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LIVE REPORT ライブレポート

2016.12.7

正しい夜明けを迎えるために、あなたの手を引く真っ赤なヒーロー

ビレッジマンズストア『正しい夜明け』リリースツアー
2016.11.14(月) @SPADE BOX

紅をまとった名古屋のヒーローバンド・ビレッジマンズストアが2年半振りに新作『正しい夜明け』をリリースした。現在、彼らはそれに伴ったツアーの真っ最中。2本目となる名古屋公演では、八十八ヶ所巡礼・オメでたい頭でなによりという強力なバンドを引き連れて華々しくSPADE BOXの舞台に登場。強烈な個性のぶつかり合いが生んだ、一夜限りの熱気あふれる夜に、集まったオーディエンスも開演前から期待に胸を膨らませていた。

暗転すると同時にノイジーなサウンドが流れ出し、一聴しただけでも高い演奏技術の持ち主だと分かるメンバーが、刺激的な混沌を作り出していく。「我々と貴様らで正しい夜明けを待とうぜ!」とステージに勇ましく飛び出してきたのは、八十八ヶ所巡礼。曲が始まる前から鼓膜と網膜に存在感を焼き付けた彼らだが、生き物のようにうねりを見せる音を自在に操る様は、魔物使いのようにも映る。

カオティックに爆走するグルーヴに触発され、突き動かされるように飛び跳ねるオーディエンス。たった数分足らずで、ライブハウスは彼らの色に染め上げられてしまっていた。楽器を使ったフリースタイルを披露するかのように数曲を奏であげ、「身体だけでなく心も一緒に踊らせるため、わざわざ東京からやって来ました」と口にしたマーガレット廣井(Vo/Ba)。“一緒に音を楽しんでいこう”と『銀河の恥…』『粋NALI』を投下したかと思えば、緊張感で引き締まったフロアを、水野をネタにしたMCで笑わせ、緩急自在のエンターテイナーっぷりを見せつけた。

『具現化中』で再び音の渦中へと飛び込んでいったかと思うと、不意に聞こえだしたのは、おどろおどろしい“君が代”。「酒でも飲みながら聴いてくれ!」と圧倒的なカリスマ性をもって愛国歌『日本』を披露し、彼らにしか作り得ない独創的なステージの幕を降ろした。

続いて登場したのは、オメでたい頭でなにより。ラジオ風の放送で転換中から場を盛り上げ、満を辞してオンステージ。「俺たちがオメでたい頭でなによりだー!」と赤飯(Vo)が叫ぶと、持ち前の存在感と求心力で、瞬時にフロアと一心同体の盛り上がりを見せる。

奔放な掛け合いが笑いを誘う『ふわっふー』では、ヘドバンの嵐を巻き起こし、「名古屋ー!ビレッジレコ発だぞー!ラストまで盛り上がれよー!」と朗らかに告げた赤飯。MCでは好青年な一面を見せつつ、ビレッジのリリースを“オメでたい”ことだと祝福した。“仲間のレコ発だからガッツリ盛り上げたい”とLIVEはヒートアップ。水鉄砲を噴射しながら傍観しているのがもったいない思えるほどのモッシュを巻き起こしたかと思えば、曲中に物販と称して使用禁止サイリウムを売り歩く。一見ハチャメチャにも思えるパフォーマンスだが、根本にあるのは目の前の人を楽しませたいという真っ直ぐな想い。フロアもその想いを感じ取ったのか、周りを気遣いながら全員で場を楽しんでいる姿がLIVEを象徴しているように思えた。

メンバーもフロアに降り、盛り上がりは最高潮へ。誰もがキラキラした笑顔を浮かべているのを見た赤飯が「このまま最高の景色でビレッジに繋げたい」と話し、多幸感が会場に降り注いだ『おめでたい頭でなにより』へ。晴れやかな表情で楽しむフロアを見て、最後に赤飯は嬉しそうに叫んでいた。「オメでたいレコ発で何よりです!」と。

トリを務めるは、この日の主役ビレッジマンズストア。先に飛び出してきた4人がステージに紅を散らし、それを追いかけるように華々しく登場した水野ギイ(Vo)。「クソつまんねぇ街にいる、めちゃくちゃ格好良いおまえの魂を救いにきたぞー!」と威勢よく叫び、火を噴くようなギターを合図に濃密なロックンロールでオーディエンスの心を掌握。数曲を披露し、「赤飯さんが寿司作ってくれた。俺も作っていい?」と悪戯めいた表情で水鉄砲を構えた水野。高いテンションの中、早くも1度目のハイライトを作り上げてしまった。

ファーを揺らしながら水野はタフネスに歌い続け、経過時間に比例するようにステージの熱量は上昇していく。煌びやかな鎧を脱ぎ捨てるかのようにファーを投げ、丁寧に大切に『盗人』を歌い出した水野。これだけ人がいるにも関わらず、彼の声は個々に寄り添うようにじんわりと響く。しみじみと唄を届けた後、「今日はありがとうってことを言いにきたんだ」と水野が話し出す。今までを振り返るように「つまらないこと一杯あったな。周りの人たちが羨ましくて仕方ない」と彼は呟き、それでも「俺は“あんた達が羨ましい”って思ったまま一生を終えて良いと思ってる!」と口にした水野。泣きたくなるほどの優しさを持って「おまえの綺麗な部分を知ってるやつらがここにいますよって話です!」と叫び、沢山の希望を詰め込んでフロアへぶっ放すように『WENDY』へ。自身も痛みを知っているからこそ、彼らの音は眩しく、温かい。

『PINK』『逃げてくあの娘にゃ聴こえない』と目の前で赤裸々に想いを口にする水野に感化され、感情のままに楽しんでいたオーディエンス。「名古屋は俺らがいるから、何回でもロックを鳴らせるよ!あんた達はつまんない時にここに来なさい!そんで俺と一緒にロックを鳴らしてください!」という言葉に、彼らがヒーローたる所以がぎゅっと詰まっている気がした。

メンバーが代わる代わる歌いあげ、賑やかなパーティー感を醸し出した『帰れないふたり』、『眠れぬ夜は自分のせい』とロックンロールの力を最大限に開放して、オーディエンスを明るく照らし続けた5人。時には心の中の暗闇に閉じこもってしまいたくなることもあるだろう。彼らの音楽、そして存在は、そんな時に手をぎゅっと握って引っ張り出してくれるような、エネルギーに満ちている。自身も傷だらけになりながら、それでもこちらへと手を伸ばす姿にリスナーはどれほど勇気付けられてきたのだろうか。満身創痍で突っ走っていく彼らと共になら、どこへだって行ける。そう確信させられる一夜だった。

文/渡辺真綾 写真/前田達也(tatsuyamaedaphoto.tumblr.com)

■セットリスト
-八十八ヶ所巡礼
1.仏狂
2.漆黒のときめき
3.仏滅トリシュナー
4.銀河の恥…
5.粋NALI
6.具現化中
7.日本

-オメでたい頭でなにより
1.憂き浮きウォッチング
2.ふわっふー
3.wosushi 〜ウォールオブ寿司〜
4.Fight for your right
5.さくらんぼ
6.生霊の盆踊り
7.オメでたい頭でなにより

-ビレッジマンズストア
1.夢の中ではない
2.車上A•RA•SHI
3.セブン
4.スパナ
5.盗人
6.WENDY
7.PINK
8.逃げてくあの娘にゃ聴こえない
(encore)
9.帰れないふたり
10.眠れぬ夜は自分のせい

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