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ライター ツボイ

2019.6.20

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MOROHA Album『MOROHA IV』インタビュー

「UKのギターには本当のことを言わされる雰囲気がある(アフロ)」

昨年のメジャーデビューから約1年。5月29日にニューアルバム『MOROHA IV』をリリースしたMOROHA。強烈なメッセージと、自己との対峙をテーマにした楽曲は聴く者の心に刺さり、ライブでは涙を流す人が続出しているという。人の心を揺さぶる楽曲はどのようにして生まれるのか。MOROHAの2人に訊いた。

―5月29日にリリースされたアルバム『MOROHA IV』は、昨年6月にリリースのベストアルバム『MOROHA BEST 〜十年再録〜』以降最初のアルバムで、新たな一歩になると思うのですが、その点は意識されました?

アフロ(MC): 全くないです。僕らはアルバムを意識して作るのではなく、シングルを作るような気持ちで1曲1曲作って、それがアルバムとしてパッケージにできる曲数になったら出す感じなので。ただ、現状まだ全然名前も知ってもらえていない段階なので、今作からMOROHAを知った方にファーストアルバムの感覚で聴いてもらえるように作ろうとは思っていました。IVだからI、II、III、と追わなければ分からない曲にはしなかったつもりです。IVから入ってもちゃんと仕留められる曲を揃えた気持ちでいます。

―今作はタイアップ曲が数曲入っているので、そこからMOROHAを知った人も多いと思うのですが

アフロ: ファーストアルバムの頃から力を付けて良くなったので、いまタイアップなどの仕事がもらえるようになったと思っている反面、「最初から良かったぜ」という思いも同じくらいあるんですよね。

―アフロさんご自身は最初から良かったという思いがある中、なぜ今タイアップのお話が来ていると思います?

アフロ: そのアーティストを知っている人が少ないと、好きと言えない雰囲気があると思うんです。それでも好きと言ってもらえるものを作りたいと思ってやってきた結果が今なので、それはそれでいいんですけど、テレビでMOROHAの曲が流れることで自分以外にも好きと言っている人がいるんだなという空気が生まれて、元々好きだった人が声を上げやすくなる。それが評価されて出会いにつながっているんじゃないかと思います。

―なるほど。タイアップ曲の歌詞を書くときは普段と勝手が違います?

アフロ: タイアップ曲は大喜利の題材を投げられているような感じです。それは結構ありがたいことで、自分で題材を見つけてくるのって難しいんですよ。例えば『うぬぼれ』は『保育・人材・介護のライク』という企業のCMソングなんですけど、代理店の方がそこで働いている方々のことをきっちり取材して、涙ながらにその人たちの想いや葛藤などを我々にプレゼンしてくれて。だから、その時点で曲が出来てる。曲の軸がはっきりしていたので、歌詞はすごく書きやすかったです。

―普段はどのように題材を見つけているのでしょうか?

アフロ: 出来事ですね。出来事が大喜利のお題になる感じです。

―日々様々な出来事が起こると思いますが、その中でコレだ!となるのでしょうか?

アフロ: そうです。例えば昨日、僕らのバンドTシャツのイラストを描いてくださった方が、iPadに記憶させた絵を描いている流れを見せてくれたんです。消してるところもリアルに分かって、そこまで描いたのに全部消した!みたいな。それを見たとき、これは題材になるなと。自分も歌詞を書く上で書いて消してを繰り返しますし、パソコンだろうがペンだろうがきっといろんな職業の人がそうだろうなと思って、ひとつのものを作り上げる過程での葛藤を曲にできたらいいなと思いました。これって、iPadを持ってきてくれなかったらなかったことですよね。

―間違いないです。そういう出来事から自分のイメージを膨らませていくんですね

アフロ: そうですね。頭にミュージックビデオのイメージが浮かびました。

―先にミュージックビデオのイメージが浮かぶんですか?

アフロ: こういう感じのMVを撮ったらいいなと、漠然とでも浮かぶものは結構作りやすかったりします。

―ちなみに、今作の中で一番パッと浮かんだ曲は何でしょうか?

アフロ: それが出来上がっちゃうと忘れちゃうんですよ。自分の想像を超えるものをMV監督のエリザベス宮地さんが作ってくれるわけですから。でも、『スタミナ太郎』に関しては思い描いているMVがあるけどまだ撮れていないので、形にできたらいいなと思います。

―楽しみにしています。アフロさんの書かれる歌詞からは感情がすごく伝わってくるのですが、一度ご自身の思いをバーっと書いて、それから歌詞としてまとめられていくのでしょうか?

