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ライター ツボイ

2019.12.16

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アルカラ 10th Album『NEW NEW NEW』インタビュー

「ようやく1stアルバムと言っていいなと思える作品に、10枚かけて辿り着けました」

約2年半ぶり、3人体制となって初となるアルバム『NEW NEW NEW』を12月11日にリリースしたアルカラ。10枚目にして“NEW”と付けたタイトルからも、今作への思いを強く感じられる。そして、それは収録曲の歌詞からも読み取れる。今作はどのような思いを込めて作られたのか。楽曲のソングライティングを手掛ける稲村太佑に話を訊いた。

―約2年半ぶりとなるアルバム『NEW NEW NEW』を12月11日にリリースされます。10枚目にしてタイトルに“NEW”と付けた意味からお伺いしてもいいですか?

稲村太佑(Vo/Gt): タイトルは最初から『NEW NEW NEW』にしようと思っていました。「新しい物を作るぞ」という気持ちと、3人になって初めてのアルバムになるので新しい気持ちで出直そうという、再生や出発の気持ちも込めて『NEW NEW NEW』にしました。

―その1曲目には、メジャーデビュー前のミニアルバム『20秒前』の1曲目にも収録されていた『サスペンス激情』の第二楽章が収録されています。今回のタイミングで制作されたところにも意味があるのかなと

稲村: 2006年の『20秒前』に入れた『サスペンス激情』が、初めてヴァイオリンで作ったインスト曲やったんです。それ以降ずっとヴァイオリンのインスト曲を入れていて、それが僕らの作品の一部やったんで、今回再生という気持ちも込めた『NEW NEW NEW』というタイトルの作品に、この第二楽章を入れたら原点回帰もできて面白いんじゃないかと思って。初めてインストを作らせてもらった曲の雰囲気をクラシックの第二楽章みたいな感じで、メジャーキーをマイナーキーに変えたりテンポを変えたりして違った角度で聴かせたいなと。この第二楽章から入って第一楽章を聴いてもらうことで、元々こういう曲があったんだという発見もあると思います。そういう音楽の楽しみ方も17年やっているからこそできますよね。

―聴き比べも面白そうですね。そこから間髪入れずに始まる『瞬間 瞬間 瞬間』はアルカラらしい曲。<この世界を切り取ってたら キミが見えた>という言葉が印象的です

稲村: 心がすごく動く瞬間ってあるじゃないですか、そこには神様がいると思うんですよ。それで、<キミが見えた>のキミをその瞬間にいる神様という意味で書きました。でも、それを<キミ>と言うことで、人によって受け取り方も変わるんじゃないかなと。一瞬を切り取ることを大事にしていけたらいいなという心の現れでもあったりします。

―瞬間ってよほど気にならないと頭に残らないと思います。だからこそ、それを大事にする意識を持つことで心が豊かになるかもしれないですね

稲村: 仲良くさせてもらっていた方がずっと病院で寝た感じだったんですけど、病院でふと空を見て「うわっ」て言いはったんですよ。空なんかいつでも見れるのに、病院からの空の景色に感動してることに感動して。僕らも普段からアンテナを立ててたら、道に咲いてる花にすら心が動けるはずなので、そういうのがあると豊かな気持ちになれたり優しくなれたりするんじゃないかなと思います。

―そう聴くと温かい曲に思えてきました。ちょっと気になったのですが、<おやつは食パン>は語呂がいいからだけで特に意味はないですよね?すごく頭に残って

稲村: 韻の中で<食パン>になったんですけど、「<おやつは食パン>って何やねん?」という会話ができるのはすごくうれしいです(笑)。これ、メンバーも言ってました。「おやつは食パンという家庭なんですね。この主人公は」って。実は『瞬間 瞬間 瞬間』というタイトルにするまでは、ずっと『食パン』という仮タイトルでした(笑)。こんだけ<瞬間>を並べると<食パン>がすごく活きてきて、稚拙な言葉なのにすごく響くというか逆にこっちの方が強くなっていますね。

―本当に強いワードです。次の曲『猫にヴァイオリン』は、歌詞に<鳥獣戯画>という言葉が出てきますが、まさにその絵のような曲ですね

稲村: 猫がヴァイオリンを持っている絵を見て「猫ってヴァイオリン持つんや」と思っちゃって。そこから鳥獣戯画のカエルやウサギがすごく浮かんできたんです。あの絵は人間の喜び合う姿や愚かな部分を擬人化して表現してるんですけど、僕的には神羅万象というか動物も人間もそれぞれの役目があると思っていて、工場から煙を出してるのもひとつの自然の営みやと思うんです。日本には自然と人工物を融合させる考え方があって、例えば灯籠を作る時にわざと凹凸を付けることで、そこに水分が溜まってコケが生える。そうやって時間をかけてようやく作品ができる。その日本のワビサビみたいな部分が地球全体のことと似てるなと。僕は<悪魔も笑い>と書いたんですけど、<悪魔>というのは人工物や地球を汚していることで、魔が刺すという人間の欲望や憎しみも学びに変えられたのなら、悪魔もひとつの役を果たしたというその先を歌いたいなと。

