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ライター T-Friends

2019.9.3

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【Live Report】ペンギンラッシュ「Rush out night 2019」

2019.8.18(日) @新栄APOLLO BASE

「今日がまたスタート地点」上質な音楽体験を届けた初ワンマン

名古屋を拠点に活動するペンギンラッシュ。ジャズ、ファンク、フュージョン、歌謡曲といったジャンルを融合させ、新しさと渋さの同居した独特な楽曲を生み出す4人組だ。6月、7月には2ndアルバム『七情舞』(6月5日リリース)を引っ提げた東名阪ツアーを敢行。そして2019年8月18日、キャリア初となるワンマンライブを新栄APOLLO BASEにて開催した。

初めては、いつだって特別だ。ライブハウス入り口へと下る階段の踊り場では“ファン有志一同より”と書かれた大きな祝花が来場者を出迎え、場内は満員御礼。開演前からDANIKIとRoanのDJプレイによってふわふわと体を揺らしたくなるナンバーが代わる代わる流れ、浮足だった空気が漂う。そして、ひときわ楽しそうにDJブースの横で踊っているのはVo. / Gt.望世とKey.真結。だって今日を誰よりも楽しみにしてきたんだからとでも聞こえてきそうな表情で、オーディエンスらと一緒になって特別な夜の始まりに胸を高鳴らせていた。

開演時刻を回り、場内が暗転すると、まずはDr.Narikenが登場。彼がビートを刻み始めると手拍子が自然発生し、Ba.浩太郎、真結、ゲストのサックス奏者・中村友美が順にステージに現れ演奏に加わっていく。臨場感のあるセッションによってみるみる加速する高揚が沸点に達するかというところで満を持して望世が登場!今日のために新調した真っ赤な衣装が4人ともよく似合っている。「ペンギンラッシュです!」という第一声で歓声を浴びる中「街子」で口火を切ると、待ち兼ねていた高揚が一気に弾けた。

個々がストイックにプレーヤーに徹し、言葉少なに次々と曲を重ねていく4人。急ブレーキと急発進を繰り返し、1秒先の展開も読めない「能動的ニヒリズム」では、メンバー同士の駆け引きのようなスリリングで緻密なセッションに息を飲む。転じて「奈落」では、溶けるように柔らかい望世の歌と、浩太郎の妖美なベースフレーズが絡み合いながら、心地よさが波のように押しては返す。研ぎ澄まされた集中力。それでもその奥には、しばしば悦に浸るような表情がちらつき、初ワンマンだとは思えない貫禄すら感じさせるのだから頼もしい。

ゲストヴォーカルに石森龍乃介(Mellow Youth)を迎えて披露された「契約」。美しいハーモニーを奏でるも、背中合わせに立っている石森と望世の姿が、〈ただの慰め合い〉と歌う虚無感を象徴するよう。さらに、どこからともなく響く足音、粗雑に鍵を開け、バタンッと扉が閉まる音ーー直感的に情景が思い浮かぶようなSEをイントロダクション的に挟んで始まった「晴れ間」。細かな演出が、我々を何度も楽曲の世界にトリップさせるのだった。

ライブも佳境に差し掛かり口を開いた望世。「大事な日に応援してくれる人が増えてうれしいです。懐かしい顔も、よく見る顔も、見たことない顔も(笑)いや、それってとってもうれしいです」と、つい茶化してしまうのは照れ隠し。「私たち、今年で結成5年になります。思ったよりも長いんですけど、高2で真結とバンドを組んだ時、2人になった時、お兄さんたち(浩太郎とNarikenのことである)が入って4人になった時、初めてCDを出した時、全国流通した時も、今日も、毎日がスタート地点で、“ここから始めるんだな”と思っています。何度もスタート地点に立ってきたけど、今日もスタート。これからまだまだ長く続くバンドなので、この先も見ていてください」と、過ごしてきた日々を一つずつ振り返るように語りラスト2曲へ。リズミカルなビートに手拍子がわき、踊るような真結の鍵盤がサウンドを彩ったポップナンバー「ユイメク」に続いて、最後は再び中村を呼び込み「青い鳥」を演奏。〈そのままでいいよ〉と高らかに歌い上げる彼女たちなりの応援歌をスペシャルな5人編成で届け本編を締めくくった。

アンコールでは、本編をやり切った開放感からか、テンション高めの望世が「お知らせ!いくぜ!」と結成5周年を記念したワンマンライブを10月26日に行うことを発表(早くもSOLD OUT!)。あたたかな拍手がわく中、「まあこっちが勝手に祝えって言ってるだけなんですけどね」なんていうが、その顔は幸せそのものだ。むず痒くなってきたのか「いこう!」と男前な掛け声でアンコールとして「ルサンチマン」を披露。浩太郎がフロアに見せつけるようにブイブイとソロをかます後ろで望世は手をひらひらさせて踊っているし、真結がベースに応戦してソロの掛け合いになると無邪気なプレイに思わずオーディエンスの顔がほころぶ。いつだったかNarikenが、バンドのことを“ファミリー”と言っていたのを思い出すハートフルな光景の中、全19曲の熱演は大団円を迎えた。

ゲストプレーヤーを加えた楽曲アレンジや曲間の演出をはじめ、至る所に彼女たちの細やかなこだわりや想いが感じられた1時間半。ワンマンライブという自分たち“だけ”に任された時間を、どう作り込んでいくかーーアルバムが完成したばかりの頃から楽しそうに語っていた彼女らが届けてくれた、上質な音楽体験だった。とある高校の一室から始まった“ペンギンラッシュ”という物語が、望世が言っていたようにたくさんの節目を重ねながら、信頼する共演者、フロアをびっしり埋めるオーディエンスに見守られて今日という日を迎えたと思うと感慨深い。最後に「まだまだ本当にこれからなので、どうかこれからも好きでいてください!」と両手を合わせた望世。彼女たちの物語は、まだまだ続く。

文/岡部瑞希 写真/郡元菜摘

■セットリスト
01. 街子
02. Dolk
03. マタドール
04. 能動的ニヒリズム
05. 奈落
06. installation
07. アンリベール
08. モノリス
09. Eien
10. 悪の花
11. NUIT
12. 契約
13. 晴れ間
14. RET
15. 雨情
16. ユイメク
17. 青い鳥
EN1. ルサンチマン
EN2. chorus

※このライブレポは「YUMECO RECORDS」からの転載です。

http://www.yumeco-records.com/

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