アフロ: それはないです。筆を下ろした瞬間から歌詞です。そこから音楽的な意味でここにどうしても韻が欲しいとなったら調整します。

―その韻で個人的に好きなのが、『遠郷タワー』の<あったけぇ耳当て兼ヘッドホン 爆音で冬のミルクを聴かせてバックホーン』の部分。何か気持ちいいんですよね

アフロ: そこは韻が必要というよりも事実体験ですね。『冬のミルク』はすごく孤独感を駆り立てる曲なんですよ。それをヘッドホンで爆音で聴いて他の音を遮断する。音楽を聴くためじゃなく、耳を塞ぐために音楽を聴くイメージです。だからこその爆音。でも、<爆音でバックホーン>は口で言うと気持ちいいですね。

―口がですよね(笑)。その『遠郷タワー』とその前の曲『上京タワー』はひとつの話なのかなと。『上京タワー』で希望を持って東京へ向かい、『遠郷タワー』では東京でこんなはずじゃなかったという…

アフロ: その通りだと思います。上京する前は絶対にやってやるんだという気持ちでいたのが、そこから何年かしてちょっと思っていたのとは違うな、それでもやらなくちゃいけない、やりたいというところに着地するのが『遠郷タワー』です。

―東京って地方出身者の人が多いと思いますので、実際に当てはまる人はたくさんいると思います

アフロ: でも、東京以外の場所で『上京タワー』と『遠郷タワー』を歌っても、「いい」と言ってくれるお客さんがいるので、その人が上京していようがずっと地元にいようが関係ないと思います。ストーリーの中で上京がリンクするんじゃなく、気持ちがリンクするというところで、お客さんはすごく高いレベルのところで俺の言葉や音楽を聴いてくださっているんだなと。「俺は上京したことないから分からない」だったらその先はないけど、そうじゃない。お客さんが一歩踏み込んで聴いてくださっているのは、ありがたいことだなと思います。

―経験や状況ではなく、自分の想いとリンクさせて聴いてくれる人が増えるともっと深まりますよね

アフロ: ドキュメンタリーやスポーツで感動するのは、自分はやっていないけど同じような気持ちになるからだと思うんですよ。俺が一番泣く瞬間は気持ちを無くした時。だから、少年野球を見るとグッとくる。自分が持っているから気持ちが分かるじゃなくて、持っていたのに無くしちゃったところに、人は切なさを感じると思っていて。人の心がどういう時に動くのかを、自分自身と向き合って勉強していくことを忘れないことですよね。

―深いですね。その歌詞が先にあって、それを受け取ってUKさんが曲を作っていると思っているのですが、実際はどのように進めているのでしょうか?

アフロ: UKが絶対に口にすると思うので俺が先に言います。俺がどんなリリックを書こうが関係ないんですよそこは。

一同: (笑)。

UK(Gt): メッセージ性が強いとかアフロ君が書いてきたからどうこうじゃなく、大前提として僕は何かから得ることがあまりないんです。ギターと向き合って作るタイプなので、歌詞は何でも大丈夫。例えばアフロ君がウンコの曲を作りたいと言って、<ウンコ ウンコ ウンコ>っていう歌詞を書いても、それを本当に胸張って歌えるんだったら曲を作りますよ(笑)。僕はそれが音楽の本質だと思っていて、その人の感情が揺さぶられたのなら、それでいいんじゃないかと。だから、僕は自分の本質を信じています。

アフロ: 俺はUKのギターにすごく影響されることもあります。例えば一番の歌詞を書いた時点でUKのギターリフが完成して、二番はギターリフを聴きながら書こうと思った時に、そのリフから一番を書いた時に思い描いていた曲の結論から逸れて、違う方向へ背中を押してもらうときもある。すごいなと思うのは、ちょっとカッコ良く言い過ぎですが、本当のことを言わされる雰囲気がありますね。こんな風に俺は言うのに…。

一同: (笑)。

UK: 別にけなしているわけじゃないですよ(笑)。

アフロ: 俺がギタリストだったらギタリスト冥利に尽きるなと思て。でも、本当にそう思います。本当のことしか許さないギターの感じがする。UKのギターに乗せて自分がラップした時、例え曲が完成していたとしても「ちょっと違うかもしれない」「まだぬるいかもしれない」と思ってもう一回書き直すこともあります。言わないですけど、何となく「お前、何が言いたいのか分かんないぞ」という空気があるんですよ。俺は時間をおいて聴いてもいい言葉のチョイスだし、いいこと言っているから絶対にこれでいいはずだと思っているけど、その根底にあるものは何だと。それこそ大喜利のお題がはっきりしていないぞと。それがないとたぶんUKのギターに乗せられないと思うんですよね。でも、それが歌詞でいうところのキャッチーだと思うんですよ。何を言いたいのかが分かる、主題がはっきりしていることが、まずお客さんに対して渡すべき手綱だと思っています。

