1. トップ
  2. ライブレポ
  3. the unknown forecast 2nd Single『雑草』release東名阪ツーマンtour 名古屋編

ライター T-Friends

2016.9.5

1,267 good

the unknown forecast 2nd Single『雑草』release東名阪ツーマンtour 名古屋編

2016.8.6(土) @名古屋CLUB UPSET

蛹から蝶へ羽ばたくための決別。the unknown forecast『雑草』ツアーファイナル

the unknown forecastが7月27日にリリースしたシングル『雑草』の東名阪ツーマンツアーファイナル。本公演はリリースイベントでありながら、オリジナルメンバーであるドラマー伊藤優太の脱退における、彼を含む4人での最後のステージという側面を持っていた。ふたつの意味に対し複雑な想いを抱え足を運んだであろうオーディエンスの、何となく落ち着かない空気感が開演前から会場を包む。共演、いや、競演に選ばれた大阪のスリーピース、フィッシュライフがおもむろにステージに現れると、ハヤシングにスポットライトが当たり『フライングレッド』の弾き語りが始まる。真っ赤な照明の中、会場に反響する鋭利なギター・カッティングを合図のように、the unknown forecastの同世代仲間であり強力なライバルの手によってイベントの幕は開かれた。

1

メンバー全員が同い年で親交も深い両バンドの関係性を考えると《the unknown forecast》と大きく書かれたバックドロップを背に掲げ演奏する3人の姿だけで既に胸に迫るものがあるのだが、当人たちは“華を持たせる気なんかさらさらねえぞ”と言わんばかりにバチバチのストロボにタイトなアンサンブルを乗せて超攻撃的な姿勢を貫く。それが対バンへの一番の誠意であることを彼らはよく分かっているし、その想いは 「アンノウンから今日を最後に優太が抜けるらしいけど、ライブ中はそれに対して「お疲れさん」なんてするつもりは全然ない。いつも仲良いけどライブとなったら「やったるで」っていうあの緊張感、今日もビリビリ感じてます」というハヤシングの言葉にもよく表れていた。

2
3

キラーチューン『フロムカウントナイン』や「今日どうしても歌いたかった」と演奏されたミドルナンバー『アネモネ』、抜群のテンポ感がステージを勢いづける『三億円』、一言で本質を的確に突く、フィッシュライフの武器がさらに研ぎ澄まされた新曲『デッドオアキミトアライブ』……どれもこれも本当に気持ちのいいビートに乗り、曲も嬉しそうにはずむ。『ニュースキャスター』の曲中「勝ち逃げや!勝ち逃げしたる!でも、この曲のラスト1行だけはやっぱりあいつに歌いたい!」とハヤシングが声を荒げる一幕も。最後に「ここにいる皆が、あの4人が、何度も自分のことを疑って、でも全員まっすぐ進めるように」というMCから届けられたラスト曲『サイレントオベーション』は、これからを歩む“4人”にとって心強い激励の言葉となったに違いない。

4
5

いつにも増して感情先行型の前のめりなステージに思えたのは、この日の持つ意味がそうさせたのだろうか。ボーカル幡野友暉の息つぎがはっきりと聴こえると、“卑怯に生きるより死ぬことを選べ”というフレーズが印象的な『はたち』でthe unknown forecastのステージは始まった。生きているだけで素晴らしいと唱える世の中の美学に正面から喧嘩を売る。次曲『E』は失恋を題材にこそしているが、その実態は弱い自分と向き合い己を奮い立たせる歌。時にそれを武器に、時に立ち上がるための力に変えて、アンノウンは音楽をもって強きものに戦いを挑む。

6

この日初めて演奏されたという、シングル『雑草』のカップリング曲『ひとのせいにする』は、本サイトのインタビューでも語られているように“ひとのせいにしていいんだよ”というメッセージが込められた楽曲。歯向かう背中の向こうには守りたいものがある。続く『ゆとりばんざい!』でも、社会の矛盾や痛いところを的確に指摘、思わずギクリとしてしまうフレーズが皮肉をたっぷりと含みながら放たれていった。

