

T-Friends
2016.7.9
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cinema staff Oneman tour 2016“about eve”
@BOTTOM LINE
これからを見据えて未来へと駆けていく、希望に満ちたワンマンライブ
cinema staff、5枚目のフルアルバム『eve』がリリースされて、徐々に楽曲にもそれぞれの思い入れが出てきた頃であろう、ツアー5本目の名古屋公演。会場前から新しいグッズの話やこれまでのLIVEについて話しているオーディエンスはとても楽しそうで、この日が多くの人にとっての特別な1日だということが開演前から伺える。前回ボトムラインに立ったのは、何とオーディションの時だったと話していた彼ら。バンドグッズを身に纏ったオーディエンスが会場を埋める光景は感慨深い。

フラッグが堂々と照らし出される中、ファンタジックなSEが流れ出す。徐々にバンドサウンドに近づいていく音が一気に弾けると、ステージを一心に見つめるオーディエンスの前に姿を現した4人。三島想平(Ba)の「岐阜県から来ました、cinema staffです。始めます」の一言から、今作のリードトラック『希望の残骸』へ。大きく広がる希望に満ちた音像と共に、飯田瑞規(Vo/Gt)の声がオーディエンスを包み込むように響き渡る。一瞬でオーディエンスを攫う最高のスタートダッシュを決め、久野洋平(Dr)の繰り出すリズミカルなビートに乗せて『theme of us』、『切り札』と新旧織り交ぜたキラーチューンを惜しみもなく披露。辻 友貴(Gt)と三島は少しでもコーラスの間が空けばフロアに乗り出して煽るように楽器を奏でる。『exp』ではオーディエンスと競い合うようにクラップを巻き起こし、飯田の声に続けて自然に歌声が響く一面も。開演早々からオーディエンスに火をつけてしまうあたり、LIVEを重ねることで地力をつけてきた彼らのポテンシャルの高さを思い知らされた。

フロアを見渡しながら挨拶をした飯田が曲中のオーディエンスの声を聴いて思わず「鳥肌がたっちゃって…」と嬉しそうに話し、10年ぶりとなるこのステージに対して意気込むと、再び『lost/stand/alone』『世紀の発見』と、私小説を紡ぐような繊細さを醸し出してみせたと思えば、次の瞬間には激しいバンドサウンドを繰り出すといった風に、留まらずに変化し続ける音粒で自分達の世界を構築するようなプレイを重ねていく。色々な要素が混ざり合った、まるで物語と現実の狭間を漂うような彼らの世界観は、時に胸が締め付けられるほど幻想的で、時にハッとさせられる程の現実味を帯びている。時々強い光で照らし出されるオーディエンスは、ころころと表情を変えるリズムに乗って身体を揺らしながら曲を楽しんでいた。

「ありがとう!」と口を開くと、今日は汗のかき方が尋常ではないと苦笑する久野。地元だということで、「名古屋が1番楽しみにしていたというか…。皆さんの楽しんでる顔が見れて嬉しいです!」と冗談交じりに飯田が話すと、フロアも笑いに包まれて、ライブハウスはすぐさまアットホームな雰囲気に。和やかな雰囲気を纏ったまま、三島が「eveというアルバムを発売したんですが、そこからガシガシやっていっても宜しいでしょうか?」と話すと嬉しげな歓声が起こる。軽妙なトークで『person on the planet』へと繋げると、ミラーボールが回り出し、ドラムのリズムに合わせてゆらゆらと揺れ出すフロア。なかなかやらないというほんのり難しめのC&Rで翻弄しつつ、本番ではこれ以上は求めようが無いほどのクオリティーを見せたオーディエンスを見て、メンバーも満足そうな笑顔だ。不意に不敵なベースラインが流れ出すと、辻の頭上に警報灯が登場。どこかのゆるキャラのような様相を呈しつつ、鳴っている音はエッジーというアンバランスっぷりがなんともいえないシュールな笑いを誘う。続く『第12感』では一転してソリッドな雰囲気の中、感情的に楽器を弾き倒すメンバー。暗闇を揺蕩うような奇妙な浮遊感を覚えるのは、激しさと緩やかさのバランスが絶妙だからだろう。

ふっと空気が緩むと、「あのー…。途中で変なキャラが出てきましたけど」と話し出した飯田。サルゲッチュに似ているということで命名された“ぴぽ辻”のことを楽しそうに話し、「ふざけてるなと思ったかもしれないですけど、良い曲ですよね」と笑いながら言葉を続ける。「今まで結構攻めたセトリだったから、ゆっくりした曲をやろうと思います。辻のことを歌った歌だって」という言葉にはにかみながら笑う辻。真っ白なライトが優しく会場を照らす中、じんわりと染み込むように丁寧に『エイプリルフール』を歌い出した。続く『somehow』、『AIMAI VISION』をオーディエンスの直ぐ隣で演奏しているような近しい距離感で演奏した4人。音で満たされていく感覚を覚えるのはLIVEならではの醍醐味だ。どこまでも広がっていく音像と対比するようにオーディエンスとの距離が縮まっていく姿が印象的だった。

