

増子: ロックバンドとは何なのかという定義が揺らいでいる中で、言いたい放題やりたい放題やったアルバムだからぜひ聴いてほしい。俺が日々思っていることは特別なことじゃないし、同じ時代を生きている人だったら誰しもが思うことをモチーフにしているから、絶対に通じると思う。それをすごく分かりやすい曲調で歌っているので、一番聞いたら二番が歌えると思う。歌詞を覚えて是非ライブへ来てほしいね。

怒髪天『裸武士』先行試聴用動画 AL『夷曲一揆』

■リリース情報

『夷曲一揆』
Album
2018.7.11 発売
初回限定盤(CD+DVD) 3,800円(+tax)
通常盤(CD) 3,000円(+tax)

■LIVE情報
怒髪天 presents デリバリーブラッサム
08月03日(金) 山形 MUSIC SHOWA Session “50分一本勝負。男錯乱坊”

怒髪天 presents 中京イズバーニング 2018
08月25日(土) 名古屋 CLUB UPSET “真・中京イズバーニング”
08月26日(日) 名古屋 CLUB UPSET(ワンマン)

一揆一友TOUR ~権べ&田吾~
2018年
10月02日(火) 千葉 千葉LOOK
10月06日(土) 岐阜 yanagase ants
10月08日(月祝) 香川 DIME
10月09日(火) 愛媛 松山サロンキティ
10月11日(木) 鹿児島 SR HALL
10月13日(土) 熊本 熊本B.9 V1
10月14日(日) 福岡 DRUM Be-1
10月16日(火) 滋賀 滋賀U★STONE
10月27日(土) 福島 郡山CLUB #9
10月28日(日) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
11月03日(土祝) 石川 金沢 AZ
11月04日(日) 長野 ALECX
11月10日(土) 秋田 Club SWINDLE
11月11日(日) 宮城 仙台 Rensa
11月15日(木) 兵庫 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
11月17日(土) 広島 広島セカンド・クラッチ
11月18日(日) 岡山 IMAGE
11月20日(火) 静岡 MESCALIN DRIVE
11月23日(金祝) 栃木 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
11月24日(土) 茨城 mito LIGHT HOUSE
2019年
01月12日(土) 大阪 ユニバース
01月13日(日) 愛知 名古屋ReNY limited
01月19日(土) 北海道 札幌PENNY LANE24
01月20日(日) 北海道 札幌PENNY LANE24
01月26日(土) 東京 Zepp DiverCity TOKYO

一喜一遊TOUR ~権べ&田吾~
02月02日(土) 沖縄 桜坂セントラル

一揆一友TOUR ~権べ&田吾~
“権べ&田吾の思えばトークへ来たもんだ”(トーク&ライブ)
02月03日(日) 沖縄 桜坂セントラル

■オフィシャルHP
http://dohatsuten.jp/

■プロフィール
増子直純(Vo)、上原子友康(Gt)、清水泰次(Ba)、坂詰克彦(Dr)。
1984年、札幌で結成。自らの音楽性をJAPANESE R&E(リズム&演歌)と称し、独自のロックンロール道を確立。メンバーそれぞれの抜群のキャラクターを活かして、楽曲提供、映像作品/舞台出演、アイドルとのコラボなどロックバンドの垣根を越えて活動中。
2018年7月11日に、2年振りのフルアルバム『夷曲一揆(ヒナブリイッキ)』の発売が決定。10月からは全27公演のリリースツアーも決定している。

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