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ライター T-Friends

2016.7.26

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Bob is Sick ワンマンライブ “そして”

2016.7.16 @APOLLO BASE

「Bob is Sickが終わり、みんなが始まります」ここからはじめるラストワンマン

Bob is Sickが活動終了を発表したのは今年5月。その時点で予定されていた残りの公演はたったの3本だった。アルカラが主催する神戸のサーキットイベント“ネコフェス”と、同世代として共にしのぎを削ってきたthe unknown forecastとのツーマンライブ。そしてこの日のワンマンライブだ。突然すぎる報告、短すぎるカウントダウンに驚いた人も少なくなかっただろう。そんな戸惑いはお構いなしに、あっと言う間に訪れてしまった正真正銘《終わり》を迎えるための本公演。冒頭曲『そして』でボーカル久世悠喜はこう告げた。
「2016.7.16。ここにいる仲間たちと、遠くにいる仲間たちの、《始まり》を歌う。」

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多幸感あふれるSEが鳴り始めると、ステージ上手側の袖から気合いの入った円陣のかけ声が聴こえてくる。イメージに似つかわしくない意外な行動に思わず口元が緩んでしまったが、メンバーの意気込みが垣間見れて嬉しくもなる。いつもよりたっぷりと十分な間をあけて、この瞬間を確かめるようにメンバーひとりひとりがゆっくりと入場。その表情は一様に曇りなく晴れやかだ。

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静かな海にさざ波が立つように始まった『そして』、続く『音沙汰』の鋭利なギターリフが反響し、それを合図のようにモードは一気に攻撃的に転じる。甘さと強さで豊かな表情を彩る歌声、ボーカルを食わんばかりのテクニカルで貪欲なギター、サウンドの屋台骨を支える骨太なベースも、小技の効いた歯切れのいいドラミングも、全て彼らにしか無い要素が集まってBob is Sickのサウンドは確立する。隙のない演奏力が際立つ『優しい歌』の轟音は、平静を保とうとする感情を挑発するかのように扇情的だ。

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メンバー間の意思疎通がうまくいかなかった時期に、久世が3人に宛てて書いたというメッセージソング『君と話がしたい』の求心力につられて、フロアの静かな、しかし確かな感情の高まりが痛いほどに伝わってくる。『malmal』のジャジーなアンサンブルが心地よく空間を支配し、“いい人になろうとして嘘つきになりました”という印象的なフレーズから始まる『毛布にくるまって』は、ありのままを受け入れる包容力が全てを救ってくれそうなほど頼もしい。表情こそ変えつつも、揺るがない根幹を見せ付けるように次々と曲が解き放たれていく。

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やわらかい手拍子を受けとめながら演奏された『風が吹いたら』の曲終わり、「懐かしい風が吹きます!」というコールと共に登場したのはなんと先代ベーシストの大畑拓見。活動終了の知らせを受け、自ら「弾きたい」と進言したそうだ。惜しみなく送られる大歓声を受けながら、結成初期に作られた曲『ライブハウス』が始まる。音源化されていない楽曲にも関わらずイントロが鳴り始めた瞬間に一気に沸き立つ会場から、彼らがこの地で築いてきた軌跡が感じられる。“よくきたね。こんな、暗い、狭い部屋”と、向かい合うひとりひとりの目を見ながら、語りかけるように一節一節が紡がれる。続く『ヒーロー』と、古くからのファンにとっては懐かしい2曲が、大畑の伸びやかな低音と共に披露された。

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現ベースpinoがステージに戻ると「懐かしいついでに、昔の曲をもう1曲」と、『7拍子』。続く『拝啓 すれ違い』では、あくまで明るい曲調とは裏腹にタイトルどおりの皮肉たっぷりな歌詞が放たれる。諦めているようでいて、その実戦い続ける彼らの紡ぐメッセージは、時に苦しくなるほどにどこまでも切実だ。
『Di』の冒頭のアルペジオが鳴った瞬間、応えるように一気にフロアの手が挙がり会場はエモーショナルな空気に。バンドの代表曲とも言えるこの曲の読み方は“デイアイ”、“泥愛”という意味を持つ。“世界は愛にまみれて 泥団子のようだ”というキラーフレーズは抽象的なようでいて、Bob is Sickのスタンスを明快に表現している。汚く見える世界の本質を見抜いて“愛しい”と言い切るから、その想いは優しい言葉になり、人を救う音楽になる。

