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ライター ツボイ

2020.1.4

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ROTH BART BARON New Album『けものたちの名前』インタビュー

「“けもの”という名の純粋性に呼び寄せられた10曲が入っています」

前作『HEX』からちょうど1年、ROTH BART BARONの最新アルバムが11月20日にリリースされた。雄大で美しくデザインされたサウンドと、シンプルな言葉で綴られた歌詞世界に魅了される。その作品はどのように生まれたのか。ツアー初日の前日(11/26)という忙しい中、三船雅也に話を訊いた。

―11月20日にリリースされたアルバム『けものたちの名前』は前作『HEX』と違い、絵本の中というか物語の中にいるような雰囲気を持った作品だなと感じました。今回はどのようなテーマで作られました?

三船雅也(Vo/Gt): 最初は子供をテーマに作品を作ろうと思ったんですけど、よくよく考えると大人が入っていないなと。また、2010年代が終わることをすごく考えました。バンドが始まったのは2014年で、「この6年ぐらいどうだったのだろう?」と考えた時に、前作はインターネットで繋がることをテーマに作ったんですけど、繋がったが故にいっぱい可視化されてラインができ、みんなが線を引く繋がりと分断の時代だったんじゃないかなと。アメリカでは「壁を作るぞ」という大統領に変わり、イギリスはブリグジットするぞと分断しようとしている。その真ん中の人たちもいっぱいいたのに突然“Yes or No”と迫られ、敵と味方に分けられちゃうのをよく見受けられたなと。その中で子供をテーマにすると大人が含まれない、少年性や少女性というと「性別を分けるの?」と言われる。自分はそういうものに加担したくないなと思ったので、“けもの”をモチーフにすることで純粋性に例えられるんじゃないかと考え、今回は作らせていただきました。

―その1曲目『けもののなまえ』はHANAさんという10代の少女が歌っています。HANAさんとはどのように出会ったのでしょうか?

三船: 今回はErmhoiやMaika Loubté、優河も含め4人の女の子に歌ってもらっていて、この3人には絶対に歌ってもらいたいと思っていました。HANAとは、5月のHEXツアーファイナルの時に、共同プロデューサーの林口さん繋がりで彼女とその家族の方がライブを観に来ていて、その時に初めて会いました。それから「彼女も歌うんです。一緒に何かできたら楽しいですね」という話をいただいた時、不意に「もしかしたら今作っているこの曲に合うかもしれない」と降ってきて「こういう曲があるんだけど、良かったら歌ってみない?」というところから歌ってもらいました。

―HANAさんの歌声を聴いた印象はいかがでした?

三船: 音楽的な勘が非常にいいなという印象でした。まだ何にも染まってなくて、何か良い予感がしたし、いい意味でほわーんと宙に浮いているような歌い方をするので、面白いなと思ったのが最初です。

―ふわっとしていて無垢な感じが曲にぴったりだなと思いました。この曲では三船さんも歌われていますが、それが性別や年齢の曖昧さを感じさせます

三船: 当たり前に女性がいて男性がいて、セクシャリティは世界中で LGBTQと再定義されている。その当たり前に存在する人たちを、当たり前に描写するということを2010年代が終わる前にちゃんとやっておきたくて。

―サウンドはスケール感が大きいけど繊細で、ROTH BART BARONらしいデザインされた楽曲が詰まっているなと感じました

三船: いつも大きな会場で鳴らしていることを想定してバンドをやってるし、スケールの大きさは僕らの表現には重要な要素の1つだと思って音楽をデザインしています。今回もいつもより伸び伸び自由にできた感じがしていて、3年間作品が作れなかったエネルギーが、3rdアルバム『HEX』のおかげで吹き出した慣性のまま、すごく自然な形で無理なく作れました。