「改めまして、本当に有難う御座います」と再び話し出した彼ら。10年前に20人ほどのお客さんを前に演奏していた時を思い出して、幸せな気分になったと話す4人は本当に嬉しそう。ユーモア交じりに物販紹介を行うと、「物販紹介があったということは、残り少なくなってきました。まだまだこれからですよ、名古屋。まだまだ行けますか⁉︎」とフロアを煽る三島。オーディエンスは残念そうな声を漏らしながらも、気合の入った声で応えてみせる。

三島のシャウトから、LIVEは怒涛のラストスパートへ。飯田の声に惹きつけられるようにオーディエンスは前のめりでステージに近づき、自在にテンポを操るドラムがボルテージを高めていく。演奏していてテンションが上がったのか、迸る感情のままにステージ狭しと走り回るメンバー。『deadman』では、タイトルコールと同時にフロアから抑えきれない悲鳴が漏れ、『西南西の虹』では三島のストラップが外れてしまうほどの激しく熱い演奏でライブハウスを揺さぶった。一歩間違えれば曲が崩壊しかねない勢いで動き回っているにも関わらず、高い演奏力を維持し続ける彼らはまるで、楽器と一体化して音を出しているように見える。ここまでのプレイを見せ付けられるバンドは本当に稀有で、だからこそありったけの感情をぶつけてくる彼らの音を一瞬も逃さないようにとオーディエンスは全身で彼らの音を受け止めている。

「名古屋でワンマンをするのは何回めだとも思いますけども…」と口を開いた三島。大学卒業くらいからずっとワンマンを続けてきた彼らにとって、ボトムラインでのワンマンは去年から浮上したチャレンジだったという。「いざ蓋を開けたら一杯で、バンドをやってて良かったなと思いました。アルバム作って、出して、(LIVEを)やって、顔を見てフィードバックして…またこんな生活がしたいと思える」としみじみと話す口調からはバンドマンとして音楽を続ける喜びが漂ってくる。「今後は盛大に名古屋を贔屓して参りますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします」と言葉を締めくくり、「また、お会いしましょう。岐阜県から来ました、cinema staffでした」と確かな再会を誓うと、しっとりした柔らかい空気の中、フロアの隅々まで言葉に込めた祈りを届ける様に、『YOUR SONG』を奏で出した。飯田のどこまでも伸びやかな歌声は、オーディエンスの背中を希望へと押し出してくれるようだ。《迷わずに 進めば良いよ》という言葉に勇気付けられた人も多かったのではないだろうか。本編最後を飾るのは、『overground』。まるで『your song』で抜け出した暗闇の先に、見えた景色が描き出されていくような気がしたこの曲。力強い演奏を重ねる4人は清々しい表情を浮かべていて、今、バンドをしていてとても楽しいんだろうなということが伝わってくる。最後の2曲を聴いて、これからもオーディエンスと共に歩んでいく彼らの未来は光で満ちていると確信せずにはいられなかった。

直ぐに起こった拍手に応えて、再びオンステージした彼ら。「本当にどうも有難う御座います。“eve”、4人の想いが存分に詰まったものなので、ツアーが終わっても、この先も大切にして欲しいです。お願いします!」と飯田が口を開くと、暖かい拍手が贈られる。「アンコールの2曲目が決まっていなくて…」と、急遽その場で話し込み出した4人。紆余曲折の末、飯田の鶴の一声で『チェンジアップ』、そして『優しくしないで』をフロアに熱量を全放射するように奏で、21曲にも及ぶ熱演を締め括った。

当人も話していた通り、今のcinema staffはとても“健全なサイクル”で回っている。誰にも媚びずに信じた道を1歩ずつ進んできたバンドが、楽しみながら音楽を続けたいと思い、その姿にオーディエンスが共鳴して少しずつスケールが大きくなっていく。一足飛びにシーンを駆け上って消費されてしまうバンドも存在する中、彼らのように自身の哲学をしっかりと持って活動できるバンドは数少ない。バンドとして成熟し、歳を重ねた彼らが楽しんでバンドを続けた先の景色を一緒に見てみたくなるような、これから伸びていくバンドに特有の熱を感じる素晴らしい一夜だった。
文/渡辺 真綾 写真/前田達也(tatsuyamaedaphoto.tumblr.com)
■セットリスト
1.希望の残骸
2.theme of us
3.切り札
4.exp
5.lost/stand/alone
6.世紀の発見
7.白い砂漠のマーチ
8.person on the planet
9.crysis maniac
10.第12感
11.エイプリルフール
12.somehow
13.AIMAI VISION
14.想像力
15.deadman
16.西南西の虹
17.GATE
18.YOUR SONG
19.overground
(encore)
20.チェンジアップ
21.優しくしないで





















