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ライター ツボイ

2018.11.14

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ROTH BART BARON 3rd Album『HEX』インタビュー

「今まで以上に、これから出会う人たちのことを意識して作りました(三船)」

11月7日に、3年ぶりとなるアルバム『HEX』をリリースしたROTH BART BARON。より緻密で、より美しくなったサウンドと、白と黒、君と僕の間を行き来する歌詞が印象的な作品となっており、それは現代人の生き方のようにも思える。どのような思いやきっかけから今作は生まれたのか。その背景について三船雅也(Vo/Gt)に話を訊いた。

―3年振りとなるアルバム『HEX』が11月7日にリリースされました。久しぶりですね

三船雅也(Vo/Gt): 前作の『ATOM』をリリースしてから、日本だけでなくアジアでもツアーをして、去年はロンドンへも行きました。自分的には急いでいるつもりだったんですけど、3年経ってしまったという感じです。でも曲はずっと書いていたので、120曲ぐらいありました。

―120曲も書いたのはすごい!その中からどのように収録曲10曲を選ばれたんですか?

三船: どれだけ書いても納得のいく曲ができなくてスランプになっていた時期に、アメリカでトランプさんが大統領になって、急に世界が白黒はっきりさせようという雰囲気になって。でも、世界にはいろんなグラデーションの人がいるから、その中間の人たちへ向けて作る音楽って何だろうと悩んでたら、『HEX』というリード曲ができたんです。今まではフォークギターで作った生の音をバンドアレンジしていたんですけど、それをあえてデジタル変換して人間味をなくす作曲方法にしたら、すごく今の世界を捉えている感覚になってあっという間に『HEX』ができました。もし二分された世界があるとしたら、アナログ的なものとデジタル的なものという二つの間のバランスを取るようなグレーゾーンというか、白と黒とをはっきりさせない中間色を行ったり来たりできるような広い音楽を作ろうと思ったら、デジタルとアナログのフィールドを持った『HEX』がすごくしっくりきて、新しい確信を得ました。そして、この曲を中心に今の世界へ向けてアルバムを作ればいいんだと思ったら、急に120曲の中から9曲が立ち上がってきた。ドラムの中原(鉄也)に、「今後新しいアルバムの核となる曲になると思うよ」と一言添えて『HEX』のデモを送ったことをすごく覚えています。

―だからタイトルになっているんですね。そもそもどうして『HEX』という言葉を採用したのでしょうか?

三船: 幾何学模様みたいな計算された形って人間が作った感じがしますよね。でも、蜂はすごくナチュラルに六角形の巣を作る。いつかそれをテーマにしたいなと頭で泳がせていました。さっき言った二分された世界を考えるようになって、デジタルとアナログや自然と人工物という二つがあったとしたら、蜂は人工的っぽい六角形の巣を自然に作り出しているなと。それは今の僕らに近くて、毎日LINEで会話しているけど直接会って話すこともあるし、SNSで何百人と繋がっても満たされない心があったり人の温もりが必要だったりする。自然に六角形の巣を作る蜂は、その両方の世界を知っているんじゃないかと思ったら、ヘキサゴンという言葉がパッと浮かんだのでその意味を調べたんです。すると、“HEX”と縮めることもできて、英語では「まじない」「魔法」「呪い」という意味があって、ドイツ語にすると「魔女」という意味にもなる。すごく幾何学的な模様なのに、人智を超えた力みたいな意味を持っている言葉なんだなと。いま、魔法や人智を超えた力の事件よりも人間の話題ばかりで、その中でバランスを取りながら生きている自分たちは、“HEX”という3文字で表せるんじゃないかと思って付けました。

―歌詞は君と僕の世界で展開されているように思うのですが、歌詞に関しても繋がりを意識されました?

三船: 僕らの曲にはいつもYOUとIが出てきます。そこを歌詞として表現する時に、今回は君と僕の間も白と黒のグラデーションをすごく考えました。例えば、僕が話しをしている僕を認識しているということは、もしかすると僕を見ている君は僕の一部かもしれない、もしかすると僕という生き物の延長がテーブルや話している君、向こうに見える壁なのかもしれないと思うと、その境界も突然曖昧になってくるなと。そこを拒絶するのか受け入れるのか。それをずっと考えることが、このアルバムを作っている時のメインテーマだったかもしれません。

―サウンドの軸はフォークにあると思うんですが、今作には『JM』のような曲もあって1曲1曲のサウンドの振り幅は広いですね

三船: 見た目は一緒でも中身は一人一人違うように、同じ音楽でもバラバラの10曲になっています。今思うと、意識的というより自然にそうなっていったのかもしれません。今までやっていなかった『JM』のような音楽を楽しめたし、受け入れられるようになった。自分たちに心のスペースみたいなものができて、音楽を楽しめて遊べるようになったので、ミュージシャンとして成長できたなと思うし、バンドとしても新しいものを受け入れる大きな心を手に入れた感じがします。

