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LIVE REPORT ライブレポート

2016.11.22

岐阜のヒーローが作り上げた、超地域密着型フェスティバル 後半  

5番手を務めたのは、cinema staffが敬愛してやまないというバンド ART-SCHOOL。さざ波のように広がった拍手と共に、ステージに降り立ったメンバー。「こんばんは、ART-SCHOOLです」と木下理樹(Vo/Gt)が呟き、孤高さを感じさせられる『android and i』でライブがスタート。攻撃的なギターリフと心臓のリズムすら変えてしまいそうなビートの中、マイクに手を添えた木下が淡々と歌を紡ぎ上げていく。激しい縦揺れで曲を体感している人が居るかと思えば、全く動かずに聴き入っている人も居るのが彼らの音楽の楽しみ方の幅広さを物語っているようだった。

恐ろしい手数をもって、快感指数を急上昇させていく4人。熟練の技術が噛み合った瞬間に生み出されるグルーヴは、麻薬のような中毒性を伴って鼓膜を震わせる。一呼吸置いて、「初めてシネマに出会った時は、まだ10代だったと思うんですけど…」と感慨深そうに話し出した木下。「そんな彼らが大人になって、イベントをして、たくさん人が来て…本当に格好良いことだと思う」と賞賛の念を表すと、「いつでも相談しに来なさい」と先輩らしい言葉を贈って後輩への想いを示してみせた。

今日の最後に“最後の歌には色々な想いが籠っているから、少しでも受け取って帰ってくれたら”と『FADE TO BLACK』を披露した彼ら。食らいつくように歌を奏でる4人を見て、学生時代に衝撃を受けたcinema staffの姿が浮かぶようだった。

cinema staffの『シャドウ』をBGMに入場するという彼ららしい盛り上げ方で入場したのは、“ロック界の奇行師”アルカラ。タンバリンをぶら下げて稲村太佑(Vo)が登場した瞬間の歓声が、如何に彼らが岐阜の人々に待ち焦がれられていたかを物語っている。それもそのはず、これだけの活動歴の中でアルカラが岐阜に来たのはこの日が初めて。「シネマに呼ばれるまでは処女を守っていた」と言うのだ。

『いびつな愛』、『デカダントタウン』と憂いを帯びた豊かな声で歌い上げ、『キャッチーを科学する』ではフロアと一体になって曲を作り上げるなど、自分達もステージを思う存分楽しみながら、特濃のロックでオーディエンスを酔わせる。どれだけ踊れても、しっかりと楽曲が耳に残るのは彼らの強み。『炒飯 MUSIC』も新曲とは思えない浸透力でフロアに馴染んでしまっていた。辻に対してLIVE欄にメッセージを書いていたにも関わらずスルーされてしまったと膨れっ面で話すなど、気心の知れた関係を覗かせた稲村。漫談のようなMCで会場を沸かせ、関西人としての矜持を見せつける。

後半戦は「処女を奪ったのはおまえらも一緒やねんで!責任とってくれるよね!?」と今まで以上のお祭り騒ぎを要求。キラーチューンの連投に、冷静でいられるはずもなく、フロアは全力の騒ぎっぷりで応えてみせた。「最後シネマ出てくるから!死ぬほど楽しもう!」と無邪気な笑顔で叫んでステージを降りた彼ら。再び『シャドウ』と共に退場したところに、お茶目さが宿っているように思えた。

4年目のOOPARTSも、とうとう終わりを迎えようとしている。トリを務めるのは、この1日の仕掛け人 cinema staff。三島想平(Ba)が全てを背負い立つような声で「2016年10月22日。CLUB-G、OOPARTS 2016。最後の出番、俺たち。岐阜から来ました、cinema staffです!」と宣言し、スタートを飾るのに相応しい華やかなメロディーが流れ出す。いつもよりメンバーがフロアに近づいているように感じるのも、気のせいでは無いはずだ。辻 友貴(Gt)ものっけからステージに転がって奔放なプレイを見せ、オーディエンスと笑顔の相乗効果を生み出していた。飯田瑞規(Vo/Gt)の声はどこまでもクリアに澄み渡り、1フレーズごとに言葉が生き生きとした質感を持って響く。オーディエンスを信頼して心ゆくまで音を鳴らしきるメンバーと、ステージ上の音を存分に浴びながら感情を突き動かすフロアの幸福な関係が、音で溢れた1日がそれぞれにとってどのようなものだったかを雄弁に語っているようだった。