―そんな中、2曲目のフォークな曲『Skiffle Song』はROTH BART BARONらしい曲ですよね

三船: ありがとうございます。フォークは元々民衆や群衆、みんなのために歌う音楽なんです。でも、なぜか日本はフォークソングを70年代に輸入した際、四畳半の個人の生活を歌うものだと勘違いしちゃって。本当はみんなのことを歌う音楽なのに、僕と君だけで完結しちゃう歌になってしまった。でも僕は、アメリカの古い音楽やフォークソング、ブルースなどロックの元になった、まだ技術がなくて録音されなかった声たちにすごく興味があったので、そういうものを現代の目線で今を生きる自分が鳴らしたくて。だから、自然とそこに返っていったのかなと。実は『Skiffle Song』は7年前ぐらいに作った曲で、ライブで少しやっても「今みんなに聴かせる価値ない」と思ってずっとボツにしていました。でも、2番の<自分の子供が 育てられないのなら 他人の子供を 育ててみてはいかが?>という歌詞は、当時から家族という定義をもう一度考え直してみよう、本当に血のつながりだけが大事なのか、家族のステレオタイプに振り回されているだけじゃないか、同性の人たちが養子をもらって家族を形成していくのも家族なんじゃないかと思っていて、日本は「ロボットも家族で魂があると思う」って言うから、意外と寛容な民族だよなということを7年ぐらい前から考えていたんですよ。それがすごく今っぽいし、2019年にぴったりじゃんと自分が持っていたものを再発見した感じですね。

―その当時の曲と最新の曲が混ざっている作品になってるんですね

三船: 『HEX』以降の曲も7年前の曲も入ってるのが面白いなと思っています。“けもの”という名の純粋性に呼び寄せられた10曲が入っている。バラバラな年代のはずなのに、ひとつのストーリーになっているのは自分でも面白いなと思っています。

―面白いといえば『TAICO SONG』。いろいろな音が入っていて新しい感じもします

三船: これは最新の曲です。最初はすごくシンプルな太鼓がドコドコ鳴っていて、次にその太鼓がコンピューターで作られた感じのちょっとチグハグになるトラックを作ろうと思ったんですけど、バンドのみんながギターでイントロのリフを作ってくれたり、ホーンがバーっと鳴らしたりしたので「あっこの曲は大きいんだ」と途中で思って、コンピューターで作ったドラムと人間の温かみの両方を音に反映させたら、不思議な質感になってあまり聴いたことない曲になりました。単純に肉体だけの喜びだけじゃなく、コンピューターもあるところの価値観でバンドが今出せる最新の音が鳴っていながら温かみもある。ロボットのペットになんで温かみがあるんだろうという感じに近い感覚はあります。

―生音とは違う質感ですよね。そして気になったのが『ウォーデンクリフのささやき』。ウォーデンクリフって何だろうと思って調べたら、タワーが出てきてどういう意味?と

三船: その業界では有名ですよ(笑)。今僕たちが使っている電気は交流電流で、エジソンが作ったのは直流電流なんですよ。じゃあ交流電流を作ったのは誰かというと、ニコラ・テスラという人。彼はエジソンに憧れてエジソンの会社に入ったのに、確執か何かで辞めてしまうというエピソードがあって。今僕たちが電気のある生活を送れているのは彼のおかげで、その彼がウォーデンクリフのタワーを作ったんです。でもあまり上手くいかなくて結局壊されちゃう。この曲を作った時にそのタワーがどうしても浮かんじゃって、ニコラ・テスラの何かの曲なんだろうなと思ってタイトルに付けました。みんな結構反応してくださるんですけど、みんな意外と知らなくて。僕は子供の時に図鑑や伝記が好きで読んでいたので、その頃の記憶が自然と浮かんできました。

―なるほど。謎が解けてうれしいです。そして最後の『iki』はみなさん参加されていますね

三船: 男も女も老い若きも全員歌っています。うちのホーン隊もバンドメンバーにも全員に歌ってもらいました。

―<暗闇の中で 僕らは白い息を できる限り 夜に混ぜてゆく>という歌詞が印象的です

三船: これは昨年末に作ったクリスマスソングで、僕らの YouTubeにアップした曲なんですけど、2020年代に飛び込む時に一番必要な音楽なんじゃないかと思って入れました。<僕らは>と言ってるけど、個人的なことかもしれないし、一人一人の息は小さいかもしれないけど、みんなで混ぜていくことができたならば何かが変わるんじゃないかとか、そんな感じです。

―2010年代が終わる今だからこそ必要な曲かもしれないですね。そして明日(11/27)からツアーが始まります。どんなツアーにしたいですか?

