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INTERVIEW 旬のアーティストインタビュー

2017.11.16

かりゆし58が『変わり良し、代わりなし』に込めた思いを紐解く

「今作は、近くにいる人や自分の生まれた街に届けようから始まりました(前川)」

昨年10周年記念ベストアルバムをリリースする中、中村洋貴(Dr)の病気もあり新たな一歩を踏み出すタイミングをずっと図り続けてきたかりゆし58。彼らが、ついに3年ぶりとなるオリジナルアルバム『変わり良し、代わりなし』を10月18日にリリースした。その作品の始まりから込めた思いまで、前川真悟(Vo/Ba)と新屋行裕(Gt)の二人に話を訊いた。

取材・文 坪井

ー昨年リリースした10周年のベストアルバムで一つの区切りを迎えたと思います。それから初となる作品になりますが、次への一歩に対しての思いから伺ってもいいですか?

前川真悟(Vo/Ba):10周年のアルバムを作っている途中、ドラムの中村洋貴の腕の病気が発覚したんです。洋貴がいない状態で10周年を迎えるのはどうなんだろうという話をしていたんですけど、洋貴が「俺たち4人の10年じゃない、他の人たちもいての10年なんだから、制作もツアーも続けるべき」と言ってくれたのでベストアルバムを出しました。でも、10周年のテープをキレイに切れなかった。だから、リスタートはいい一番いい形で踏み出したくて。そのポジティブなタイミングを図っての今作なので、逡巡はありました。

ー収録曲はいつ頃から作り始めたんですか?

前川:洋貴にアルバムの話をしようと沖縄で一緒に飲んだ時、楽器が置いてありセッションもできるお店で、俺が「こういう曲を作ってみたんだけど」ってバーっと弾き始めたら、洋貴が途中から入ってきて、自分の動く範囲でドラムを叩いてセッションをしたんです。その後に「アルバムを作ろうと思うんだけど、どう思う?」と言ったら、洋貴が「やった方がいい」と言ってくれて。そのセッションした曲が『ホームゲーム』という曲で、この曲から今作が始まりました。

ー『ホームゲーム』は思い出深い曲なんですね

前川:あいつは恥ずかしがるだろうけど、『ホームゲーム』は洋貴に書いた曲でもあるし、バンドに向かって書いた曲でもあるんです。今作は、遠くへ届けようとか広く人に発信しようとは逆で、近くにいる人や自分の生まれた街に届けようと始まっていきました。

ー今作はその近くにいる人や生まれた街に届けることをテーマに曲を作っていかれたんですか?

前川:今回は理由も何にもなく、「こういう曲を歌いたいね」と思いついたお題を出し合うところからスタートしました。例えば『Happy birthday song』は(新屋)行裕が出したんですけど、居酒屋とかで誕生日を祝うとき、いきなり暗くなってケーキが出て来ますよね。その時ドリカムの曲が流れることが多いなと思っていて。せめて自分の地元の街だけでいいから、ハッピーバースデーで俺たちの曲が流れたら嬉しいよねから出来ました。また、CDも買わないライブハウスへも行かないタイプのヤツが昔から忘年会で歌う曲があって、その姿がとてもいいから、その一曲に自分たちの曲を添えられたら嬉しいなから、忘年会で歌える曲といったように作っていきました。

新屋行裕(Gt):結構身近なところから曲が生まれたよね。

前川:うん。『ユクイウタ』は地元で開催される4年に1回の祭りがあって、今年それが開催されたんです。その時に、田舎町だから10代後半になるとみんな街へ出て行くんですけど、そいつらが4年に1回祭りの日だけでいいから地元に帰ってきてくれたら嬉しいなと思って、帰ってきたくなるような歌を書きました。

ーその中で今回『流星タイムマシン』がリード曲になっています。リードにした理由をお聞きしてもいいですか?

前川:コーラスに洋貴の声が入っているから間違いなく彼も参加してるんですけど、ドラムは打ち込みを使ってるんです。それで本当に今作がリスタートの第一歩として掲げられるか、洋貴も気持ちに整理をつけてできるかと考えた時に、最後の何かが自分たちの中になくて。その時に(宮平)直樹が『流星タイムマシン』という曲を書いてきたんです。直樹が作曲、行裕と僕が初めてハモリではなくツインボーカルというアプローチで歌い、ミュージックビデオでは洋貴が何週間もかけて作ったジオラマを中心に展開していく。『流星タイムマシン』は、4人それぞれの活躍が集約された初めての曲で、それをリードとして掲げるんだったら折り合いがつくし、アルバム全体のことがこの曲に集約されている気がしたので決めました。

新屋:最後にできた曲だったしね。

ー『流星タイムマシン』も含め収録曲の歌詞には、星や月、太陽などの言葉が多く沖縄の空をイメージさせます

前川:制作期間のほとんどを沖縄で過ごしていたんです。それもあって、東京にいる時より空を見てる時間が多かったのは間違いないですし、その影響はあったと思います。

新屋:沖縄と言ったら青い空と青い海のイメージがあるだろうし、空も月も星もキレイ。そういういろんなものが偶然重なったのかなと思います。

ーそんな中、『髪を切る』は他と雰囲気が違います。どういう心情から生まれたんですか?

