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ライター ツボイ

2019.12.14

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SOIL&"PIMP"SESSIONS New Album『MAN STEALS THE STARS』インタビュー

「ぜひ一本の映画を見るつもりで頭から通して聴いてほしい」

SOIL&"PIMP"SESSIONSが、前作『DAPPER』から約1年半ぶりとなるオリジナルアルバム『MAN STEALS THE STARS』を12月4日にリリースした。今作はある詩人を主人公にした物語のサウンドトラックとなっており、様々なジャンルを取り入れたボーダレスで自由なサウンドを楽しめる作品となっている。その今作はどのように始まり、曲が作られていったのか。フロントマンの社長に話を訊いた。

―前作『DAPPER』では、野田洋次郎さんや三浦大知さんなどをフィーチャーされた曲も収録されていましたが、今作『MAN STEALS THE STARS』はインストゥルメンタル曲中心で、ひとつの物語のようになっている印象を受けました。まずは、今作のコンセプトについてお聞きしてもよろしいでしょうか?

社長: アルバムを作ろうとなった時点でみんながデモを作るんですけど、今回は主にトランペットのタブゾンビとピアノの丈青が多くの曲を書いてくれました。最初タブくんのデモをスタジオで聴いた時に、丈青が「ブレードランナーみたいだね」と言っていて、それが我々の中でキーになり、「ブレードランナーや近未来のSFみたいなテーマは面白いかもね」という、ふわっとした軸がそこで決まりました。今回、1曲目の『Man Steals The Stars』のポエトリーリーディングをF.I.B JOURNALの山崎マドキさんにやっていただいたんですが、その方が書いてくれた詩の中に「Man Steals The Stars 星を盗むもの」という一節があって、このフレーズはタイトルになるんじゃないかと。そして、その詩の最後に「The last of the poets 最後の詩人」という言葉が出てきたので、この詩人を主人公にした物語のサウンドトラックにしようとなり、アルバムの軸が決まりました。今回はタイトルが先に決まった後に、みんなが作っていた曲の中からアルバムの軸となる物語にフィットする曲をセレクトして熟成させていった感じです。

―だから、タイトルも曲も物語のひとつの章のようになっているんですね

社長: そうですね。物語の架空のサウンドトラックとはいえ、ひとつの映像作品としてのサウンドトラックになり得るようイメージしたので、それぞれにちゃんと物語があります。

―その中から何曲か気になった曲についてお伺いしたいと思います。まずは5曲目『Galaxy Lady』。ここで曲の趣がガラッと変わりますが、どのようなシーンをイメージされたのでしょうか?

社長: 『スタートレック』や『スターウォーズ』では定番のシーンだと思いますが、その星ではセクシーであろう爬虫類のような女性がダンスをしているような、いろいろな星の人が集まる宇宙のゲスいバーがあって、そこに集まる男たち女たちというテーマでこの曲は出来ています。この物語の中のひとつの汚しのシーンみたいな感じなんですけど、そこで重要な情報が得られたり、人を探しているとしたらそこでキーパーソーンに出会ったりするような大事なシーンをイメージしています。

―そのイメージすごくあります。次の曲『Tell A Vision』は静かな曲で、またシーンが変わったことが分かります

社長: この物語の欠かせないキーワードにタイムトラベルやパラレルワールドがあるんですが、並行世界という今我々が生きている世界と並行した世界が無数に存在していて、そのいろいろな次元で起きていることの物語になっています。この曲は面白い作りをしていて、丈青がリハスタで弾いていたピアノがすごく良かったのでタブくんが録音して、そのフレーズをサンプリングして分解して構築してという作り方をしています。ひとつのフレーズから別の曲を作ったアイデアが面白い曲になっています。

―そういうところからも曲ができるんですね。社長が作られた『Lost Memories』はどのようなイメージで曲にされたんですか?

社長: 失われた記憶という、映画の中でいうと回想シーンになるんですかね。映画『ジェイソン・ボーン』でいうところの、記憶を抜かれる前の記憶が時々フラッシュバックしてくるようなイメージの曲です。オーセンティックなジャズのラインもありつつ、並行してヒップホップというかトラップのビートも内包されています。後半では90年代のドラムンベースを連想させるようなシンセベースの音が入っているなど、軸がいくつかあるような試みをしました。

―ちょっと新しさも感じました。8曲目『Lyra's Attack』は攻撃しているというか戦っているような激しい曲です

社長: 戦いを回想しているイメージですね。ポエトリーではリラ、つまりこと座の戦士が、火星に攻めてきて滅亡する。それもパラレルワールドの別の次元で起きていることですね。こと座の戦士はすごく好戦的で思っていたよりも強かったので、勝てると思っていたのにと、曲中でシャウトしています。戦いに敗れた人たちの叫びの曲ですかね。

―そのシャウトにはそんな意味があったんですね。個人的に『Space Drifter』のシンセの音が好きなのですが、どうして宇宙のイメージってこのシンセ音なんでしょうか?