OOPARTSは彼らがバンド活動の中で出会った、本当に格好良いバンドだけを集めたイベント。思わず“舞い上がっちゃう”ほどに自分達も今日が嬉しかったのだと飯田が話し、ライブハウスには和やかな雰囲気が漂う。そんなイベントで自身の最新モードを披露するように奏でた『返して』は、飯田と三島によるボーカルワークが何とも力強い、一抹の切なさを感じさせる疾走感溢れるナンバーだった。

久野洋平(Dr)が「楽しんでますかー?楽しんでましたかー?」と問いかけると、フロアから歓声があがる。出演者にまつわる思い出を興奮気味に話しながら、話題は昔メンバーがコピーしていたというART-SCHOOLへ。「今日見てる人の中にもバンドやってる人いるかもしれないけど、こうやって一緒に出来るから」と、バンドにとっても何かのきっかけを作りたいと話す姿は、シーンを動かすバンドとして、とても頼もしく映った。

“岐阜に捧げる歌”として奏でた『望郷』では、機材トラブルがありながらもフロアからの自然なシンガロングを誘い、続く『exp』ではdelta sleepまで巻き込んで朗らかに楽曲を届けていく。曲から滲む高揚感がギリギリまで高まった後、三島はフロアを見渡して「俺たちは幸せもんです」と口にした。自然に口をついたような言葉に、オーディエンスにも笑顔が広がる。音楽で言葉を交わすようなステージの最後を飾ったのは、『overground』。少しの恐怖心と、それを上回るほどの未来に抱く期待感。しっかり未来へと繋がるビジョンを想像させて、これまでの彼らが作り上げた1日は、その幕を下ろした。

「来年もやります」という言葉が飛び出したのは、アンコールでのこと。自分たちの力とお世話になっている人の力で何とかイベントを開催できていると話した三島は、「最高に幸せだと思います」と噛みしめるように言っていた。それだけ多くの人が力を貸したいと思うのは、歩んできた道の中で彼らが何もないがしろにしてこなかった証拠だろう。誠実に歩みを続ける彼らは1年後、何を抱えて岐阜に帰ってくるのだろうか。彼らが持ち帰る“宝物”を再びこの場所で見られる日を楽しみに待ち続けたいと、心から思う。

文/渡辺真綾
写真/前田達也(tatsuyamaedaphoto.tumblr.com):夜の本気ダンス、Delta Sleep、アルカラ
ナツミ(http://natsumi-live.tumblr.com/):Shift Control、tricot、ART-SCHOOL、cinema staff

■セットリスト
-Shift Control
1.パラレルトイボックス
2.あがき
3.マジックアワー
4.おまけ
5.アウトライン

-夜の本気ダンス
1.Crazy Dancer
2.Oh Yeah
3.WHERE?
4.Love Connection
5.fuckin' so tired
6.B!tch
7.戦争

-tricot
1.節約家
2.おもてなし
3.おちゃんせんすぅす
4.エコー
5.POOL
6.庭
7.99.974℃
8.おやすみ

-Delta Sleep
1.16:40 AM
2.(sample-Asqetta)
3.Jesus Bill!
4.Strongthany
5.Lake Sprinkle Sprankle
6.Spy Dolphin
7.So Say We All

-ART-SCHOOL
1.android and i
2.real love / slow dawn
3.Promised Land
4.夜の子供たち
5.ウィノナライダーアンドロイド
6.プール
7.その指で
8.スカーレット
9.あと10秒で
10.FADE TO BLACK

-アルカラ
1.いびつな愛
2.デカダントタウン
3.キャッチーを科学する
4.炒飯 MUSIC
5.アブノーマルが足りない
6.半径30cmの中を知らない
7.交差点

-cinema staff
1.theme of us
2.想像力
3.希望の残骸
4.返して
5.望郷
6.白い砂漠のマーチ
7.exp
8.overground
(encore)
9.海について

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