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ライター ツボイ

2019.10.22

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THE BACK HORN 12th Album『カルぺ・ディエム』インタビュー

「全員野球で今までよりハイクオリティなものを目指した(菅波)」

実に4年ぶりとなるオリジナルアルバム『カルぺ・ディエム』を10月23日にリリースするTHE BACK HORN。20周年イヤーの集大成となった武道館公演を終えてから作り始めたという今作は新曲だけで構成されており、バンド結成21年目を迎えた今だからこそ出来た楽曲となっている。その12枚目となるオリジナルアルバムについて、菅波栄純と山田将司に話を訊いた。

―オリジナルフルアルバムは前作の『運命開花』以来、約4年ぶりですね。でも、この4年間はいろいろな方とコラボしたシングルや、20周年ベストアルバム、ミニアルバムのリリース、さらにツアー、そして2月には日本武道館公演を行うなど、THE BACK HORNの名を聞かない年はありませんでした。そんな中、今作の制作はいつから始まったのでしょうか?

菅波栄純(Gt): 制作がスタートしたのは武道館をやり切ってからです。武道館の数日後にみんなで集まったんですけど、今まではそこで方向性などを話し合って、それからそれぞれが作った曲を持ち寄っていました。今回は、集まった時に俺が考えてきたアルバムに欲しい9曲を、曲の書ける俺と(山田)将司と(岡峰)光舟に3曲ずつ割り振りして、その中から1曲づつをマツ(松田晋二)に歌詞をお願いしました。

山田将司(Vo): その時、俺に来たオーダーはライブで盛り上がる曲という…。

菅波: だいぶザックリ振ったので(笑)。

山田: 「『孤独を繋いで』のような、ライブで盛り上がるエイトビートで疾走感があって、拳の挙がる胸がアツくなるような曲を書いてくれ」と言われて書いたのが『鎖』です。あと、「童謡っぽくて、ちょっとおどろおどろしいバックホーンの初期の頃にあった『8月の秘密』のような曲を作ってきてくれ」と言われて書いたのが『ペトリコール』です。

菅波: 今回なぜそうしたのかと言うと、20周年を迎えて全員が曲や歌詞を書けるのはバックホーンの強みだし、それぞれの曲に個性もある。「バックホーンとしてこういう曲が欲しいよね」というところへ向けて曲が作れる技術やセンスを全員が持っているのは、すごい武器になると思ったので提案しました。スタートから全員が同じ目標に向かって曲を作り始めたら、すごいエネルギーになるんじゃないかと。

―ということは、菅波さんの中には今回のアルバムのテーマがあったということでしょうか?

菅波: すごく単純なんですけど、“4人全員が平等に作ってクオリティも高い”を両立したくて。全員野球で今までよりハイクオリティなものを目指したいなと。自分たちの持っている世界観は20年で磨き上げてきた確固たるものがあるし、それを4人が共通して持っているので、それをわざわざ21年目だからといって変える必要はない。持っているものを磨き上げた形でリリースしたいなと。

―その確固たるものがあるからこそ信頼してみんなにお題を振れたわけですね。実際出来上がってきた曲や歌詞はいかがでした?

菅波: すごいクオリティが高くて、想像を超えるものばかりでした。それぞれにお題があって作業に入っているけど、常に全員と連絡を取り合いながら進めていて。その際、最初にテーマがあったから、お互いに意見を言いやすかったですね。

―山田さんは今回のお題ありきでの制作はやりやすかったですか?

山田: 向かうところがはっきりしていた分、やりやすかったと思います。お題は3曲だったんですけど、実はその中に『果てなき冒険者』のお題はなかったんですよ。

菅波: 将司はお題の3曲プラス1曲作ってきてくれて。

山田: 鍵盤のメロ段階ですけど、2年ぐらい前に作ったものをずっと温めていて。今回みんなとデモを共有し合っている時に、この感じだったらこの曲も輝ける場所があるんじゃないかと思って出しました。

菅波: 結果的に、これがあってアルバムの完成が見えた気がします。このアルバムは新曲だけですけど、以前のシングル曲が入っていても全くおかしくない。スタート時に9曲をみんなに割り振って、アルバムとしての余白を残していたけど、新曲だけで仕上げたいと心のどこかで思っていて。だから、将司が『果てなき冒険者』という「よし!明日も頑張ろう」という立ち位置の曲を持ってきてくれたのは、いいアルバムになる確信へと繋がりました。