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『おにごっこ』の“淡々と記憶された毎日はもういらない”“変わってしまうことをどうか悲しまないで”という歌詞は、Bob is Sickが伝え続けてきた“変わり続ける”という絶対的な意思を象徴するようだった。彼らにとって変わらないことは美徳ではない。不変はゼロではなくマイナスで、現状維持ではなく退化だ。そして今を歌うことすら、過去を歌うことなのかも知れない。だからこの日のイベントタイトルは“そして”。彼らはいつでも一歩先のフィールドを見据えている。
「Bob is Sickが最後に作った曲です」と久世が語り、始まったのは『手を伸ばして』。最後に呟くように歌われた“この歌が終わったら始まる未来”というフレーズは、まるでこのライブのために用意されたかのようだった。

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止まないアンコールに応えてメンバーが再び…と思いきや、フェイントで登場した大畑がそのままステージ逆の袖へ通り過ぎる。やっと出てきたと思ったら竹内が会場の手拍子を大きな腕振りで止める。最後まで気が抜けてしまうほどマイペースであっけらかんとしている理由は、久世が発した「好きなバンドとかいたらしっかり今観て。毎回、終わりなんで」という言葉に尽きるのだろう。確かに同じライブは存在し得ないし、だからこそライブだし、今日だけが特別なわけではない。けれど、自らの歴史の幕を閉じようというこの節目に、この言葉を平然と口にすることは、やはりなかなか出来ないことだと思う。

8

最後のMCで久世は呟くように言った。「Bob is Sickが終わります、みんなが始まります」
彼らと彼らの音楽はこれから別の道を歩もうとも、それぞれが変化しながら生きてゆく。終わってしまうことは寂しくもあるけれど、活動終了という選択ですら、ごまかしの利かない彼ららしい選択なのかも知れないな。ダブルアンコールに応えたラスト曲は『ここからはじめよう』。4人とフロアの本気が共鳴した“最低で最悪だって嘆いたって あなたは生きるよ”という大合唱は、生みの親の元を巣立つかのように、どこまでも力強く響き渡っていった。

文/小林 詩央里 写真/前田達也(tatsuyamaedaphoto.tumblr.com)

■セットリスト
1. そして
2. 音沙汰
3. 優しい歌
4. 君と話がしたい
5. 夏の終わりに君は後悔をする
6. malmal
7. 毛布にくるまって
8. 生きて
9. 風が吹いたら
10. ライブハウス
11. ヒーロー
12. 7拍子
13. 拝啓 すれ違い
14. Di
15. その先へ
16. おにごっこ
17. 手を伸ばして
(encore)
18.アル
19.ここからはじめよう

■LIVEを終えてメンバーからのメッセージ

久世悠喜(Vo/Gt)
最後のマンマンライブ「そして」を終えました。
前向きな活動終了だという気持ちで、メンバー全員ベクトルがあっていたな、と思います。
来てくれた人、聴いてくれた人にはしっかり伝わったと思う。安心してくれたんじゃないかな。
Bob is Sickとして今後新しい音楽は生まれませんが、
今までの音楽が皆さんの中でどう変化して行くかこれからも楽しんでください。
みんなそれぞれ音楽は続けていきます。
ここからまた始まりです。どうぞよろしく。楽しみにしててね。

竹内カツヤ(Gt)
Bob is Sickとして知らない間に少しずつ積み重ねて来ていた物が見られた、そんな1日だったと思っています。
何度も見て来た顔、初めましての顔、沢山の人が集まって見届けて下さいました。
感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

pino(Ba)
ラストワンマンを終えた直後はやはりさみしさがこみ上げてきましたが、今では清々しさも感じています。
バンドの目標というのはバンドの数だけ様々にありますが、
自分たちが伝えたかった思いをあの場にいた人たちと最後の最後に余すことなく共有できた事が、とてつもなく幸せで、この上ないゴールになりました。

Bob is Sickの活動はこれで終わりになりますが、僕たちは音楽をこのあとも続けていきます。
この記事を読んでくれている人も音楽を続けていくでしょう。
今後の人生の中で、ふとした時に僕らの曲が思い起こされて、
みなさんの中でBob is Sickが生き続けたらいいなと思います。今まで有難うございました。

近藤潤弥(Dr)
ワンマンライブを終え率直に思うことは、本当に終わったのかな?という感じです。笑
一曲一曲大切に気持ちを込めてやろうという話をしてはいたのですが、
いざ始まってみると普段のライブと変わりなく、あっという間に駆け抜けて行きました。
来てくれたみんなも最後は笑顔で終われてほんとに最高でした。

これからも僕らの音楽は残り続けるのでよろしくお願いします!!

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