社長: 確かに(笑)。たぶん映画『2001年宇宙の旅』からだと思うんですよ、宇宙描写のシンセって。その時代の一番最先端だったのがそういう電子楽器だったのもあると思います。この曲は、宇宙船が操縦不能になったけどコントロールを取り戻してライトスピードに突入みたいな、SFの一番ワクワクするところの音楽ですね。

―すごく分かります。そして『Utopia Traces』で物語は終わりを迎えるのですが、「ファイヤー」など叫んでいてただ事じゃない雰囲気があります

社長: ゾッとしますよね。この物語のエンディングは、ユートピアを求めて行ったその先にあったのは、その痕跡だったという何もない世界だったという感じですかね。

―そういうことだったんですね。前作は社長の曲が多かったですが、今作はタブゾンビさんと丈青さんがほとんどですね

社長: 前回は僕がやらせてもらったので、今回はみんなをサポートする立場に回ろうかなと思って、前もって「みんなを手伝うから」って宣言しました(笑)。丈青に関しては、コンセプト云々の前に「今こういうのをバンドでやりたい」と結構な数の曲を持ってきてくれて。実は今回収録しなかった曲も結構たくさんあるんですよ。

―曲自体は結構あったんですね。SOIL&"PIMP" SESSIONSは最初デスジャズを謳われていたと思います。その当時も好きでしたが、今作のような様々なジャンルを取り入れた繊細なサウンドもいいなと。バンドはどんどん進化していますね

社長: 確かに昔は、激しいデスジャズというものやパーティーチューンっぽい音のテンションでアゲていく、ライブ映えするような曲を積極的に作っていました。僕たちのルーツはそこだと思うし、今も気持ち的には変わらないですよ。表層的な気持ちの高揚や、ライブで瞬間的なものではなく、もうちょっと長い時間軸でアガるようなハイクオリティの音を求めるようになったと思います。たぶん昔よりも緻密に深いところまで届くような音を作るようになったんだと思います。音の深さをお届けしたいですね。

―その中で今作ではどの部分に特にこだわって作られたのでしょうか?

社長: 今ロンドンを筆頭に、ロサンゼルス、メルボルン、ニューヨーク、マンチェスターといった世界中の街で、新世代の現代ジャズと呼ばれる音楽がそれぞれで盛り上がっています。例えばL.Aではヒップホップシーンやビートシーンとジャズシーンが密接になっているし、ロンドンではカリビアン系の移民が多く住むサウスロンドンから発生する現代ジャズが盛り上がっている。一方で、メルボルンからはハイエイタス・カイヨーテというバンドのメンバーがリードするいろんなプロジェクトが、それぞれで面白いジャズをやっていて。そういう各地の点のひとつとして、我々も日本からこの音を発信したいなというのがすごくありました。だから、国内だけじゃなく世界各地のリスナーにもちゃんと届くような音作りと、正確なリズムのグルーヴを構築するところを今回はすごく綿密に作りました。今回楽曲をたくさん作ってくれた丈青が、アルバム全体の音楽感的なところを緻密にコントロールして押し上げてくれた感じです。

―世界各地のリスナーを意識してより緻密に作られたんですね。そして、初回限定盤にはつい最近行われたロンドンでのライブ映像DVDが付属しますが、どんなライブでした?

社長: 今年で60周年という伝統のある『ロニー・スコッツ』というジャズクラブで、今年は3daysやらせていただきました。そのライブ映像なんですが、そこに来る人の耳が肥えているんですよ。何十年も通っている常連さんが多くて。その中にはファンの方ももちろんいるのですが、一過性の何かじゃ通用しないんですよ。時間をかけてアゲていかないと評価をしていただけない。だからこそ楽しくできたライブをお届けしましょうと。ここはレジェンドがたくさん演奏している場所で、例えばベースも伝説のジャズの方がこのハコが好きで「自分のベースを置いておくから」と寄贈したベースをうちの秋田くんが弾かせてもらって。ピアノもいろんな人が触っているピアノなので、本当に鳴る。そういう特別な場所でのライブ映像です。

―そのDVDも必見ですね。この作品は最初から通して最後まで聴いてほしい作品だと思います。最後にリスナーへ向けてメッセージをお願いします

社長: 今の僕たちが聴いてほしい音が詰まっておりますので、ぜひ一本の映画を見るつもりで頭から通して聴いてほしいです。

SOIL&"PIMP"SESSIONS『Space Drifter』Music Video

■リリース情報

『MAN STEALS THE STARS』
Album
2019.12.4 発売
初回限定盤(CD+DVD) 3,800円(+tax)
通常盤(CD)2,900円(+tax)

■LIVE情報
TOUR 2020 “MAN STEALS THE STARS”
1月17日(金) 静岡 浜松 Live House 窓枠
1月18日(土) 福井 CHOP
1月26日(日) 宮城 仙台Darwin
2月01日(日) 北海道 札幌cube garden
2月08日(土) 大阪 味園ユニバース
2月09日(日) 京都 磔磔
2月11日(火祝) 愛知 名古屋BOTTOM LINE
2月21日(金) 広島 CLUB QUATTRO
2月23日(日) 鹿児島 CAPARVO HALL
2月24日(月祝) 福岡 DRUM Be-1
3月04日(水) 東京 マイナビBLITZ赤坂

■オフィシャルHP
http://www.soilpimp.com

■プロフィール
2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンが集まり結成。ライブを中心とした活動を身上とし、確かな演奏力とクールな雰囲気を漂わせながらも、ラフでエンターテインメント、バースト寸前の爆音ジャズを展開。2005年には英BBC RADIO主催のWORLDWIDE AWARDS 2005で「John Peel Play More Jazz Award」を受賞。以降、海外での作品リリースや世界最大級のフェスディバルであるグラントベリー、モントルージャズフェスティバル、ノースジャズフェスティバルなど、数々のビッグフェスに出演。これまでに31カ国で公演を行うなど、ワールドワイドに活動を続けている。2018年5月に野田洋次郎、三浦大知をはじめ豪華アーティストが参加したアルバム『DAPPER』をリリース。2019年はフジテレビ系ドラマ木曜洋画劇場『スキャンダル専門弁護士QUEEN』、今年生誕50周年を迎えた名作ホラーアニメ『妖怪人間ベム』の新作テレビアニメ『BEM』の2本のサウンドトラックを書き下ろした。そして12月4日に約1年半ぶりとなるオリジナルアルバム『MAN STEALS THE STARS』をリリース。

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