―その今作『カルぺ・ディエム』は、<ハローハロー 生きるための言葉を刻もう>からは始まるのがバックホーンらしくて始まりにふさわしい曲だなと思いました

菅波: 1曲目は『カルぺ・ディエム』というタイトルに繋がっているなとも思っていて。アルバムタイトルはマツ(松田晋二)の提案なんですけど、俺らは“今を掴め”と捉えていて。“生きることを掴む”みたいな。生きていることを実感しながら生きていこうみたいな言葉だと俺は解釈しているので、『心臓が止まるまでは』の<生きるための言葉を刻もう>という出だしとピッタリハマっているなと。

―『心臓が止まるまでは』は先行で配信されていますよね

菅波: 何かを先行配信しようという話があった時、この曲はバックホーンにしか鳴らせない音だよねという理由で、これでいこうとなりました。そうだよね?

山田: 21年目一発目の新曲だからこそということで、満場一致でしたね。自分たちからするとど真ん中感のある曲というのもあるし。

菅波: 将司が「バックホーンのど真ん中は『心臓が止まるまでは』だろ」みたいな感じでアツく言ってくれたのもあって。堂々と自分たちの心臓を取り出して見せるではないですけど、そういう音楽から21年目を始めますというのは宣戦布告みたいでカッコいいなと。

―カッコいいと言えば、山田さん作詞作曲の『鎖』もお題通りのライブで盛り上がりそうなカッコいい曲です。タイトルの『鎖』はどっちにも捉えられる言葉ですが、どのようなイメージで書かれたのでしょうか?

山田: サビ頭の<絶対的な鎖で一つになって>の部分は普通に書いてたけど、栄純から「すごいこと言ってるね」と突っ込まれて…。

菅波: そうそう。解釈はいろいろあると思うんですけど、鎖で繋ぐというのはネガティブな表現として使う時もあるじゃないですか。束縛という。でもそれは一般論であって、その認識の違いがアーティスト性だと思うんですよ。将司はそこの境目を持っていて、将司的にはすごく前向きに言っているのに、実は危うい表現になっているのがすごく面白い。この2行がまさにそう。俺が好きなのは2サビの<あなたの涙の音を聞いたんだ>で、涙の音はしないけど感受性によってSOSが聞こえるみたいなテレパシー的な感じが良くて。こういう表現はなかなか思いつかないと思います。文学的というか詩って感じですね。

山田: サビ頭の部分は、鎖という自分自身を縛り付けているマイナスな意味での鎖と、誰かと何か、自分と何かを繋いでいる強い絆という意味での鎖というプラスの意味も含めた曲を書きたかったところから出た言葉ですね。

―なるほど。菅波さんが好きという<涙の音>にはどんな思いを込めたのでしょうか?

山田: そういうところに気付けるアンテナをずっと持ち続けていたいということです。それこそライブをイメージしていたから、目の前にいるお客さんや聴いてくれてる人たちに向けてだけじゃなくて、信じてくれてる人も疑ってる人も、プラスの気持ちだけを持っていたいと思っている人も、マイナスの気持ちを持ってしまう人も、全部エネルギーで動かせるのがバックホーンの曲だしライブだと思うから、どちらかに振り切るんじゃなくて、ちゃんと真ん中でどちらも意識しながら、どちらにも行けるように根を深く這って真ん中にドンと立っていたい思いがあって。そういう気持ちも含めてライブをイメージして出てきた言葉ですね。

菅波: 理由も将司らしくて素晴らしいです。

―ライブでの山田さんもイメージできます。それとは雰囲気が全く違う『ペトリコール』についてもお聞きしていいですか?

山田: 実はこれには元ネタがあるんです。12、3年ぐらい前にメンバーと山中湖で合宿をした時に録っていたデモの中に元になる四拍子のものがあって、それを童謡によくある三拍子にして原型ができました。歌詞はこの世界観に合う言葉を探していたら、空が出てきたり、自分の昔の悲しい記憶が出てきたりして。曲に入れば入るほどそういう感じになって出てきた歌詞です。でも、最後の展開するところでちゃんと今の自分を少しでも肯定したいという気持ちが書けたので良かったです。

