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LIVE REPORT ライブレポート

2017.5.10

phononが物語の中で見つけた“帰る場所”

phonon presents『Home Song Land 4.16』
2017.4.16(日) @名古屋ell.FITS ALL

彼らの代表曲『ゼロと白』のPVが50万回再生されたのを記念して行われた、東京・大阪での無料ワンマンライブが大盛況で幕を閉じたのはまだ記憶に新しいだろう。そしてこの日はその集大成を締めくくる地元名古屋でのワンマンライブ。ライブタイトルは『Home Song Land』。曲を伝えたい、ワンマンで魅せたいという強い思いに加え、“帰る場所”を探すべく行われたライブは彼らにとってもファンにとっても大切な1日となった。

暗転するとステージに設置されたスクリーンに映像が浮かび上がる。物語で言うのならばこの映像は序章だろう。どこまでも続く誰もいない海岸の中、イマイズミヒカル(Vo/Gt)の語り声だけが聴こえる。そしてスクリーンが上がると暗闇にうっすらとイマイズミ、太田雄大(Ba)、ちゃん矢野(Dr)の姿が見え、ギターをひと掻きすると『砂上の白昼夢』で物語が始まる。青白い光から徐々に明るさが増し、サビで3人の姿がはっきりと見えると、嬉しさと比例して真っ直ぐ高く伸びる手がオーディエンスの喜びを象徴しているようだった。イントロからオーディエンスの手拍子も加わった『王子の狐』、響き渡るリバーブとスネアの音色が滴る雨を彷彿とさせる『雨宿りの途中』と緩急をつけながら徐々に会場をphononの色に染め上げてゆく。

“ホーム”というのは、大切な人がいる場所では必ずしもないと話すイマイズミ。自分で決めた道が間違いではないと証明してくれるものや場所が“ホーム”なのではないかという。そしてphononの曲がオーディエンスのホームになってほしいと願い「今日の自分で歌おうと思います。この曲があるから今の自分がある」と『ゼロと白』へ。無理に格好つけたりせず、等身大の歌声と演奏で。だからこそこの日の歌声は、ワンマンライブの決意表明のような力強さが含まれていた。最後のサビでは、ちゃん矢野も立ち上がり3人とオーディエンスで“今”を確かめるように会場にいる全員で歌い上げる。そんな会場を包み込む温もりを熱に変え、「新曲やるよ!」と『Mr.Madman』へ。喉を振り絞るように吐き出す言葉と轟くベースの重低音が、曲の激しさを加速させるアップチューンな1曲だ。

そして今度は、ドラムソロからベース、ギターの音色が加わり、歌ではなく演奏でオーディエンスを魅了する。それぞれの楽器が奏でるフレーズがピースのように組み合わさり、1つの音が組み立てられていく。ピースががっちりと合わさり、盛り上がりが最高潮に達すると『メランコリア』のイントロへ。突き刺さる歌詞とギターリフが聴く人の心を揺らす。<拝啓この唄を書いたあなたへ…>まるで過去の自分自身に訴えかけるように生きてのメッセージを投げかける。『唄うたいのニコラ』では、一緒に行こうというメッセージでオーディエンスを引っ張っていく。会場にいる全員でシンガロングをすれば、フロアの隅から隅まで見渡す姿が誰1人離しやしないと言っているようにも感じた。

音楽関係なしに誰かの為に何かをやることが難しい世の中で、初めて自分以外の、人の為に作った『錆に花』。このワンマンライブのみで限定販売された楽曲だ。たっぷりとイントロでギターの音色を聴かせてイマイズミが口を開けば、彼の温かくクリアな歌声が一体に響き渡る。情景描写溢れる繊細な歌詞によって、1人1人の脳裏には歌詞に沿った思い思いの映像が映し出されていたことだろう。

「春、夕焼け空が綺麗だったから、あるときステージから見た景色が綺麗だったから、この曲を作りました」と放たれた『夕闇日記』。目を瞑ってしまうほどの眩しい光が3人を包む。<僕らが見た絶望はこれから出会う希望のため>。前へと心動かされる歌詞に導かれるように、すっと伸びる手の平で埋め尽くされるフロア。きっとこの日も、ステージから見えた景色は綺麗で忘れられないものとなったに違いない。『5分前』、『Lir』と続け、盛り上がりをみせると、来てくれるファンのために作った『スイングバイ』で終わりを告げる。音楽的にも生きることにも折れそうになることもあるけれど、ステージに立てば1発で頑張ろうと思える。そして、自分の帰る場所がここライブハウスなのだとこのステージで気付いたという。

アンコールに歌われた『夏の送電塔』。前向きな気持ちで、覚悟を決めて演奏された渾身の1曲。このワンマンライブからまた1歩新たなスタートを切るかのようにバンドとして、1人の人間として生きてゆく決意を彼らの勇姿から感じ取れた。「どうもありがとうphononでした」と3人が深々と一礼し、ステージから姿を消すと、鳴り止まない拍手の中、再びスクリーンがステージ現れる。そこで『錆に花』のPVが初披露されると、聴く人全ての心に温もりを残し、物語は幕を閉じた。

曲ごとにあらゆる色や景色、季節や場所を見せてくれるphononのライブ。まるで1ページ1ページめくるたびに別世界へ連れてゆく1つの壮大な物語のようだ。そして物語はまだ終わらない。phononはまた、帰る場所で待っている人のために歌い続ける。

文/伊藤成美 写真/前田達也(tatsuyamaedaphoto.tumblr.com)

■セットリスト
01.砂上の白昼夢
02.12月10日の失踪計画
03.王子の狐
04.雨宿りの途中
05.ゼロと白
06.Mr.Madman
07.メランコリア
08.morning after
09.高架下の秘密基地
10.トワイライト
11.ひいろ
12.唄うたいのニコラ
13.かげろう花火
14.極楽鳥花
15.錆に花
16.夕闇日記
17.5分前
18.Lir
19.スイングバイ
(encore)
20.夏の送電塔

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