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ライター ツボイ

2018.5.24

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前野健太ニューアルバム『サクラ』インタビュー

「歌の中の登場人物たちと戯れてほしい」

シンガーソングライターだけでなく、NHK Eテレ『オドモTV』にレギュラー出演するなど近年は文筆家や映画・舞台役者などへも活躍の場を広げている前野健太が、4年半ぶりのオリジナルアルバム『サクラ』をリリースした。今作で彼が目指したのは“新時代の歌謡曲”。それを実現するため、荒内佑(cero)や石橋英子など4人のアレンジャーを迎えている。それによって得られたものとは?本人に話を訊いた。

ーオリジナルアルバムのリリースは4年半ぶりになるんですね。これまでの前野さんの曲の中では『伊豆の踊子』が好きなんですけど、その当時と今作とは印象が違います。サウンドもですが、何より声が低くなったのかなと

前野健太: そうですね。声のキーは下がっています。というより、下げた曲が多いですね。しゃべり声みたいに歌っている人が好きなので、自分もそういう風に歌ってみたいという気持ちがありました。

ー低いキーで歌うために音を合わせにいったんですか?

前野: 曲を付けている時に張り上げないキーというかコードを選ぶ流れです。段々キーを下げていきました。いつもGのところをFに。それでもちょっと高いなとなって最終的に2段階ぐらい下げました。

ーしゃべり声ぐらいの低い声で歌いたいとは、いつ頃から思うようになったんですか?

前野: ここ10年ぐらい高音の男性歌手が多いなと思っていた中、この4年半の間に聴いていた曲で男性の低音の歌っていいなぁと思ったんです。フランク永井さんや石原裕次郎さんってめちゃくちゃ低いじゃないですか。その男の低音みたいな声をやってみたいなと。普段の喋り声は結構低いので、それを活かせないだろうかと声楽の先生のところへ学びに行って、低音の声を手に入れました。

ーその低音の声は、前野さんの楽曲にある昭和歌謡やムード歌謡の雰囲気に欠かせないと思います。先ほど石原裕次郎さんの名前が出ましたが、そもそもそういった曲が好きだったんですか?

前野: 途中から好きになったと思います。特別歌謡曲というジャンルが好きなわけではなく、この4年半で日本語の曲を聴いて、日本語で歌うこと自体に何か色気みたいなものを持っている人、例えばちあきなおみさんや荒木二郎さんってすごいなと思ったんです。そこから、どうしてそうなっているんだろうと思うようになり、低い声への興味が始まりました。

ーなるほど。今回4人のアレンジャーさんが編曲をされていますが、みなさんとはどのようなお付き合いがあったのでしょうか?

前野: ceroの荒内くんは昔から知ってはいましたけど、今回初めてちゃんと依頼しました。石橋英子さんは前2作のライブツアーでも一緒にやりましたし、武藤星児さんは2、3年前に1回やってもらっていました。森は生きているというバンドを以前やられていた岡田拓郎さんは初めてです。

ー初めての方もいらっしゃるんですね。どうしてこの4人の方にお願いしたんですか?

前野: 候補の方はもっとたくさんいたんですが、曲を見てこれはこの人が合うなどレーベルのディレクターと相談してお願いしました。

ー作詞作曲は前野さんがやられていますが、今回は最初からアレンジャーさんを入れようと考えられていました?

前野: そうですね。作詞作曲は僕がしますけど、アレンジャーさんと歌い手とで一つの歌をファンタジーなものにしたいなと。60年代70年代の歌謡にはそれがあったと思うんです。そこに憧れがあって、シンガーソングライターは自分で歌を作って歌うので、それをもっとよそ行きというかみんなの曲にしたいなと。その狙いからアレンジャーさんを入れて分業制にしました。

ー楽曲をアレンジャーさんに渡したら思った以上に変わった!ということはありました?

前野: ありました。全然違う感じになっていました。一番変わったのは『大通りのブルース』ですね。曲の中にある歌心は全く変わらず強さを増し、さらに幅と奥行きが出ました。石橋さんのアレンジがこの歌の持っている可能性を押し広げてくれました。この歌が行きたかった時空を超えて歪んでいく感じが、コードをちょっと変えただけで目に見えるように浮かんできたので、びっくりしました。

ーアレンジャーさんが入ることで曲の世界観に幅と奥行きが生まれたんですね

前野: だいぶ。でも歌の中の歌心は全く変わらず、むしろ強くなる。たぶん歌詞も読み込んで下さって、前野さんはこういう風に行きたいんでしょってリードしてくれたのかなと。

ーこの曲こそ声が低いですよね

前野: この曲はキーが低いですね。さっきお話しした喋り声っていう感じで歌えているなと。この曲に関しては、すごいところまでいったぞっていう達成感がありましたね。

ー気になった曲があるのですが、3曲目の『アマクサマンボ・ブギ』は競馬場で作られたのですか?というか、そもそも競馬好きです?