菅波: この曲は、中原中也の『サーカス』っていう詩っぽい物悲しさを思い出すんだよね。「ゆあーん やよーん ゆあゆよん」っていう。

―物悲しい感じはすごく分かります。それとは対極にある『太陽の花』は、明るくて前向きで今作の中で一番好きかもしれないです

菅波: マツの歌詞がいいですよね。このアルバムに向けての話し合いの時に、マツが「俺は今まで20年間応援してくれてきた人たちに向けて、応援したり背中を押したりする歌詞を今回書きたい」と言っていて。『果てなき冒険者』の歌詞はまさにそのテーマで書かれているんですけど、『太陽の花』も勇気付ける歌詞でとてもいいなと思います。

―歌詞もですが曲の展開も結構好きです。特に合唱になるところが

菅波: あそこ俺も好きですね。あそこが聴きたくて何回も聴いちゃいます(笑)。あの合唱は12人の将司なんです。でも、どうして急に合唱になるの?って思いますよね。

山田: Queenみたいな感じがあるよね。

菅波: 制作前にQueenの映画を観たので、その影響です(笑)。ちなみに『We Will Rock You』の有名な部分を『心臓が止まるまでは』のサビに使っています。これ、ほとんど伝わらなかった本当の話で(笑)。『太陽の花』の合唱部分は、アレンジ自体に結構ピアノやシンセサイザーが入っているんですけど、アレンジをしている途中にそのピアノのラインが出来て、それを気に入りすぎて「これだけで一場面持つんじゃない?」と思って膨らませました。そのメロディの主旋に歌詞をつけて歌ったら、よりカッコいいんじゃないか、だったらもっとハモって合唱にしたらさらにカッコ良くなるんじゃないかと膨らんでいった展開で。そこから落ちサビにいくんですけど、そのピアノの雰囲気を引き継いでサビと合体する感じになっていくのは、いい流れが作れたと思います。

―制作中に生まれたものだったんですね。次の曲『I believe』はガラッと変わって重い曲ですが、どのようなイメージで作られたのでしょうか?

菅波: 暗い歌詞というテーマがあったので最初はすごく悩んだんですけど、暗いじゃなくて舞台裏的な歌詞に仕上げてくのはどうかなと思い始めて。夢を追いかけていたり、華やかなステージに立っていたりするような人たちの舞台裏の闇部分の歌詞って、今まで書かれていなかった実は応援ソングなんじゃないかと。鼓舞するのではなくて同じ苦しみを描くという。夢を追いかけていく中で自分がいま生き残っているということは、誰かを蹴落としてきたわけで。そういうことは、口にせず暗黙の闇に置いておくものだったりするじゃないですか。その舞台裏を書くことで、もうちょっと頑張ろうと思ってくれる人もいるはず。バックホーンは、暗いだけでも明るいだけでもなく両面を描いてきて生き残っているバンドなので、そのバンドの舞台がある有り難さを感じた曲ですね。

―しばらくウーンって感じで進みますが、最後のギターソロで感情が出ていますよね

菅波: まさに。そこまではずっとジワジワ、モヤモヤしたところを描いて、最後の最後で気持ちが出てくる感じです。ライブでも絶対気持ち入ると思うな。みんながみんな好きになる曲とは思わないけど、刺さる人は絶対にいる気がします。

山田: 昔のバックホーンを知ってる人は好きそうな気がする。この曲は、歌っていて一番ヘビーでしたね。マインドがちょっと(笑)。叫ぶところは最後の方しかないけど、感情移入すればするほど前半部分で気持ちが消耗していく感じはあります。

―それを『果てなき冒険者』で救って、最後の曲『アンコールを君と』になります。明るい気持ちで終われていいなと思いました

菅波: 結構豪快なバンドサウンドでガツンとくるんですけど、メロディやコード進行は結構凝っています。

山田: 曲は栄純と光舟が一緒に作ったんだよね。

菅波: 光舟がこのデモを作ってそれを俺が発展させるやり方でした。同時に意見を出し合ってじゃなくて順番に。それが功を奏してすごくいい曲になったなと思います。

―アルバムの1曲目『心臓が止まるまでは』で<生きたがって叫ぼうぜ>と言っていて、最後の『アンコールを君と』では<命を叫ぼう>と言っています。繋がっているなと

山田: 『心臓が止まるまでは』では自分が思っていて向こうへ投げ掛けているけど、最後は一緒に歌ってる感じだよね。

菅波: 最後は祝祭感がありますよね。命を祝福している感じがある。

山田: だから感じるライブ感だな。

菅波: 歌詞はマツのアイデアです。

―そう思うと松田さんの歌詞は一貫していますね

菅波: 曲調にも合ってるし、自分で言い出した励ませる歌詞というテーマにも沿ってる。すごいクオリティだと思います。

―今作は全員で作った作品だというのが伝わります。20年やってきたからこそできることなんだなと思いました

菅波: 本当にそうだと思います。今だからこそ出来たアルバムですね。

―さらに、今作の初回限定盤には、今年の2月8日に行った日本武道館公演のBlu-ray/DVDが付くという豪華な仕様ですし、10月22日(火祝)と23日(水)には映画館で日本武道館公演のプレミア上映会もあるという、ファンにとって逃せない特典目白押しです

