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ライター ツボイ

2019.5.21

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ドレスコーズ New Album『ジャズ』インタビュー

「色々なことがあったけど、何も残さずゆっくり滅びていくと思ったら、『ジャズ』って人類にお似合いかなって」

“令和”という新しい時代を迎えた5月1日に、“人類最後の音楽”という作品『ジャズ』を発表したドレスコーズ。その音楽とは一体どのようなものなのか?また、その作品に『ジャズ』というタイトルを付けたのはなぜか?そして、ドレスコーズの志磨遼平は、今作で世の中に何を伝えたかったのだろうか。そんな多くの疑問を解決すべく本人に話を訊いた。

―5月1日にリリースされたアルバム『ジャズ』を聴かせていただきました。壮大なスケールで完成度の高い作品だなと。そのコンセプトは“人類最後の音楽”とのことですが、どのような思いや経緯からそこへ至ったのでしょうか

志磨遼平: 僕は本が好きで色々な本を読むんですけど、最近やっと『サピエンス全史』というベストセラー本を読んだんです。その著者のユヴァル・ノア・ハラリさんが言うには、医学の発達であと100年、200年後には人類が不老不死になるというんです。もしそうなったら、それはホモサピエンスではなく、人類から進化した別の種族と呼ぶべきじゃないかと。それまでにあと100年、200年ということは、たぶん我々が、死を逃れられない人類の最後の世代になるんだろうなと思ったら、それをアルバムにしない手はないなと。そこで、人類が最後に残す音楽みたいなものを作ってみようと思ったのが取っ掛かりです。

―その人類が最後に残す音楽をジプシー音楽で表現したのはなぜでしょうか

志磨: それは今の話と別になるのですが、個人的に何年か前からジプシー音楽を好きになったというか、やってみようと思っていて。その音楽は今回のコンセプトと何となく相性いいんじゃないかと思ったんです。定住しないでずっと旅するジプシーの人たちの音楽は、人類が長い旅を続けて最果てまで行き着くようなイメージにすごく合うなと思ったので。

―確かにサウンドがコンセプトにマッチしていると思います。ただ、ジプシー音楽はあまり馴染みがないだけに挑戦だったのではないですか

志磨: そうですね。でも、例えばスペインのジプシーたちが生んだフラメンコのような音楽って、日本人の我々も好きだと思うんですよ。昭和の歌謡曲にもなぜかそういった影響が感じられる。どこかミステリアスで情熱的なジプシーのイメージに我々は親しんでいるので、「なんだこれは!? 全然分からんぞ!」という音楽にはならないだろうなとは思っていました。

―そうなんですね。では、曲はどのように作っていったのでしょうか

志磨: 僕は色々な曲を並行して進めるので、1曲ぱっと出来ることもあれば、コーラスをたくさん作って部品のようにハメながら、2、3個のアイデアを合体させて1曲にすることもあります。今回は、わーっと色々作りながら毎日少しずつ進めました。順番で言うと、1曲目の『でっどえんど』から作り始めたんですけど、熱中して一気に作っているうちにだんだん形が出来上がってきて、ひとつのアルバムになりました。もしかしたら、1曲を作るというより、アルバム1枚を作る意識だったのかもしれないです。12曲で1つの作品を作ろうとしていたような気もします。

―そう作ったから、コンセプトのしっかりした作品ができたわけですね

志磨: そうだと思います。2年前に出した『平凡』というアルバムの制作ぐらいから、ひとつのコンセプトを軸にアルバム単位で完成まで持っていくようになりました。「曲がいっぱい溜まったので、それをまとめてアルバムにしました」というのが、たぶん一般的なアルバムだろうし、僕もそうだったんですけど、『平凡』やその後に舞台音楽を担当させていただいたことが大きかったと思います。3時間くらいのお芝居のパーツとして21曲ほどをアレンジしたんですけど、独立した1曲じゃなく、いくつものシーンに合わせてひとつのストーリーを構成する曲の作り方で。それが今の自分は面白いみたいです。