新屋:う〜ん、特にないですね(笑)。6年伸ばしていた髪をそろそろ切ろうかなと思った時、切ったらどうなるんだろうと思って書きました。あと、こういう優しげな歌は喜んでくれる人がいっぱいいるかなというあざとい感じです(笑)。

前川:俺もどんな思考回路で行裕がそこへいったのかを考えたんですが、切った瞬間から、6年間体の一部だった髪がただの髪の毛になりますよね。だから過去を断ち切ったんだなと。実際、そこから性格が変わったんですよ。見た目も爽やかになったし朝走るようにもなった。面倒くさがり屋なのにインスタグラムも始めたし(笑)。行裕の歌詞は、日常ののほほんとしたような風景を描いているのに、ものすごく孤独なんじゃないかと思ってしまうような温度感もあって、面白いなと思います。

ーこの曲が作品の真ん中ぐらいにあるのもアクセントになっていいですよね

前川:実は、かりゆし58が変わっていくことを肯定していく前半部分から行裕の『髪を切る』をへそに、次の曲からどんどん地元へ戻っていく流れになっています。きっと今までかりゆし58を聴いてくれてた人からすると、後半の『ユクイウタ』や『FFF』あたりの曲がかりゆしっぽいとなると思います。『ホームゲーム』が一番最初にできた曲だから頭に持ってこようという案もあったんですけど、勇気が足りないよねと。思い切って今までのかりゆしと一番違う印象を与えるであろう曲から始まり『髪を切る』で空気をバッと入れ替えて、それこそ髪を切って(笑)、新しくも懐かしい曲たちへ繋がるようにしました。

新屋:曲順にだいぶこだわってたもんね。

ーちなみに、前半部分では『アガリミナギル効果』のベースが印象に残ります

前川:今回ベースは直樹が弾いている曲が多いんですよ。ギタリストがベースを3、4曲弾いていて。それは僕がマイクを持てるし、伝えたいことも体全体で表現しやすいからでもあります。

ー逆に、次の曲『ナナシの隣人』は優しい曲ですね

前川:あるドラマ主題歌のコンペの話をいただいて書いた曲です。“都会の喧騒の中で孤独に打ち勝ちながら戦う刑事の物語”という内容をいただいて、山田孝之さんが出演されていた自販機の前で営業と鳶職がお互いのことを想像して、「俺には無理、あんた偉いな」となって、お互いに「お疲れ、誰だか知らないけど」と別れて行く缶コーヒーのCMを思い出して。俺そのCMめっちゃいいなと思っていて、都会で孤独を歌うのは難しくないけど、都会の中のなんでもない肩の触れ合いに巡り合いを感じられれば、意外と知らない人同士の群衆じゃなくなるのかもと思ったので、それを書きました。

ーそうだったんですね。先ほど曲順にこだわられたとおっしゃっていましたが、そもそも収録曲はたくさん作った中から選ばれたのでしょうか?

前川:実は収録曲以外一曲もできていないんですよ(笑)。ここ何年かボツ曲はないですね。ボツにしてしまおうという空気もいっぱいあったし、新しいものを作れないわけではないですが、そういうことじゃなくて。例えば、俺たち夫婦は子供をプロ野球選手にするのが夢なので、子供が生まれたけど体が小さいからフィジカルで負けるなと思って別の家に渡す。次の子も足が遅いから無理だなとやっていたら、いつまでたってもプロ野球選手にするどころか、子供に愛情を注ぎ育てる親にすらなれないですよね。そんな人の元に神様はプロ野球選手を絶対に送らないと思うんです。だから、その子のどこがいいのかを一生懸命探す。この言葉や歌詞がいいから、そこを活かすためにこっちを変えようとどんどん蘇生させるべきなんです。一回聴いてダメだと思っても必ずいいところがあるからそれを探す作業をしようということですね。