―実は結構深い意味があったんですね。間奏の後に<ウォーウォウォー>という声が入っていますが…

稲村: そこは夏の山でセミなどの虫が鳴いてる感じをイメージしました。だからメンバーの声が入っています。この曲は、cinema staffの辻がギターを弾いてるんですけど、いろんな声が欲しいから彼にも声を入れてもらいました。それもあって、<羊にはギター>のところを<辻にはギター>と聴こえるように歌って、<羊にはギター シネマを描く>と書いたんです。そういうワンワードを入れながらも、曲のバランスや世界観を変えずにcinema staffへの感謝の気持ちを入れられたと思います。

―そうだったんですね!今お話を聞いて気付きました。次の『誘惑メヌエット』はヴァイオリンが入ってガラッと雰囲気が変わります

稲村: 1曲目から2曲目へはノーカウントで入るようにするなど、アルバムを作る時には流れをすごく大事にしています。1曲1曲場面が変わっていくアルバムは、写真のアルバムを見るようにあの時こうやったなって思えるドラマがあるので、ただの曲の羅列じゃベスト盤みたいになっちゃうと思うんですよ。だから、世界観的にここで急にクラシックの雰囲気が出たみたいな、ヴァイオリンの三重奏が入ることで高尚な気持ちで曲を聴けるかなと。

―さらに、曲の雰囲気も歌詞も艶っぽい感じがあります

稲村: この曲にも<悪魔>という言葉を入れてるんですけど、悪を知らないと本当の善を理解できないんじゃないかと思って。<いつからか 思い出に美化して いつかまた 思い出に隠して>と書いたんですが、そこには、いいように解釈して美化していけばいいじゃないという気持ちと、いいように解釈して自分を隠してしまうんだという気持ちの両方があります。また、<あなた>と歌っていたのに、最後<あの人>と言っているのは、その人が大事な思い出の人で、その人にそっと蓋をしないと次へ行けないという乗り越えないかん自分、あるいは若かりし頃の憧れとの別れというのもあります。本当に艶ですよね。ただの色ではなく乗り越えたり乗り越えられなかったりという歌なのかなと思います。

―メヌエットのイメージにも合っていますね

稲村: メヌエットは艶っぽくていいなと思って書いてたんですけど、メヌエットって三拍子やったんですよ。でも、ちょっと横に揺れるような感じの四つ打ちにしようと思って作っていたので、ヤバイどうしようと(笑)。で、バッハのメヌエットの三拍子におもくそ当てはめたったら、なぜか繋がって。すごくメジャー転調してますし、キーも変わった上に三拍子にもなったら普通戻られへんのですよ。それが戻れたみたいになって(笑)。

―違和感が全然なくてライブで映える曲になっていると思います。そして、次の『TSUKIYO NO UTAGE』の<あきれるぐらい 今夜月が綺麗だな>って素敵な言葉ですね

稲村: 「I Love You」を初めて日本語に訳したのは夏目漱石なんですけど、夏目漱石は「I Love You」を「今夜月が綺麗ですね」って訳したんですよ。それってすごく文学的やし、直訳で「あなたを愛してる」でいいんじゃないかと思うんですけど、日本人は「あなたを愛してる」と直接言いません。それを分かるようにするのが日本人の生き方やから、「I Love You」の日本語訳は「月が綺麗ですね」となったんですって。だから、この曲はすごく愛を歌えているんです。それに、<あきれるくらい 月が綺麗だな>と思えるシチュエーションってすごい瞬間やと思うんですよ。それが、この2行に入っています。

―そういうことだったんですね。そのタイトルをあえてローマ字にされたのは

稲村: ローマ字のタイトルって今までやったことなかったんですけど、『月夜の宴』と漢字で書いてもちょっと違う。言っちゃってるから。でもローマ字にしたら、「そういうワードがあんのかな?NOって言ってるから何かあんのかな」と一瞬思っただけでもちょっとカーブを掛けられるんで、そういう側面から入ってもらえたらなと。それもあえてローマ字にした理由のひとつです。