―今作品もそうなっていると思います。曲それぞれがひとつのシーンとなっていて、1曲目の『でっどえんど』は物語でいうプロローグのようですし

志磨: そうそう、まさに『でっどえんど』の仮タイトルは『プロローグ』でした(笑)。

―当たっちゃいましたね(笑)。

志磨: そして、最後の曲『人間とジャズ』が『エピローグ』という仮タイトルで。

―そうだったんですね。僕が聴かせていただいた印象では、10曲目の『Bon Voyage』で終わって11曲目の『クレイドル・ソング』と12曲目『人間とジャズ』は、その後のことなのかなと

志磨: 他にもそうおっしゃる方がいらして、鋭いなあと思いました。確かに11、12曲目は「後日談」じゃないですが、映画でいうエンドロールみたいな曲かもしれないです。

―そう思うと曲順にかなり悩まれたのではないですか?

志磨: それが、今回はあまり迷いなく最初のイメージ通りに完成まで持っていけたかもしれないです。単純に、アルバム1枚でひとつの構成となる作り方に慣れてきただけかもしれないですけど。

―例えば舞台だったら見えますが、音楽って目で見えるものじゃないですよね。それがイメージできているということですか

志磨: 僕には何となくイメージがあるんですけど、それは聴いてくれる方と共有できるものもあれば、僕にしかわからない個人的なイメージのものあると思います。

―なるほど。作品としては、全般的に思想や宗教を感じさせる曲が多いのかなと思ったのですが…

志磨: 僕は信仰する特定の宗派はないんですけど、昔からモチーフとしての<神様>や<祈る>といった言葉が好きで、今回もそういったモチーフがメインになりました。<ハレルヤ>という言葉なんかもそうですね。

―『もろびとほろびて』の歌詞ですね。この曲は面白いですよね。<ハレルヤ>から始まりますが、途中<セブンイレブン>などの言葉が出てきて

志磨: <ハレルヤ>から<セブンイレブン>まで、その落差はいいですね (笑)。個人的に歌詞は歌うだけでなく読んでも面白いものである方がいいなと思っていて、歌うのと字を目で追っていくのってスピード感が違うわけじゃないですか。「ハレールヤー」と歌うと理解まで1秒くらいかかるけど、<ハレルヤ>と目で見ればほんの一瞬。それに、耳で聴くと聴き間違いも起こるけど、目で見てしまうと起こらないですよね。わざと聞き間違いを誘発するように作っていて、だから僕の歌詞は読んでも面白いし聴いても面白い。自画自賛になっちゃいましたけど(笑)。

―確かに(笑)。でもこういう音楽を聴いていると、その世界へ連れて行かれそうになりますが、<セブンイレブン>のような身近な言葉が入ることで現実なんだと我に返してくれます

志磨: そういう世界の中で生きつつも、「明日は上手くいきますように」というような祈りってみんな持っていますよね。そういう日常的な祈りみたいなものは、生活の中に割と普通にあって。そういうものをこのアルバムを通して書いてみたかったんですよ。

―そう思うと最初に壮大だと申し上げましたが、実は日常の普遍を歌っているんですね。その作品のタイトルに『ジャズ』と付けたのはなぜでしょうか

志磨: ジャズの語源って実はよく分かっていないんですって。調べてみたらいろんな意味があって、最初に出てくるのが“すごくうるさい”なんですけど、それは親の世代が僕らの好きな音楽を聴いて「ただうるさいだけやん」と言うようなニュアンスだと思います。だから昔は、こういうビートがジャズですという定義はなくて、“新しい音楽”という意味だったみたいです。そういうすごく騒がしい割に中身がないみたいなのって、人類の今までの歴史を言い当てているような感じがするんですよ。色々なことがあったけど、何も残さずゆっくり滅びていくと思ったら、『ジャズ』って人類にお似合いかなって(笑)。

―なるほど。『ジャズ』は音楽のジャンルではなく言葉が持つ本来の意味のことなんですね

志磨: 日本でも大正や昭和初期の頃は、民謡や浪曲がいっぱいあったわけじゃないですか。そういう日本の元々ある音楽じゃない歌謡曲や若者向けの流行の音楽を全部ジャズって言っていたらしいですよ。

―それ以外は全てジャズだということなんですね。そして、今作には様々な方が参加されています。その中でアレンジをされたのが梅津和時さん。大御所の方にお願いしたのは?