三船: 僕らは楽器が多いのでサーカスのようだと言われることが増えたんですけど、いわゆるロックバンドじゃない「何だこりゃ!?」というか、同時にこんなに楽器って鳴るんだというぐらい楽器を使います。また、コンピューターはほとんど使わないバンドなので、人間の温かさというか生きてる部分を感じてもらえたらなと思います。

―名古屋は2月22日(土)に愛知芸術文化センター中リハーサル室という変わった会場で行います

三船: そうですよね。名古屋は公演を組んでくれているLIVERARYの武部さんが、「蓮沼執太フィルで実施したリハーサルでのフロアライブがとても良かったから、その感じでやりたい」と提案してくれて。面白そうですごく楽しみです。また歌で参加してくれたMaika Loubté と何か一緒に出来たらな、と思っています。もちろん彼女のソロパフォーマンスのステージもあるので、名古屋に至っては超スペシャルな公演になります。どんな世界が広がるのか楽しみです。

―楽しみにしています。最後にそのライブを心待ちにしている人たちへ向けてメッセージをお願いします

三船: まず「何だこのインタビューは!?」と思ってくれたらうれしいなと思います。考えすぎだろみたいな(笑)。もしここで人の心にタッチしたというか面白いなと思ってくれたら、音楽も聴いて、ライブは生きてるうちにしかできないのでライブも観に来てほしいです。是非見に来て触れ合ってほしいなと。そうやって繋がっていけたらうれしいです。

けもののなまえ feat. HANA ROTH BART BARON - studio session -

■リリース情報

『けものたちの名前』
Album
2019.11.20 発売
CD 2,500円(+tax)
LP 3,300円(+tax)

■LIVE情報
ROTH BART BARON
“TOUR 2019-2020 〜けものたちの名前〜”

2019年
12月21日(土) 台湾 台北The Wall
2020年
02月01日(土) 富山 飛鳥山善興寺
02月02日(日) 石川 金沢アートグミ
02月07日(金) 福岡 天神the Voodoo Lounge
02月08日(土) 鹿児島 SR Hall
02月09日(日) 熊本 NAVARO
02月10日(月) 山口 岩国Rock Country
02月11日(火祝) 大阪 梅田Shangri-la
02月22日(土) 愛知 愛知芸術文化センター中リハーサル室
02月23日(日) 広島 福山Cable
02月28日(金) 北海道 札幌mole
03月07日(土) 山形 肘折国際音楽祭
03月08日(日) 青森 八戸Powerstation A7
03月22日(日) 京都 磔磔
05月30日(土) 東京 めぐろパーシモン大ホール

■オフィシャルHP
https://www.rothbartbaron.com

■プロフィール
三船雅也(Vo/Gt)、中原鉄也(Dr)による東京を拠点に活動している2人組フォークロックバンド。2014年に1stアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』を真冬のフィラデルフィアにて制作。2015年、2ndアルバム『ATOM』をカナダ・モントリオールにて制作。2017年にはEP『dying for』をイギリス・ロンドンにて制作。2018年、3rdアルバム『HEX』を発表し、「Music Magazine」「The Sign Magazine」をはじめ、多くの音楽メディアにて年間ベストにランクイン。また、サマソニ、フジロックなどの大型フェスにも出演し、活動は国内のみならずUS・アジアにも及ぶ一方、国の重要文化財「山形・文翔館」での公演も成功さえる等、独創的な内容とフォークロックをルーツにした音楽性で世代を超え、多くの音楽ファンを魅了している。

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