―さらに、ちょっと壮大な感じもあります

稲村: 僕の好きなワードが<空を見て 花を見て 産まれた歌を道連れに>で、今まで生まれて死んでいった曲っていっぱいあると思うんですよ。楽譜ができたから残っている曲も、本当は楽譜通りじゃなかったかも知れない。そこにしかない音楽の生まれる瞬間って、空見て花見て作った感じなんですよ。それぐらい神秘的でもあるし、すごく軽いものであってほしいなと思っていて。そういうものを<道連れに>と入れたのは、側に置くだけじゃなくてその中に溶け込みたい気持ちがあって。日本人やったら演歌を聴いたら演歌だなって分かるじゃないですか。そういう染みついていくものになっていきたい気持ちと、そういう染みついてきたものに自分の曲がなってほしい気持ちがあります。

―深い意味があったんですね。『くたびれコッコちゃん』は急に趣が変わります。ちょっと若いというか可愛らしいというか

稲村: 幼稚園のクリスマス会のプレゼントで、母親から座布団か何かの布でワタを入れて作ったニワトリのぬいぐるみをもらって、それを捨てられなかったんですよ。手作りやから間抜けな顔をしていたんですけど、何か可愛くて。それを捨てなあかんとなった時にすごく泣いたけど、ちゃんと別れなあかんかったなということを思い出して書きました。大事にしてる物には思い出もありますけど、ちゃんと別れを言わないとお互い次へいけないなという大きな意味を入れながら、歌自体はすごい子供の与太話ですよね(笑)。

―確かに(笑)。ぬいぐるみ視点で進行している中で、最初は<飛び立てないのさ>と言っていたけど、最後<飛び去ってやるのさ>と言うところにグッときました

稲村: 捨てられる方が強く言ってあげないと、という思いがあって。俺は役目が終わったから飛び立たなあかんのに、何をお前は泣いてるんだというハッピーで強い気持ちです。別れに対してちゃんと立ち向かっている気持ちを、<飛び去ってやるのさ>という能動的な言葉に変えたのは、後半強くしたい気持ちがあったからで。

―男の子らしい曲だなと思います。そして『未知数²』ですが、日記みたいな歌だなと思いました。稲村さんのご自身のことなのかなと

稲村: 曲が思いつかなかくてギターを掃除した時に、こいつと15年ぐらい一緒やなと思って。これからどうなるのか分からんけど、ずっと一緒にやっていくんやろうなと思ったら急に視点を広く考えられるようになって、これを書いたろと。

―やっぱりそうだったんですね。<好きなことを 言えちゃう できちゃう>のセクションが今の世の中に対して稲村さんの思いを言っているんじゃないかと

稲村: 思いを伝えやすい時代になったからこそ、伝わらなくていいものも受け取る側のアンテナ次第では伝わるようになったじゃないですか。それを言えちゃってる時代って、本当に求めていたのかなと思っていて。せっかくそんだけのツールがあるんやったら、みんなでどんな嫌なことも励まし合えたらもっと世界は綺麗になっていくんじゃないかと。みんな居酒屋で悪口を言いまくってるけど、それをインターネットに載せると1年後も3年後も見れてしまう。それを美しいものにするだけで解決できるのにと、今この曲をやってる時だけはそう思いたいなと思ったんですよ。<厳密に言うならば 僕ら全て同じってわけでは無いけど せめて せめて 今だけは 今だけは>と歌っちゃっていますけど、ほんまそう思ったので最後に<おはよう おやすみ>と誰でも言う簡単な挨拶で繋がれるだけでいいじゃないかと。原点に戻ってきたみたいな感じです。

―ラララで終わるのも綺麗ですよね

稲村: ラララで終わる曲をやってみたかったんですよ。何でこれまでやってなかったかと言うと、僕は綺麗に歌うことや綺麗なものを言える人間ではないから。本当にI Love Youですら今でも歌えるか分からない。歌うことはすごく責任あることだし、いろんな人が聴いてくれるということは、人気や盛り上がるという次元ではなく、ひとつの媒体なわけじゃないですか。自分がその発信力を磨かないと、という思いがあって歌えなかったんですよ。20代の頃はI Love Youをクサいなと思っていたけど、今回いろんなものを失って3人になって再スタートをするチャンスを頂けたことで、残ったものにすごく感謝できるようになって。そうなって、ようやく愛というものに対して自分なりにちゃんと一歩踏み込めたなと思ったんで、そういう終わり方にしました。