―UKさんのギターがアフロさんに言わせるのかもしれないですね。そこから少し逸れますが、個人的にすごく好きな歌詞があって、『拝啓、MCアフロ様』の<やりかけだった桃太郎電鉄は>からの流れが素晴らしいなと

アフロ: そこ秀逸ですよね。ありがとうございます。俺もすごく好き。UKも好きって言ってたよね。

UK: うん。そこは好きだね。

アフロ: 99年にしちゃうから、やりかけになっちゃうんですよね。それに、『桃鉄』やってる最中って、ほぼキングボンビーでケンカするじゃないですか。そういう『桃太郎電鉄』というフレーズの背負っている物語がすごいんですよ。そして、その後に<別れを告げる住み慣れた駅 互いに違う 次の目的地>じゃないですか。完璧やんって。

―そうなんです。そこに「うわっ」ってなりました

アフロ: すごいですよね。そこまで汲み取ってもらえるのはうれしいです。<別れを告げる住み慣れた駅>は『桃鉄』の駅、<互いに違う目的地>は『桃鉄』だと2人で同じ目的地に向かうじゃないですか。でも現実世界では別の駅に向かって行く。これをライブで聴いただけで全部繋がったら最高なんですけど、ラップをずっと聴いていた人の脳と、歌を聴いてきた人の脳って追っつく速度が違うんですよ。慣れの問題で。だから、たぶんJ-POPをずっと聴いてきた人は、相当頭の回転が早い人以外はそこのつながりに気付けないかもしれない。そう思うと、俺の中では二小節なんですけど、もう二小節使って長いセンテンスで説明してあげれば、もっと多くの人が気付けるんじゃないかと。そういうところで日々戦っています。

―ライブで聴いた瞬間にそこまで理解できる人は少ないかもしれないです。後から歌詞をじっくり読むことで気づく人の方が多いのかなと

アフロ: そうやって歌詞と向き合って聴く人には、四小節も使わず二小節にして後から「ハッ」と楽しめるところを残してあげられるのはいいことだと思います。でも、そういう人にだけ分かってもらえればいいと思っていたら、メジャーへ行かなくても良かったと思う。MOROHAの曲をどんどん聴き込むことで理解の速度も上がると思うので、そこへ導けるように粘り強くやらなきゃなという思いもありつつ、でもまずはたくさんの人に聴いてもらってからだというところもありつつですね。

―まずはMOROHAの曲を聴いてもらうところからですね。その歌詞は、最後の曲『五文銭』のように、やっぱり悔しい思いから生まれてくることが多いですか?

アフロ: そういう詞を書くために相当こういう気持ちと向き合っているので、こういう人間としては人生2回分ぐらい生きた気がします。だから、新しい方を歌えるようにもなりたいとは思いますね。この間、NHKの『Covers』で『明日があるさ』を全部オリジナルリリックでカバーしたんですけど、<明日があるさ>というフレーズと俺たちって実は縁があって、『勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ』という曲の中に、<明日があるさじゃ明日はこない 来たとしたってろくなもんじゃないよ>というリリックがあるんですね。「明日があるさ」と思わなきゃやってらんない時もあるし、「明日なんかないんだ」と挑まなきゃいけない時もあるけど、今まで自分たちは「明日なんかないんだ」という気持ちしか歌ってこなかった。でも『明日があるさ』のカバーをやってみようと思ったときに、坂本九さんからそっち側の気持ちも歌ってみてという声が聞こえて。これから両側のアウトプットができるように書けたらいいなと思います。

―その『五文銭』の最後の方に<食っていく為にやる音楽はやめた 世界を変える音楽に決めた>とありますが、『米』で言っていることと矛盾していますよね

アフロ: 矛盾していますよ。でも、矛盾していることが最高なんです。メッセージは曲によって違う方がいい。一貫している人間なんていないと思うから。そこで揺れ動いているのが人間の真骨頂だと思うので。「食ってくためとかしゃばいこと言ってる場合じゃない、世界を変えるんだ」と気がデカくなっている時もあれば、「明日が不安だ、世界とか言ってる場合じゃない、目の前のライブでブチかまして一枚でも多くCDを売って俺は食っていくんだ」という気持ちの時もある。全然違うけど、同じ人間が歌っているところに素晴らしい可能性があると思うんですよ。