―音の隙間を細かな音で埋めているなと感じたのですが、これも楽しんで作られた結果ですよね

三船: いいヘッドフォンで聴かないと聴こえない秘密が10曲全部に入っています。今回ものすごくレンジを広くして作った楽曲が多いので、服がブルブルするぐらいの低音が出ているなどの驚きがあると思います。実は広い世界のパレットの中に、ちょこちょこっといろんな要素を書いていたり、僕のボーカルもたくさん重ねていますが、何を歌っているのか分からない音像にするなど録音での工夫もしたりしています。元々ビートルズやビーチ・ボーイズが昔やっていたサウンドワークにルーツを持つバンドなので、そういったところも聴いて発見を楽しんでもらえたらと思います。

―それはぜひ見つけたい。今作は『JUMP』から始まりますが、今名前の出たビートルズを感じました。意識はされていないと思いますが、曲はどのように作られたんですか?

三船: 最初はコンピューターだけで音を作っていました。割と打ち込みっぽいデジタルな曲だったんですけど、バンドでセッションをした時にデジタルで作ったものをあえて人間で翻訳してみようと思ってやってみたら、すごく自然で有機的になったんですよ。今回参加してくれているギタリストの岡田拓郎くん(ex. 森は生きている)は古いロックが大好きだから、ビートルズ感というか60年代70年代感が出たかもしれないです(笑)。そうやっていろんな人間が混ざってわちゃわちゃしている感じが『JUMP』は出たなと。アルバムでは最後に作った曲なのに、最初から居たかのように1曲目に居座っている感じです(笑)。

―その感じ分かります。ちなみに今作の中では個人的に『SPEAK SILENCE』が好きです。シンプルで音数が少なくて言葉数とメロディの感じが好み。最後の方のスピード再生された声も耳に残りますし(笑)。この曲ついても伺っていいですか?

三船: 割とシンプルなビートの中で言葉がフロウしていくというか、メロディを歌うより語っていく感じを、吉田拓郎さんスタイルじゃない日本のフォークで自分たちなりの表現で作りました。たくさんの音を使うバンドなんですけど、この曲に関してはいかに削ぎ落として輪郭を持たせるか、シンプルな線で音を書くかを意識しました。去年イギリスへ行った後に作った曲の中のひとつで、ヨーロッパから持ち帰ったものを日本でどう鳴らすのかと考えている時期にぽろっとできて。最初は大した曲じゃないなと思ったんですけど、サビのコーラスの<神さまが微笑んで…>の部分が書けて、コーラスのハーモニーは日本人じゃなく白人でもなく、映画『天使にラブソングを』じゃないですけど、ブラックの教会の匂いがするコーラスワークを使ってみようと工夫しました。この曲と『HEX』は、絶対合うと思ったので、シカゴに住んでいるグラミー賞もとったエンジニアのL10MixedItくんにミックスを依頼しました。快く受けてくれ、かつ自分の想像を超える音楽を作ってくれたので、いいコラボレーションができたと思っています。バンドの今までの曲と似通っていないけど、違和感なく自分の曲だと思えるし、想像力が別のベクトルなので新しい扉を開いちゃったなと。バンドが今までやってなかったゾーンに踏み込めた成長を感じる曲だと思います。

―確かに新しさも感じました。そして最後の曲『HAL』ですが、心臓の鼓動のような音が印象的で、なぜかエヴァンゲリオンを想像してしまいました(笑)

三船: なんとなく分かります。庵野さんらしい生々しさが出ているかもしれないです(笑)。この曲はイギリスで泊まっていた部屋にピアノがあって、そこでポロポロ弾いていたらできました。シンプルだけど力強さがあるから大事な曲になる予感はしていて。レコーディングの際に中原の生ドラムじゃなく、マシンドラムを使って作ったビートを心臓の鼓動のようにさせる実験的なアレンジはしていますが、曲自体はピアノのシンプルで力強いメロディなので、どんなアレンジをしても絶対に負けないというか、芯があるからどんなに着飾ってもちゃんと着こなせると思って大胆にコーディネイトしました。今回はすごく悩んでスランプになった時期もあったけど、単純にいい曲を作りたいなと思っていたので、集中してアルバム作りができたと思っています。

―それだからか、サウンドも歌詞もひとつの作品としてのまとまりを感じます

三船: 今まで以上にこれから出会う人たちのことを意識して作りました。歌詞を書いている時に山手線に乗っていろんなコーヒーショップへ行って、いろんな人の顔を見ながら「この人が喜ぶのは何だろう」と思う期間を一年ぐらい過ごして歌詞を書きました。それぐらい自分以外の人のこと、これから出会うべき人のことを考えたと思います。曲にそれが表れているなと思うので、ちょっとでもその人の心の根っこにある柔らかいところに触れられるといいな、届くといいなと思っています。

―そういうのを含め、現在リスナーと対話するプロジェクトPALACE(β)をやられていますが、どうしてこのようなプロジェクトを始めようと思われたのですか?