志磨: 梅津さんはフリージャズや忌野清志郎さんと一緒にロックをやられていた傍ら、ジプシー音楽の一種であるクレズマーという音楽も専門的にやられていて。それで梅津さんにダメ元でオファーをしてみたら「面白そうだね」と受けていただいたんです。今回はほぼ全曲梅津さんと一緒に作りました。

―梅津さんと一緒に曲作りしたことで得られたものはありました?

志磨: あり過ぎますね。僕のアイデアをどんどん聞き入れてくれましたし、譜面も全て梅津さんが書いてくれて。梅津さんは普段アドリブの方が多いと思うので、今回しっかり話し合いながら作れたのはすごく嬉しかったですね。僕一人では絶対にこのアルバムは作れなかったです。

―そして、6月6日(木)からツアーも始まります。今作の曲をどう再現されるのか興味があります

志磨: そうですよね。もう心配で夜も眠れません(笑)。管楽器メインの編成は今までにないので、そこを楽しみにしていただければ。

―作品の世界観をどうステージで見せるかも考えられています?

志磨: 去年のツアーは演劇の仕事の後だったので、演劇の手法を上手くライブに取り入れたいなと思って、割と視覚的な要素の強いツアーでした。今回は視覚的なものに重きを置くより、音楽的なものになるかな。でも、去年の演劇で得たものは大きいので、何かしらの影響はあると思います。だいぶライブに対する考え方も変わったので。

―すごく楽しみにしています。では最後に、そのツアーを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします

志磨: ものすごい作品を作ったぞと思う片方で、たかが音楽です、とも思っていて。これはものすごい大傑作だ!と思いつつも、音楽はそんなに難しいものではないので、結局ね、という。だから、ライブですごく難解なことはしませんし、演奏は楽しいものなのでふらっと来て楽しんでいただけたらそれでいいです。僕はただの音楽のようであり、ものすごく大きな音楽でもあるということがやりたいと思っていますので、ご期待ください。

ドレスコーズ “THE END OF THE WORLD PARTY” PART 1

ドレスコーズ “THE END OF THE WORLD PARTY” PART 2

■リリース情報
『ジャズ』
Album
2019.5.1 発売


初回限定盤(CD+DVD) 6,800円(+tax)
※「12月23日のドレスコーズ」LIVE映像収録


通常盤(CD+DVD) 3,500円(+tax)
※アルバム収録曲MUSIC VIDEO収録

■LIVE情報
the dresscodes TOUR 2019
6月06日(木) 東京 東京キネマ倶楽部
6月09日(日) 北海道 札幌cube garden
6月15日(土) 宮城SENDAI CLUB JUNK BOX
6月16日(日) 新潟GOLDEN PIGS BLACK
6月22日(土) 福岡BEAT STATION
6月23日(日) 岡山YEBISU YA PRO
6月29日(土) 大阪BIG CAT
6月30日(日) 愛知NAGOYA CLUB QUATTRO
7月06日(土) 神奈川 横浜BAY HALL

■オフィシャルHP
https://dresscodes.jp

■プロフィール
the dresscodes。1982年、和歌山県出身。音楽家・文筆家・俳優。2006年「毛皮のマリーズ」としてデビュー。6枚のオリジナル・アルバムを残し2011年、日本武道館公演をもって解散。翌年「ドレスコーズ」結成。シングル『Trash』(映画『苦役列車』主題歌)でデビュー。現在はライブやレコーディングのたびにメンバーが入れ替わるという唯一無二の活動を続けている。これまでにアルバム6枚、シングル3枚、映像作品4枚を発表。文筆活動のほか、近年は俳優としてドラマ『グーグーだって猫である2』、映画『溺れるナイフ』に出演。2018年、音楽監督作品『三文オペラ』(KAAT)上演。2019年5月1日、6枚目のフルアルバム『ジャズ』発売。

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