―その流れから『夕焼けいつか』という哀愁を感じる曲で終わります

稲村: この曲は3.11の地震があってから、この日を地震の日じゃなくて音楽の日にしたいという仙台のMACANAというライブハウスの思いから、そこを中心に「MASTER PEACE」というチャリティーライブサーキットイベントを毎年3月11日に開催していて、そこに毎年呼んでいただいているんです。僕はみんなから物資を集めて持っていくこともできないし、瓦礫を運ぶ腕力もない。僕ができることって歌なんやろうから、歌で自分なりの愛を伝えられたらそれが自分の役割を果たせたことなんかなと。それで、自分の範囲でできることをやればいいと思ったら、この曲をどうしても3月11日に歌いたい思いが3月9日に湧いてきて、その日に作りました。3.11のことを歌ってるわけではなくて、僕なりの愛を歌っています。

―そういう曲だったんですね。そして今作にもシークレットトラックが入っています。これはアルバムを買った人のお楽しみにしておきましょう

稲村: シークレットトラックをいつも最後のトラックに入れ込んでたんですけど、今はサブスクで聴く方が圧倒的に多い時代なので、それに対応してみようと思ってボーナストラックを別トラックにしたんですよ。そしたらボーナストラックの名前が出ちゃって。発売前なのに、うなぎの歌ってことがバレてるという(笑)。それが逆に面白かったですね。

―時代に乗らなかったら良かったですね。そして2月20日からツアーも始まります。対バンとワンマンが混ざっているんですね

稲村: ちょっと混ぜながらやります。対バンもまだ発表になってないんですけど、今回歌を大切にしたアルバムなので、普段やっていない方の中でも歌や歌詞で共鳴しそうなアーティストにオファーをしています。すごいツアーになると思いますので楽しみにしていてください。

―楽しみにしています。では最後に、この作品を楽しみに待っていたファンへ向けてメッセージをお願いします

稲村: ようやく1stアルバムと言っていいなと思える作品に、10枚かけて辿り着いたと思っています。再生やここからもう一度始めるなど、いろんな気持ちでこのアルバムを作ったので届けばいいなと思っています。

アルカラ『瞬間 瞬間 瞬間』 MUSIC VIDEO

■リリース情報

『NEW NEW NEW』
10th Album
2019.12.11 発売
3,300円(+tax)

■LIVE情報
ア・ル・カ・ラ10枚目“NEW NEW NEW”
レコ発全国ツアー「NOW NOW NOW」

2月20日(木) 東京 LIQUIDROOM ※対バンあり
2月23日(日祝) 群馬 高崎clubFLEEZ ※対バンあり
2月29日(土) 岡山 PEPPERLAND ※ワンマン
3月01日(日) 広島 広島セカンド・クラッチ ※ワンマン
3月08日(日) 長野 Sound Hall a.C ※対バンあり
3月14日(土) 新潟 CLUB RIVERST ※ワンマン
3月15日(日) 石川 vanvanV4 ※ワンマン
3月21日(土) 栃木 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2 ※対バンあり
3月22日(日) 茨城 mito LIGHT HOUSE ※対バンあり
3月28日(土) 埼玉 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3 ※対バンあり
4月04日(土) 北海道 Sound Lab mole ※ワンマン
4月05日(日) 北海道 苫小牧ELLCUBE ※ワンマン
4月11日(土) 宮城 仙台MACANA ※対バンあり
4月12日(日) 岩手 Club Change WAVE ※対バンあり
4月25日(土) 福岡 DRUM Be-1 ※対バンあり
4月26日(日) 熊本 熊本B.9 V1 ※対バンあり
4月29日(水祝) 香川 DIME ※対バンあり
5月02日(土) 大阪 BIGCAT ※ワンマン
5月03日(日祝) 愛知 DIAMOND HALL ※ワンマン
5月17日(日) 東京 マイナビBLITZ赤坂 ※ワンマン

■オフィシャルHP
https://arukara.net

■プロフィール
稲村太佑(Vo/Gt)、下上貴弘(Ba)、疋田武史(Dr)の3人からなるロックバンド。自称「ロック界の奇行師」。ギターロックやオルタナティブロックなどの音楽性を基調としながら、一筋縄ではいかない自由奔放さで唯一無二の世界を築き上げている。2002年7月に結成され、2008年に1stアルバム『そうきたか』を発表。2013年に地元神戸を舞台にしたサーキットイベント「ネコフェス」を主催し、以降毎年実施している。2016年11月にアニメ『ドラゴンボール超』のエンディングテーマ『炒飯MUSIC』を収録したシングルを発表。2017年7月には結成15周年を迎え、初の12曲入りアルバム『KAGEKI』をリリース。2018年6月には、盟友cinema staffとスプリットEPをリリースし、全国16箇所でツアーを開催。そして2019年12月11日、10枚目となるアルバム『NEW NEW NEW』をリリースした。

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