三船: ファンクラブという概念じゃなく、一緒に作り上げる体験ができる空間を作ろうと思って始めました。その結果、「『HEX』というシングルを出す時にこういうジャケットにしようと思うんですが、皆さんどう思いますか?」と聞いたり、「最近気になっているミュージシャンや人物は誰ですか?」「みんなが今読んでいる本を教えてください」と質問したりして、参加してくれている人たちから意見をもらっています。また、バンドのグッズを考えてくれた人がいて、それに対してみんなから「いいね」という意見が出る繋がりもいいですね。今後は、例えば名古屋で僕らを中心にPALACEのメンバーが小規模で音楽フェスを開催したり、全国の人のアイデアを借りながら東京じゃない街で丁寧に作り込んだイベントを作り上げたりするなど、どんどん大きなコミュニティになっていったらすごく面白いんじゃないかと。毎日見るぐらい今PALACEにやりがいを感じています。

―ここから新しいコトが生まれるかもしれないですね。そしてツアーも始まります。あまり聞いたことのない場所もありますが…

三船: 酒蔵や寺でもやります。元々ライブハウスばかりでライブをしていたわけではないので、違う会場でやると燃えますね。いい音を出してやろう、いい空気を出してやろうと。

―名古屋は来年1月18日(金)に伏見のJAMMIN'ですね

三船: 折り返した後すぐになるので、バンドも曲も成長していると思います。僕らは2人バンドだけど、ライブではトランペットやトロンボーン、キーボード、ギターも入って、もはやバンドメンバーとして一緒に6人で演奏します。彼らはハルモニウムやクロテイル、パーカッションなどの珍しい楽器も演奏しますので、その音の多様性も楽しんでもらえたらうれしいですね。

―楽しみにしています。最後に作品を手にライブへ来てくれる方へメッセージをお願いします

三船: 今聴くのにふさわしい音楽になっていると思います。そして、このバラバラな10曲がみんなの日常のサウンドトラックになったらうれしいです。みんなに届いてほしいと思っていますので是非一度聴いてみてください。

ROTH BART BARON『HEX』(Official Music Video)

■リリース情報

『HEX』
3rd Album
2018.11.7 発売
2,500円(+tax)

■LIVE情報
ROTH BART BARON LIVE TOUR "HEX" 2018-2019
2018年
11月10日(土) 宮城 仙台 メディアテーク
12月08日(土) 京都 UrBANGUILD
12月09日(日) 東京 渋谷 WWW
12月22日(土) 石川 金沢 puddle/social
12月23日(日) 富山 砺波 若蔵酒造“大正蔵”
2019年
01月12日(土) 熊本 蔦屋書店熊本三年坂
01月13日(日) 福岡 UTERO
01月14日(月祝) 山口 岩国 ロックカントリー
01月18日(金) 愛知 伏見 JAMMIN'
01月19日(土) 大阪 Clapper
01月20日(日) 広島 福山 Cable
02月02日(土) 北海道 札幌 Sound Crue
02月03日(日) 北海道 札幌 Curtain Call
02月10日(日) 静岡 浜名湖 舘山寺

■オフィシャルHP
https://www.rothbartbaron.com

■プロフィール
三船雅也(Vo/Gt)、中原鉄也(Dr)による東京を拠点に活動している2人組folk rock band。2014年1stアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』を真冬のフィラデルフィアにて制作。2015年には、2ndアルバム『ATOM』をカナダ・モントリオールのスタジオで現地ミュージシャンとセッションを重ねレコーディングし、Felicity レーベルよりリリース。
LIVE ではホーン隊やビザールインストゥルメント様々な楽器を演奏するマルチプレイヤーが演奏をサポート。活動は日本国内のみならず US・ASIA 等にも及ぶ一方、国の重要文化財『山形・文翔館』での公演も成功させる等、独創的な活動内容とフォーク・ロックをルーツにしながらもテクノロジーを貪欲に取り入れていく新しい音楽性で、世代を超え多くの音楽ファンを魅了している。
また、サマーソニック、フジロックなど大型フェスにも出演。2017年にはライジングサン・フェスティバル、ボヘミアンステージにて地元ミュージシャンとともに11人編成で圧巻のパフォーマンスを披露し、最終日の大トリを飾った。同年イギリス・ロンドン現地プロダクションからオファーをきっかけにEP盤『dying for』を製作。
そして2018年11月7日、待望のフルアルバム『HEX』を発表。発表に向けたクラウド・ファンディングを開始し、バンドとリスナーが繋がる新しい場所を作る『P A L A C E (β)』プロジェクトを立ち上げた。

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