

ツボイ
2016.8.10
7,843 ![]()
ぼくのりりっくのぼうよみが『ディストピア』で言いたい真ん中の大切さ
「審議を判断して咀嚼して理解することが出来なくなってきている」
7月20日にEP『ディストピア』をリリースした、ぼくのりりっくのぼうよみ。彼がこの作品で言いたかったこと、さらには“CDの遺影”を抱えたアートワークをはじめ、音楽業界についても言及した本作をどんな心境で作り上げたのか。本人に話を聞いた。
―まずは音楽を始めたきっかけから教えてください
ぼくのりりっくのぼうよみ: インターネット上に、素人が自分で歌詞を書いてラップをした動画を投稿するウェブサイトがあるんですが、それに出会ったことがきっかけです。
―例えばピアノなどの楽器を習っていたんですか?
ぼくりり: それが、楽器は何もできないんです(笑)。誰でも自由に使えるトラックがインターネット上に投稿されているので、それを借りて作っていました。
―なるほど。現在の歌とラップを行き来するようなスタイルはその時からですか?
ぼくりり: そうですね。その時からずっとです。
―いわゆるラッパーとは違うスタイルですよね
ぼくりり: 単純に血筋が違うだけだと思います。僕は母親の影響で、ずっとEGO-WRAPPIN'やUAさん、MONDO GROSSOなどの歌を聴いてきて、その土壌からラップを始めました。でも、おっしゃるラッパーさんは、ラップの曲を聴いてきてラップを始めていると思うんです。そこの違いなのかなと。
―歌モノを聴いていたんですね。トラックは今も誰かにお願いしているんですか?
ぼくりり: そうです。今も外注して、いろいろな人に作っていただいています。発注をする時に、BPMや曲調のイメージなどはYouTubeのアドレスを貼って伝えています。
―何か今っぽいですね。発注するときに重視していることを教えてください
ぼくりり: 似たような曲を作らないようにしています。時間を置いてから同じことをするのはいいですけど、連続だと一緒になるだけなので、ジャンルはバラバラになるように心掛けています。
―昨年の12月にアルバム『hollow world』でメジャーデビューをした時は、まだ高校3年生だったんですよね。そして今は大学生。この数ヶ月で意識の変化はありました?
ぼくりり: 1stアルバムをリリースした時はよく分かっていなかったんですが、今はお金をもらって仕事をしている気持ちが芽生えてきました。ちゃんと曲を作っていますよ。
―客観的に今の自分の状況をどう思います?
ぼくりり: すごく貴重な時間を過ごしているなと思っています。今の時期は、CDが廃れて、新しいものへとパラダイムが移り変わっていく過渡期だと思うんです。CD全盛期の頃は、CDを発売すれば売れたと思いますが、今はそれが変わり、いろいろと考えないといけないですよね。それが面白くていいなと思うんですよ。
―その意味も込めて、今作『ディストピア』の初回限定盤の裏が遺影になっているんですね。CDが終わりを迎えることは間違いないと?
ぼくりり: はい、紛れもなく。データを運ぶためのCDは、時間と資源の無駄でしかないと思います。もっと物としての価値へ振り切りたいですよね。
―僕らCD世代からすると、それこそ“ジャケ買い”するようなカッコいいジャケットや、歌詞カードのアートワーク、歌詞を読むのが楽しかったりするんですけど…
ぼくりり: それは分かりますが、それをCDでする必要はないと思います。CDに費やすお金を、歌詞カードや他の物に使ってしっかり作った方が絶対に面白いと思います。
―なるほど。それも一理ありますね。とは言え、CDをリリースされています。今作『ディストピア』は「ユートピア」の反対語ですが、どうしてこのタイトルにしたんですか?
ぼくりり: タイトルは最後に決めました。曲の内容的に「ディストピア」だなと思ったので付けました。
―1曲目の『Newspeak』はきれいな曲調だけど歌詞を読むと暗くて閉塞感があります
ぼくりり: 『Newspeak』は、いま言葉の数が減って何にも考えられなくなっているのではないかと思って書いた曲です。同じ意味の言葉はたくさんありますよね。例えば「良い」だと、英語ではGOODやGREAT、EXCELLENTなどがあります。それを全部GOODに集約してしまっている。日本語では「ウケる」や「ヤバい」がそれに当たると思います。言葉が減っていくことで、全部同じにしか思えなくなってしまう。区別が自分で出来なくなるから、世界が狭くなるという内容です。
―若い女の子が何でも「カワイイ」と言うのと同じですね
ぼくりり: 近いと思います。何を見ても同じようにしか見えない。感性が消滅していくという意味ですね。
―それを、ジョージオーウェルの小説『1984』になぞらえて…
ぼくりり: そうです。「Newspeak」も小説に出てくる言葉です。全部GOODに集約してしまう。悪いもBADではなくNOT GOODにする。言葉数を減らすことで思考を制限していくということです。
―それを曲に込めているんですね。そして人間は最終的にゾンビのようになっていくと
ぼくりり: 見た目は普通の人間だけど、「クオリア(感覚質)」という…上手く説明できないんですが、自分の感情や言葉を失ってしまっている様を表現しました。普通の人間なんですが、中身は空っぽ。それをゾンビに例えています。
―「クオリア」というワードは2曲目の『noiseful world』にも入っていますよね
ぼくりり: はい。この言葉はキーワードでもあります。『Newspeak』では言葉の数が減っていくことで、クオリアを失っていくんですが、『noiseful world』は情報量が多いことでクオリアを失うことを書きました。ツイッターもですが、いま入ってくる情報が多いですよね。だから、ひとつのことをゆっくり考える時間もない。誰かが「この人は悪い人だ」と発信すれば、みんなで「あの人は悪い人だ!よし、叩こう!」となる。脊髄反射で言われたことをその通りに受け止める。あるいは全く信じない。審議を判断して咀嚼して理解することが出来なくなってきていると思ったんです。
―1番大事な真ん中の部分を省いていると
ぼくりり: そうです!聞く、考える、言う。その作業が大事だと思うんですが、真ん中の“考える”がすっぽり抜けちゃっている。それは、人間の感覚が間に存在していないということだと思うんです。それで感性、クオリアを失ってしまっているのかなと思ったんです。
―その2曲と、3曲目の『Water boarding』はテーマは同じでも目線が違いますね
ぼくりり: そうですね。狭い部屋に閉じ込められて水が上から降ってきて水位が上がり、最終的に死んでしまうという曲なんですが、先の2曲とは違いこの曲では、過程を描写しています。そういう意味では目線が違う曲ですね。
―そして、初回限定盤に付属している小説とリンクしている曲でもあるんですよね。小説を書くことと歌詞を書くこととでは、考え方は違います?