菅波: ライブはすごくいいので是非見てほしいですね。

山田: 俺たちも映画館へ観に行きたいよね。絶対に今しか観られないから。

―さらに今作のツアーが11月から始まります

山田: 22本あります。21年目初のツアーですし、オリジナルアルバムの曲を体現するツアーでもあるから、音源を超えた生々しさが絶対にあると思います。ライブも是非来てほしいですね。

―名古屋は2020年1月31日(金)、ダイヤモンドホールですね。楽しみです。最後に、今回のアルバムを楽しみにしているファンへ向けて一言お願いします

山田: 20年目にバックホーンの最初の頃の曲を振り返ることがあって、今回それを全部滲み出すことができるような状態で挑めたと思っています。だから、今回で初めてバックホーンを知った人も昔から応援してくれている人にも響くアルバムになっていると思います。

菅波: とにかく聴いてほしいですね。俺にはそれしか言えないです。

THE BACK HORN『果てなき冒険者』 Lyric Video

THE BACK HORN『太陽の花』 Music Video YouTube ver.

THE BACK HORN『心臓が止まるまでは』 Music Video YouTube Ver.

■リリース情報
『カルぺ・ディエム』
12th Album
2019.10.23 発売


初回限定盤A(CD+Blu-ray) 6,500円(+tax)


初回限定盤B(CD+DVD) 5,500円(+tax)


通常盤(CD) 2,800円(+tax)

■LIVE情報
THE BACK HORN「KYO-MEI ワンマンツアー」
カルぺ・ディエム 〜今を掴め〜

2019年
11月18日(月) 東京 WWW X
11月21日(木) 静岡 LiveHouse 浜松 窓枠
11月23日(土祝) 福島 郡山HIP SHOT JAPAN
11月27日(水) 埼玉 HEAVEN'S ROCK 熊谷 VJ-1
11月30日(土) 北海 札幌PENNY LANE24
12月04日(水) 京都 磔磔
12月06日(金) 石川 金沢EIGHT HALL
12月07日(土) 長野 Sound Hall a.C
12月12日(木) 鳥取 米子 AZTiC laughs
12月13日(金) 広島 広島CLUB QUATTRO
12月15日(日) 福岡 DRUM LOGOS
12月21日(土) 岩手 Club Change WAVE
12月22日(日) 宮城 Rensa
2020年
01月10日(金) 香川 高松MONSTER
01月11日(土) 高知 X-pt.
01月17日(金) 大阪 心斎橋BIGCAT
01月23日(木) 茨城 水戸LIGHT HOUSE
01月24日(金) 栃木 HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
01月31日(金) 愛知 名古屋DIAMOND HALL
02月02日(日) 鹿児島 CAPARVO HALL
02月11日(火祝) 大阪 umeda TRAD
02月15日(土) 東京 新木場STUDIO COAST

■オフィシャルHP
http://www.thebackhorn.com

■プロフィール
1998年結成。“KYO-MEI”という言葉をテーマに、聞く人の心をふるわせる音楽を届けていくというバンドの意思を掲げている。FUJI ROCK FESTIVALやROCK IN JAPAN FESTIVAL等でのメインステージ出演をはじめ、近年のロックフェスティバルでは欠かせないライブバンドとしての地位を確立。黒沢清監督映画『アカルイミライ』(2003年)主題歌『未来』や、紀里谷和明監督映画『CASSHERN』(2004年)挿入歌『レクイエム』など、そのオリジナリティ溢れる楽曲の世界観から映像作品やクリエイターとのコラボレーションも多数。2018年には結成20周年を迎え、海外公演や日本武道館公演を含む全21公演からなるアニバーサリーツアーを開催し、バンド結成20周年の節目を終えた。2019年も作家住野よるとのコラボレーションなど、その勢いを止めることなく精力的に活動中。そして、10月23日に12枚目のオリジナルアルバム『カルぺ・ディエム』をリリース。

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