前野: 好きですね。名古屋競馬場へも行ったことがありますし、岐阜の笠松競馬場へも行きました。笠松競馬場は素晴らしい所でした。ああいう風景には歌があるんですよね。競馬場があって赤い電車が走ってくるあの風景がいい。競馬場の真ん中に畑があって白鷺が飛んできて…よく覚えています。そういうときに歌ができるんですよ。風景が歌を連れてくる。実際この曲も大井競馬場で作りましたので。

ー田舎の風景が歌を連れてくるんですかね

前野: 確かに落ち着いた風景ですけど来ている人達はギラギラしている。そのギャップというか、その中で人間が燃えている感じの両方がないとダメなんでしょうね。

ーなるほど。そのギャップで言うと、最後の曲『防波堤』はタイトルから演歌調なのかなと思ったらそうではなくて、そこまで昭和感もなかったという…

前野: 防波堤は、震災後にスーパー防波堤や防潮堤というものが出てきたことで、言葉の持つ響きや意味が変わったと思うんです。それをあえて歌いたくて。だから、タイトルは『防波堤』じゃないといけなかった。いろんな人の思いがある中、新しくできる防波堤や防潮堤で遊ぶ子どもたちや恋人たちがこれから現れるんだろうなと思い、二人の名前やずっと一緒だよって刻むといういい部分、光が当たっている部分を歌いたかったんです。ロマンティックなことであってほしいという願いを込めています。

ー歌詞に<防波堤に刻んだ>ってあるのはそういう思いからなんですね

前野: そう刻んだ人たちもいずれ死んでしまうじゃないですか。でも海がその瞬間を見ていたんじゃないかって。

ーロマンティックですね

前野: スーパーロマンティックです。一応ロマンスの貴公子って呼ばれてるんで(笑)。

ーそうだったんですか(笑)。タイトルの『サクラ』って日本人の心情を表すのにぴったりの言葉だと思うんですよ

前野: 日本人にとってサクラには独特な思いがありますよね。一気に咲いて一気に散るところに、昔から日本人の心が付き合ってきたんだろうなと思います。

ーそんな気がします。ジャケットの雰囲気も好きです。真っ赤なパプリカを絶妙に支えている写真がすごくシュールで

前野: 実は写真集も出るんですよ。この写真のシリーズには良いものがまだまだあるので、その写真と東京の山の上ホテルで缶詰して書いた詩もあります。写真は最初シュールだと思っていたんですけど、意外と濃いメッセージがあるなと。パプリカがあって初めて生まれる表情なんですよ。絶妙な力加減でパプリカを支えなければいけないので。生き物たちと支え合うというメッセージなのかなって思いますね。

ーそんなメッセージがあったんですね。写真集も楽しみです。そして、ツアーも5月20日(日)からスタートします。今作の曲はもちろん…

前野: 全部やりたいと思っています。今までは昔の曲を混ぜてやっていたんですけど、今回は1曲目から最後まで通してやりたいなと。このアルバムを通しで歌って、アンコールでこれまでの曲をやれたらいいなと考えています。

ー通しで聴いてみたいです!では最後に、そのライブに来てくれる方へメッセージをお願いします

前野: 歌の中にいる登場人物に包まれてほしいですね。歌の中の登場人物たちと戯れてほしい。そういうふうなライブにしたいと思っていますので、是非足を運んでいただければと思います。

前野健太 『今の時代がいちばんいいよ』 Official Music Video

■リリース情報

『サクラ』
Album
2018.4.25 発売
2,500円(+tax)

■LIVE情報
前野健太 ニューアルバム「サクラ」発売記念ツアー ~開花宣言~ <バンド篇>
5月20日(日)東京 WWW X
5月31日(木)福岡 BEAT STATION w/ハンバート ハンバート
6月1日(金)広島 広島CLUB QUATTRO w/ハンバート ハンバート
6月2日(土)大阪 Shangri-La w/シャムキャッツ
6月3日(日)愛知 伏見JAMMIN' w/シャムキャッツ

前野健太 ニューアルバム「サクラ」発売記念ツアー ~開花宣言~ <ソロ篇>
6月7日(木)宮城 Rensa w/竹原ピストル
6月22日(金)北海道 BFHホール w/スカート
7月7日(土)沖縄 桜坂劇場ホールA w/大森靖子
7月12日(木)京都 磔磔 w/吉澤嘉代子

■オフィシャルWEB
https://maenokenta.com/

■プロフィール
1979年埼玉県生まれ。2007年9月に1stアルバム『ロマンスカー』をリリース。2009年に松江哲明監督のライブドキュメンタリー映画『ライブテープ』で主演を務める。2011年12月には、同じく松江監督・前野主演による映画『トーキョードリフター』が公開。そして、2013年にFUJI ROCK FESTIVAL、2014年にSUMMER SONICに出演。2016年12月より劇場公開されたみうらじゅん原作、安斎肇監督による映画『変態だ』で主演を務める。2017年2月、初舞台『なむはむだはむ』に岩井秀人、森山未來と共に参加。2018年4月よりNHK Eテレ『オドモTV』にレギュラー出演中。そして、4月25日にニューアルバム『サクラ』をリリースした。

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