7

大流行中の某アプリを引き合いに出し「あれがないと生きてはいけない」と始まったのは『携帯電話』。激情的な展開の中ふいに訪れる不穏な静けさが独特の緊迫感を醸し出し、せわしなく表情を変えつつも終始熱量の高いギターリフがぐいぐいと主張してくる。続く『doubter』は彼らが高校生のときに制作したという音源の収録曲。メンバーが意味ありげな表情を浮かべているように見えるのは、これまで歩んだ軌跡を思い返して曲に重ねているからだろうか。真意は分からないが、そう思えるほどに切なさをはらんだ美しい和音は、会場中の意識を掴んでさらっていくようだった。

8

MCで幡野が「俺にはこの場しか表現する場所がない。ここから出られないんです。でも、あなたがCDを聴いてライブを観てだれかに伝えることで、俺達はどこへでも行ける」と、静かに、だが強い意志を宿して語ると、「今の俺達の歌です」と、最新曲『雑草』が始まる。上ずる歌声にはこれ以上ないくらい感情がこもり、こらえきれない想いを叫ぶようにも、悲しみを振り払うようにも聴こえる。一切の妥協がない言葉は時につらくなるほど心にくるが、彼ら自身“これでいいのか”と自分に問いかけ続けているから、その本気に生半可な気持ちで向き合ってはいけないと思わされる。アンノウンの音楽は、皮肉なことだが――苦しんだほど輝きを増すのかも知れない。「最後の曲です」と始まった『命の屍』は、茨の道を進む覚悟を決めたかのように強い信念を宿して演奏される。彼らは中途半端な自分のままで許される気なんかさらさらない。

9

あっという間に終わってしまったステージに、震え声もまじったアンコールの呼びかけが起こると、伊藤優太がひとりステージに現れた。定位置であるドラムの椅子に腰掛けると、メンバーについてぽつり、ぽつりと語り出す。飾り気も虚勢も全く感じない言葉のひとつひとつに、伊藤の純粋な人柄がよく表れている。「俺がいなくなって変わっていくんじゃなくて、これが更なる進化になってくれるんじゃないか」という言葉は、そうであって欲しいという願いのようにも聞こえる。アンコールで演奏されたのは『さなぎの唄』。蛹から蝶へ羽ばたくための決別。まぎれもなく、4人の今この瞬間の歌だ。曲の終盤で確かめるように笑顔でうなずいた伊藤と共に、フロント3人がそれぞれ後ろを振り向き4人で最後の一音を鳴らす。止まないで欲しいという刹那の望みは叶わないと知りつつも、その余韻を手放したくなくて一生懸命に瞬間を噛み締めようとするオーディエンスの姿が印象的だった。

10

the unknown forecastは曖昧にしておくことができないから追求するし、追求した結果、決別という道を選んだ。伊藤優太を選ばなかったのではなく“選ばないことを選んだ”。共に築いた7年という歴史を背負い、その選択に覚悟を持って進んでいくのだと思う。これからも幾度と無く困難に直面してゆくだろうが、アンノウンはそれを困難だと認識し戦うことができる。血反吐を吐きながら這ってでも進む彼らを決して見捨てないことは、この日の観客全員の偽りない涙が証明した。“無様に駆け抜けろ”、the unknown forecast。苦しんだ分だけあなたたちは輝ける。

文/八潮 凛 写真/前田達也(tatsuyamaedaphoto.tumblr.com)

11

■セットリスト
―フィッシュライフ
1.フライングレッド
2.フロムカウントナイン
3.電話
4.アネモネ
5.三億円
6.デッドオアキミトアライヴ
7.東京
8.ニュースキャスター
9.サイレントオベーション

― the unknown forecast
1. はたち
2. E
3. ひとのせいにする
4. ゆとりばんざい!
5. 携帯電話
6. doubter
7. 雑草
8. 命の屍
(Encore)
9. さなぎの唄

関連キーワード

RANKING

RECOMMENDED

KEY WORD

WRITER


トップへ