ーなるほど。今回まずテーマ出しされたとおっしゃっていたので、曲には個人個人の思い入れがありますよね

新屋:もしかしたらテーマ出しのところである程度完成されて満足はしたかもしれないですね。

前川:歌いたいことを歌えるという喜びが先にあったのもあるしね。

ーそしてツアーも始まります。日本全国33本回られますが、ライブは全国のファンに会いに行く作業なのかなと思うんですよね

前川:僕もそうだと思います。今は世界中の音楽を部屋にいながら無料で楽しめる時代。お金を使わなくても時間をかけなくても音楽を楽しめるその時代に、自分の家から何キロも離れたライブハウスまで足を運んで、窮屈で決して居心地がいいとは言えない空間で音楽を楽しむためにお金を払っている。そのアクションは音楽家にとってご褒美なんです。この生業をやらせてもらって良かったなと思える瞬間がそこにあるので、「ありがとう」をなるべく一人でも多くの人に言えたらいいなと。ソールドアウトを目指すというより、最大限の人に感謝を伝えられたらいいなと思って回ります。

ーすごく楽しみにしています。では最後にライブへ来てくれる方々へ向けてメッセージをお願いします

新屋:ここに来ていないメンバーと僕ら全員は同じ気持ちです。本当に楽しいライブをしたい思いがあるので、それを楽しみにしてくれたらいいなと思います。

前川:決してバンドとして絶好調じゃないこの2年間から救い出してくれたのがライブだったんです。アルバムを出していないのにライブで日本全国を回ったんですが、ギター二人が楽しんでるのを見て、ライブには人を救うことを体感しました。それを一緒に感じ合える人が一人でも増えれば音楽も喜ぶかなと思いますので、ぜひ会場に来てください。

かりゆし58『流星タイムマシン』 Music Video

■リリース情報

『変わり良し、代わりなし』
Album
2017.10.18 発売
3,000円(+tax)

■LIVE情報
かりゆし58『ハイサイロード 2017-18~変わり良し、代わりなし~』
2017年
11月17日(金) 東京 赤坂BLITZ
11月22日(水) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
11月23日(木祝) 長野 NAGANO CLUB JUNK BOX
11月25日(土) 山梨 KAZOO HALL
11月30日(木) 静岡 LiveHouse 浜松 窓枠
12月02日(土) 三重 M'AXA
12月03日(日) 岐阜 CLUB ROOTS
12月09日(土) 石川 金沢EIGHT HALL
12月10日(日) 富山 Soul Power
12月15日(金) 埼玉 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
12月17日(日) 秋田 Club SWINDLE
12月18日(月) 宮城 仙台MACANA
12月21日(木) 北海道 札幌PENNY LANE24
2018年
01月08日(月祝) 愛知 DIAMOND HALL
01月11日(木) 兵庫 チキンジョージ
01月12日(金) 京都 KYOTO MUSE
01月14日(日) 奈良 奈良NEVER LAND
01月16日(火) 大阪 BIGCAT
01月21日(日) 鹿児島 CAPARVO HALL
01月23日(火) 宮崎 SR BOX
01月25日(木) 大分 DRUM Be-0
01月27日(土) 福岡 DRUM LOGOS
01月28日(日) 長崎 DRUM Be-7
02月01日(木) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
02月03日(土) 山口 周南RISING HALL
02月04日(日) 島根 松江 AZTiCcanova
02月07日(水) 広島 広島CLUB QUATTRO
02月09日(金) 愛媛 松山サロンキティ
02月11日(日祝) 高知 CARAVAN SARY
02月12日(月祝) 徳島 club GRINDHOUSE
02月14日(水) 香川 DIME
03月10日(土) 沖縄 桜坂セントラル
03月11日(日) 沖縄 桜坂セントラル

■オフィシャルWEB
http://kariyushi58.com

■プロフィール
2005年4月に沖縄で結成された、前川真悟(Vo/Ba)、新屋行裕(Gt)、中村洋貴(Dr)、宮平直樹(Gt)からなる4人組バンド。沖縄音階にロック、レゲエをチャンプルーしたサウンドと、かざらない言葉でメッセージを発信し、世代を超え人気をよんでいる。2006年2月にミニアルバム『恋人よ』でデビュー。同年7月リリースの母への感謝の気持ちをストレートに唄った『アンマー』が多くの共感を呼び、日本有線大賞新人賞を受賞。2011年7月にベストアルバム『かりゆし58ベスト』をリリース、初のオリコン総合アルバムチャート5位を記録。2015年12月に中村が病気療養のため活動を休止。2016年2月に10周年ベストアルバム『とぅしびぃ、かりゆし』を発表。そして、2017年10月18日に3年ぶりとなるオリジナルアルバム『変わり良し、代わりなし』をリリース。さらに、全国ツアー開催が決定。

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