ぼくりり: 出発点は一緒でも向かう方向が逆なんです。テーマは同じでも、膨らませてリアルな情景描写を肉付けしていくのが小説で、その余計な部分をそぎ落として情景描写は音に担ってもらう作業が歌詞を書くことなのかなと、今回書いてみてそう思いました。
―全体的に感じたんですが、曲はジャズの要素が入っていますよね
ぼくりり: 僕はジャズがめっちゃ好きなんです。前回は全く入れなかったので、入れてみました。
―今回はジャズの要素を取り入れていますが、次の作品では何がしたいですか?
ぼくりり: 次はジャンルレスな感じにしたいですね。タワレコのスタッフさんがどの棚に置けばいいんだろうと考えるような曲に。また、民俗っぽい曲にも興味があります。
―面白そうですね。そのジャンルレスな曲はどのように作られるんですか?
ぼくりり: 僕じゃない人が、曲を作っていることが大きいと思っています。聴いてきた音楽で作る音楽は変わってくるので、僕が聴いたことのない音楽を聴いてきた人に作ってもらうことで、新しい音楽が生み出せると思っています。生物が交尾する相手を求める時に、自分にはない遺伝子を求めるって言うじゃないですか。人間も同じだと思うんです。無意識に、自分にはない遺伝子を持っている人と一緒に作品を作りたいと思うのかなと。
―次の作品が楽しみですね。そして今年の夏、フェスにも出演されますよね
ぼくりり: この間、北海道で開催されたJOIN ALIVEに出演したんですが、出番が終わって即帰宅したので、他の人のライブを見る時間もなく、フェス気分を味わえていないんですよ。他のアーティストさんとの交流もあまりなかったですね。これから、MONSTER baSHとWILD BUNCHに出演するんですが、2日連続なんで楽しみです。
―是非フェス気分を味わってください。そして、今後やりたいことはあります?
ぼくりり:今は曲数の問題もあって出来ないんですが、早くワンマンライブをやりたいです。フェスは主催者の方が作ったものに参加させていただくものなので、自分で最初から最後までトータルで作り上げたひとつのショーをしてみたいですね。ライブ以外では、プロデューサーになりたいです。自分を含め、他の人のプロデュースもしてみたいですね。
―例えば?
ぼくりり: アイドルとか面白そうですね。
―何かハマりそうな気がします。最後にファンへ向けてメッセージをお願いします
ぼくりり: 音楽的にも1stアルバムとは違った感じで作ったので、音が大きく変わっていると思います。その部分も楽しんでほしいですね。そして、リリースの予定はまだありませんが、2ndアルバムもがっつり変わる予定です!楽しみにしていてください!!
ぼくのりりっくのぼうよみ「Newspeak」ミュージックビデオ
■リリース情報

『ディストピア』
1st E.P.
2016.7.20発売
初回限定盤(CD+ぼくりり描き下ろし、短編小説+次作アルバム・アイディアノート) 1600円(+tax)
通常盤(CD) 1200円(+tax)
■オフィシャルHP
http://bokuriri.com/
■プロフィール
この春高校を卒業したばかりの大学一年生、18歳。早くより「ぼくのりりっくのぼうよみ」、「紫外線」の名前で動画サイト等に投稿を開始。高校2年生の時、10代向けでは日本最大級のオーディション「閃光ライオット」に応募、ファイナリストに選ばれる。提携番組であるTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」で才能を高く評価されたことで一躍脚光を浴び、高校3年生だった2015年12月、1stアルバム『hollow world』でメジャー・デビューを果たす。その卓越した言語力に裏打ちされたリリック、唯一無二の素晴らしい歌声、ラッパー/ヴォーカリストとしての表現力が大きな話題を集め、日本の音楽シーンに一石を投じる新たな才能の登場として、各方面から大きな注目を集めている。