―そっちの方が人間らしいですよね。UKさんの力強くて鋭いギターが、そのアフロさんの言葉をより心に届けてくれるんですよね

UK: 本当は優しく弾きたいです。自分が理想とする力を100%だとしたら、常に250%の力を出してるんですよ。本当はもっと優しく弾いた方が表現の幅が広がる曲もあるんですけど、それではMOROHAでライブを表現する際、音に負けてしまう時があるので、あえてそういう弾き方をしています。それも技術だと思います。

―負けてしまうというのはアフロさんのMCにではなく音なんですね

UK: 熱量という話ではなく、MOROHAで音楽をやっていることに対してです。僕は指弾きですけど、ソロでギターを弾く人だったらここまで強く弾く必要はない。自分たちの音楽がどういう音楽なのかを表現する時に、今の自分がギターを弾く上でベストの力よりもプラス150%の力だということです。

アフロ: ギター弾きとしての理想だよね。

UK: 演奏を一番キレイに聴かせるとか、自分がこういう曲で表現したいというもののベストは100%でありますけど、MOROHAを表現する時は250%じゃないとできない。

アフロ: それが正解なんだ。なるほどね。

―ライブで表現するにあたって、お互いの雰囲気を感じながらタイミング等を取っているんですか?

UK: 2人の雰囲気が一致することは謎にあるんですよ。俺らはライブ中に会話するわけでもないですし、僕もアフロの方にアイコンタクトを取ることない。でも、何となく伝わってくる空気感は一緒だったりします。お互い無意識に。

―感じるのではなく無意識なんですね

UK: それに対して意識はしますけど、どれが正解なのかは日々ライブでやってきた積み重ねで、「この場合はこっち」みたいな矛先は、お互い擦り合わせていないのに合っていたりしますね。

―意識しなくても分かってしまうんですね。そのお2人のライブが観られるツアーが7月15日から始まります。最後に、そのツアーを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします

アフロ: 楽しみにしてくださっているとしたら、たぶん楽しくないライブになると思います(笑)。楽しくないと言ったら語弊がありますけど、そういう音楽もあるんだなと思ってもらえたらいいなと思います。良くも悪くも何か残ればいいかなと思います。

UK: 日本全国とはいえ行けない土地もあります。そういう人を除け者にしているつもりはないので、ぜひお近くの会場に足を運んでください。

アフロ: お願いします。

MOROHA『拝啓、MCアフロ様』Official Music Video

■リリース情報

『MOROHA IV』
Album
発売中
初回限定盤(CD+DVD) 4,800円(+tax)
通常盤(CD) 2,800円(+tax)

■LIVE情報
MOROHA「単独」
7月13日(土) 東京 日比谷公園野外音楽堂

MOROHA IV RELEASE TOUR「単独」
07月15日(月祝) 徳島 club GRINDHOUSE
07月17日(水) 愛媛 松山Double-u Studio
07月24日(水) 新潟 CLUB RIVERST
07月28日(日) 静岡 LIVE HOUSE Quars
08月03日(土) 大阪 BIGCAT
08月04日(日) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
08月10日(土) 宮城 SENDAI CLUB JUNK BOX
08月11日(日祝) 青森 LIVE HOUSE FOR ME
08月12日(月振休) 岩手 the five morioka
08月21日(水) 群馬 前橋DYVER
08月24日(土) 島根 松江 AZTiC canova
08月25日(日) 兵庫 KOBE BLUEPORT
09月01日(日) 長野 ALECX
09月07日(土) 香川 DIME
09月17日(火) 北海道 札幌BESSIE HALL
09月21日(土) 岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
09月22日(日) 広島 LIVE VANQUISH
09月25日(水) 京都 LIVE HOUSE GATTACA
09月28日(土) 熊本 Django
09月29日(日) 福岡 BEAT STATION
10月05日(土) 福島 clubSONICiwaki
10月12日(土) 福島 Out Line
10月14日(月祝) 山形 酒田hope
10月19日(土) 大分 club SPOT
10月20日(日) 鹿児島 SR Hall
10月26日(土) 埼玉 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
10月27日(日) 長野 LIVE HOUSE J
10月31日(木) 沖縄 G-shelter
11月08日(金) 東京 Zepp DiverCity Tokyo

■オフィシャルHP
http://moroha.jp

■プロフィール
2008年結成。長野県出身。アコースティックギターのUKとMCのアフロからなる二人組。互いの持ち味を最大限生かすため、楽曲、ライブ共にGt×MCという最小最強編成で臨む。その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽は、あなたにとって、君にとって、お前にとって、最高か、最悪か。

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